あなたにとって働きやすい会社とは? #2 TRIGGER鍼灸整体院・玉井和代さん
福利厚生や待遇が良いにこしたことはないけど、「決定権や裁量権を若手にまかせてもらえる」「人生のステージの変化によるパフォーマンスの波を受け入れてくれる」など、人によって「働きやすさ」は多種多様です。この連載では毎回、一人の女性の職場を訪問。人と会社のいい関係について考えます。第二回目はTRIGGER(トリガー)鍼灸・整体院の玉井和代さんです。
都内を中心に現在5店舗ある〈TRIGGER(トリガー)鍼灸・整体院〉で子育てをしながら正社員として働く玉井和代さん。いまの会社に務めるきっかけとなったのはバスケやサッカーとスポーツに勤しみながらも進路に迷っていた高校生の時、父とともに訪れた鹿島アントラーズのクラブハウスで当時スポーツトレーナーとして選手の治療にあたっていた〈TRIGGER〉代表・小池謙雅さんとの出会いだった。
「そのとき初めて、スポーツ選手のケアをする職業や業界があることを知りました。小池代表の仕事姿に共感し、どうしたらその職に就けるのか質問したところ、『まず自分が医療系のトレーナーがよいのか、あるいはリハビリ、ジムのパーソナルトレーナーなのか、どの分野に進みたいのか考えてみた方がいい』と教えてくださって。まずは自分もスポーツトレーナーを目指すために必要な医療系国家資格を取るために3年間学校に通うことを決めました」
「はり師」「きゅう師」などの国家資格を取得後、経験を積むためにスポーツの現場で選手の健康管理やテーピング、ストレッチなどを行っていたが、2015年に小池代表から声がかかり、〈ReBody Craft株式会社 TRIGGER鍼灸院〉に入社した。
「ライフステージの変化、年代ごとの選択肢は常に考えていました。20代は修行のつもりで寝ずに現場を頑張ろう、30代は20代で現場で学んできた事を鍼灸師として患者さんの為に治療に専念して結婚、子供もできたら…と計画を立てて。目標を明確にした方が自分のあり方に迷うことなく居ることができたので。実際に娘を出産してからは、小学校に上がるまでは時短勤務で働きたいという希望も認めてもらって。これは自分のためでもあり、後輩たちが選べる選択肢を増やしたいという気持ちもありました」
女性が多いイメージの鍼灸業界だが、出産を機に独立や開業をする人が多い理由の一つとして会社内に働き方の選択肢が少ないことがあるようだ。
「子育てをしながら働くというのは弊社では私が初めてのケースで、辞めずに働き続ける選択肢を構築している最中ですね。この会社が主体性、自主性、積極性を大切にしているので、これまでなかったことでも自分で考えてつくっていけばいいと後押ししてくれたことにも感謝しています」
ただし、玉井さんにとっての働きやすさがすべての女性スタッフに当てはまるわけではないことも付け加えた。
「一緒に働くスタッフがお互いの事情を受け入れてサポートできるような環境作りはスポーツのチームプレイにも似ていると思います。子供のころ、バスケやサッカーをずっと続けられたのもチームでやる喜びや楽しさがあったからで、職場でも各々の目標を大切にしながら不安があったら相談しあえたり、一緒に会社を盛り上げられるようにできればと思っています」
時代の変化を感じ取りながら、共に未来を創っていきたい。
治療を求めてやってくるお客様との関係について、「スポーツ選手であれ会社員の方であれ、”身体”を使って仕事をしてることには変わりないので、その方のパフォーマンスを上げることが私たちの使命です。患者さんが痛みをなくしたうえで本当にやりたいことや理想を聞いて、それに寄り添ってサポートしていく。それが人生の転機になれば、と。以前は慢性腰痛や首肩の痛みで来られる方が多かったんですが、コロナ後は自律神経の乱れから不調を訴える人がとても増えました。原因の一つとして在宅ワークですよね。便利ですけど本来家って自分が休まる場所なのに、そこに仕事を持ち込む。実は通勤だけでも階段の上り下りなどいい運動だった。トイレ休憩も家だと距離的にそんなに長くない。食事のタイミングも含め、オンオフの切り替えがうまくいかないという声は患者さんからやっぱり聞きますね」
そういった社会全体の変化を感じたことがもう一つ、
「自立神経の乱れは働き盛りの40〜50代だけじゃなく、20代から、10代にもいます。ネットがあれば会話をしなくても成り立つということがあるかもしれません。患者さんと話す機会があって『SNSで育った子たちは人と話すコミュニケーションが少なくなってきているんだよね。学校へ行けば話せるけど、自分の好きな人としか話さない。SNSのフォローも、自分と合う人しかフォローしない。だから職場で自分と違うタイプの人間がいることに対して抵抗感やストレスを感じたりする』。なるほど、一理あるなと感じました。私も人事部長としての役割もあるので、それからコーチングコミュニケーションを学んだり、会社でも研修で取り入れることで知識、技術だけでなく人間力を磨かねば、と思っているんです」
仕事と趣味の共通点は人間力
身体に触れる、コミュニケーションをとる、肉体的にも精神的にも疲労を感じるに違いないはずだが清々しい表情で話す玉井さん。きっと何か上手なストレス発散法があるのではないかと聞いてみる。
「一番は2020年、ちょうど育休中に観たNiziプロジェクトです。オーディションの過程を観ていて、人って成長していくことでどんどん顔つきが変わるんだ、ということがとても面白くて。それからずっと追い続けてます(笑)。夫も理解してくれていて推し活時は子供の面倒を見てくれます。ライブでもらう元気は格別ですし、アイドルとしてではなく人としての人間力を見る部分は結局仕事に繋がってるんですよね、きっと、笑」と楽しそうに答える玉井さん。
それでも育児もやはりいろいろ大変、と言いつつも・・・・。
「疲れることはありますけど、やっぱり環境が変わった瞬間、このユニフォームを着た 瞬間に一人の女性になれるので、その切り替えでストレス発散ができている気がします」
連載第一回 企画会社キリンジ・伊澤恵美子さんの記事はこちら