小池栄子のお悩み相談室 /第5回:「文章では自分の気持ちや考えを綴れるのに、人と対面した時に、思ったことを言語化するのに時間がかかり、言いたいことが言えません」 (22歳/大学生) LEARN 2023.02.15

仕事、プライベート、家庭生活含め、日々頑張っている人ほど悩みは尽きず、誰かに聞いてもらいたい、いいアドバイスが欲しい…そう思っている女性たちの声がHanako編集部に寄せられています。そこで、女優としてひときわ存在感を放ち、かついつもスパッと気持ちのいい発言をされている小池栄子さんに、人生の先輩としてアドバイスをしていただくこととなりました! 隔週更新でお届けします。

――誰にでも“得手不得手”はあるもの。不得手なことは克服の仕方もわからないうえ、苦手意識を強く持つほど、どんどん状況は悪化してしまう…ということも。今日はそんなお悩みについて、小池さんと一緒に考えてみました。

本日のお悩み

文章を書くのは好きなので、テキストメッセージなら、自分の言いたいことが言えます。ところが、対面して会話をするとなると、思いを言語化するのに時間がかかってしまいます。まず発言の最初に間投詞が出てしまうという癖もあります。特に同年代と話すときにそうなってしまいがちなのですが、「あーね」「それな」と言っている間に頭をフル回転させて、ようやく言葉がまとまったところで発言しようと思うと、他の人たちはもう話が先に進んでいる…という状況になっていることばかり。思ったことをすぐに、具体的に言えるようになるにはどうしたらいいですか?(22歳/大学生)

――これは、トーク力抜群の小池さんに、ぜひアドバイスをいただきたいお悩みでもあります。

じつは、今ちょうど似たようなテーマの舞台をやっているんです。主人公の男の子は、彼女からいつも「あなたはいつも言葉が足りない」とか「思ったことを言えばいいのに」と言われて、男の子は「話すことがまとまらない」「君みたいに人間ができていないから、言葉にできないんだ」なんてやり取りをしながら、もやもやしたまま芝居をするんです。この相談を読んで、すごくタイムリーだなって思いました。

――本当ですね。こういう悩みを抱えている人は、少なくないのでしょうか。

私は、バラエティ番組で鍛えられているのもあって、ポンポンと言葉が出てくる方だと思うのですが、このお悩みを聞いたり、いまの舞台で芝居をしていて、自分と同じ速度でみんなが言葉を発するわけじゃないんだ、思ったことをすぐに言葉にするのって人によっては難しいことなんだと改めて知らされました。

――確かに、小池さんやバラエティ番組によく出ている方たちは、反射神経が鍛えられていそうです。

私はもうその状況に慣れてしまっているんですが、一方でお芝居の現場に役者として入ると、口数が少なかったり、はっきり言い切ったりしないような方に出会ったりもする。でも言葉にしないだけで、私なんかよりも役を深く分析していたり、物事を深く考えている方はたくさんいて。そんな方たちを見ていると、逆に、なんて自分は軽い人間なんだろう…なんて少し落ち込んだりするんですが。

――役者さんたちって、役に入るために、寡黙に自分と向き合うようなイメージがありますね。

そうなんです。でも、普段口数の少ない人が、熟考してようやくひとこと、ふたこと発した言葉が胸に刺さったりするんですよね。

――わかります〜!

響く言葉や説得力がある言葉って、リズムや速度の問題じゃないんだなって思います。軽い言葉をポンポンやり取りするよりも、大事にしている言葉を丁寧に発することの方が大切ですよね。

ーーそう考えると、この相談者さんも、テキストでは思いを綴れるということは、役者さんたちのように熟考するタイプかもしれませんね。

そう思います。ただその状況がきつくて、自分なりに変わりたいと思っているなら、やっぱり解決策を取るしかないと思うんです。だから例えば、正直に自分の状況を伝えてみるというのはどうでしょうか? 

――「あーね」とか「それな」って、大学生の若い子が同年代と話す時に使いがちな言葉かもしれないけれど、熟考しているのとは真逆の、軽い言葉に聞こえたりしますもんね。

そうそう。だから例えば「待って待って、その話すごい興味あるけどすぐに言葉にできないから、1回考えて最後に言いたい」と言ってみるとか。うまく言葉にできないんだってことを伝えちゃってもいいのかもしれません。そうやって、まず今思っていることや感じていることを言葉にしていくのも、いいトレーニングになるんじゃない? 「言いたいけど、言えないんだ」という言葉をまず口に出して、慣れさせていった方がいいと思うんです。

――なるほど! それも思ったことを口にする、ということですし。

黙り込んでしまうことを続けて、癖にしちゃうと、これから社会に出て仕事をしていく時に、誤解されたり、「君は何も考えてないね」なんて言われたら損じゃないですか。正直でいることは、今の時代求められることだし、この先もどんどんそうなる気がします。だから、若いうちから訓練していったほうがいいと思うんですよね。まずは、正直に「すぐに言葉にできないから、思いつくまでちょっと待って」って言ってみることから始めるといいと思います。

「失敗を恐れてはダメ」。一歩踏み出して場数を踏むことで人生は変わる。

――「正直でいることは、若いうちから訓練していったほうがいい」のは、なぜでしょう。

40代、50代と年齢を重ねれば重ねるほど、いまさら自分を変えられないみたいな理由で結局なにも行動できなくなる気がします。この年で恥ずかしい、みたいなのが勝っちゃう気がして。

――確かに。しかも、20代の頃から悩み続けていることだったら、もうこのままでいいやってなりそうです。

すべての悩みを無理して解決しようと思わなくてもいいけど、少なくともコミュニケーションに関わることは、若いうちにトレーニングを始めて解決しておいたほうがいいですよね。

――「すぐに言葉にできないから、思いつくまでちょっと待って」って、すごく正直ですもんね。

そう思います。それに相手も、ちゃんと考えてくれているんだって嬉しいだろうし。誠実な人だと伝わることで、全然印象が変わると思いますよ

――ちなみに小池さんは、バラエティでテンポよくトークするために何かトレーニングなどはされたのでしょうか?

喋ることは小さい頃から好きだったんです。大人になって何かトレーニングをしたわけじゃないけど、トークを生業にしていくうちに、この言葉や発言は誤解を生んだり、相手を傷つけるんだ…と、やりながら学んでいきました。今思えば、とにかく喋って辛辣なツッコミをすればウケる、なんて勘違いしていた時期もあって、恥ずかしいです(笑)。でもやっぱり、場数は大事ですよね。

――この相談者も、人に会うと緊張して言えなくなることがわかっているから、どんどん怖くなってしまっているのかも。つまり、場数を踏むのも怖いというか。

長年『カンブリア宮殿』という番組のインタビュアーを務め、いろんな経営者の方とお話をさせていただきましたが、その方たちがよく言うのが「失敗を恐れてはダメ」だということ。何事も、チャレンジしないと見えない景色はありますから、怖がって避けないで、頑張って一歩を踏み出してほしいな。チャレンジした人と、しない人の10年の人生は全然違うと思うから

――参考までに、言葉が出にくい人の話を上手に聞く姿勢などがあれば、教えていただきたいです。例えば、経営者はビジネスの世界ではプロですが、喋りのプロではないですよね。そんな方たちにいつも話を聞いている、小池さんが気をつけていることは?

「何分でも待ちますよ」とか「この番組は収録で、生放送じゃないから大丈夫ですよ。カットできますから、思いのまま喋ってください」って、始まる前にサラッと伝えて、あとは焦らせないように、ニコニコしながら待つことかな。やっぱり収録現場って、カメラが何台もあってスタッフもたくさんいて、異様な空気感で萎縮してしまうと思うから。だからやわらかい表情でいることは、すごく大事だと思っています。

――なるほど。プライベートの友人関係ではいかがでしょう。

いますよ、口下手な友人は。でも基本は同じかな。「全然今日じゃなくてもいいし、思いついた時にいつでも連絡ちょうだい」って伝えたり、すごく時間が経ってから「なかなか考えがまとまらなくて…」というメッセージがきても「あ、全然忘れてた〜(笑)」って気にしてなかったことをさりげなく伝えたり。意外とサラッと返したほうが、向こうが私に何かを相談することがプレッシャーにならないだろうな、って思います。だから、その人のペースを見極めて、見守ることが大事なんだと思います。

Photo : Syu Yamamoto text : Aya Wakayama

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