日本で発展したコーヒーの淹れ方、サイフォン式の店。 LEARN 2023.05.24

生まれはヨーロッパだけれど、日本ならではのコーヒー器具となったサイフォン。
火にかけるタイミングや混ぜ方に、その店のおいしさの秘密があります。

珈琲日記[ 四ツ谷 ]

お湯の動きを操り、豆と優しく混ぜ合わせる。横浜式の澄んだ味。

「サイフォンでコーヒーを淹れ始めたのは、35年前に横浜で初めての店を開いたとき。〈珈琲日記〉としては、日本文化の発信をテーマにするのが導入のきっかけでした。サイフォンがこれだけ普及しているのは、日本だけですからね」と話すのは、店主の小林正哉さん。生まれ育った横浜は、サイフォンの街。独特の淹れ方があると聞いて、教えてもらうことに。

スピードが特徴だというサイフォンだが、小林さんの手つきは一つ一つが丁寧だ。まずはフラスコからお湯が激しく上がらないよう、沸騰を抑えてゆっくりと漏斗へお湯を運ぶ。温度が安定してきたところでコーヒーの粉を投入。「最初から入れておくよりも苦味が出にくいんですよ」。ここで味が決まるという1回目の攪拌では、粉全体に一瞬でお湯を染み込ませる。豆から出る炭酸ガスが落ち着き、しっかりと香りが出てきたら2回目の攪拌で本抽出へ。「混ぜすぎるとエグ味が出るため、縦回転と横回転の波を同時に作り、短い時間で混ぜていきます」

構造上、フラスコには吸い上げられなかったお湯が残るものだが、抽出が終わるタイミングでこれを捨てるのが横浜式。「ほかではあまり見ない工程ですね。味のブレがなくなりますし、フラスコ内の圧力が正常になるのでコーヒーが落ちる勢いを緩めることができます」。こうして〈珈琲日記〉名物のクリアな味が出来上がる。

本日の深煎りコーヒー825円、発酵バター入りの生地に自家製のつぶあんを詰めた「リッチ あんバタースコーン」680円。モーニングにはセットでも。
本日の深煎りコーヒー825円、発酵バター入りの生地に自家製のつぶあんを詰めた「リッチ あんバタースコーン」680円。モーニングにはセットでも。

ラフレッサ[新日本橋]

日々のルーティンに組み込みたい優しく寄り添う一杯。

ほっとする接客にほっとするコーヒー。1日に3、4回通うビジネスパーソンも少なくない。創業以来45年使い続けているサイフォン用に、味が強くなりすぎないようにブレンドと焙煎を調整。ブラジルとコロンビアを主体としたコクのある味を提供している。

ヘッケルン[虎ノ門]

会いに行きたいマスターの、鮮やかな手つき。

1971年の創業から一代で続けてきた〈ヘッケルン〉は元祖ジャンボプリンでも有名だが、マスター自身にファンが多い。ブレンドはブラジルが主体。「豆は粗めに挽いて、さっぱりとしつつコクのある味にしてるよ」と教えてくれた。

珈琲館 紅鹿舎[有楽町]

パフェにもピザトーストにも、いつものブレンドをお供に。

ピザトースト発祥のこの店では、食事やデザートが大人気。どんなフードにも合うように作られた「べにしかブレンド」など、コーヒーはいつでも同じ味が作れるようサイフォンで。

八百コーヒー店[千石]

体にスッと入ってくる、ライトな味わいのコーヒー。

日本にサイフォンを広めた〈KONO〉の本社近くに店を構えて社長と出会い、軽くてマイルドな味を出せるサイフォン式コーヒーを提供することに。お湯は粉と優しくなじませ、短時間で香りよく仕上げる。豆は時期により〈二三味珈琲〉や〈豆岳珈琲〉〈miepump〉などのものを使用。

photo : Kenya Abe text : Kahoko Nishimura

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