小池栄子のお悩み相談室 /第4回:「充実感ある事務の仕事ですが、上昇志向の強い友人と比べて焦ったり、将来に不安も…。このままこの仕事を続けてもいいものでしょうか?」 (39歳・事務職) LEARN 2023.02.01

仕事、プライベート、家庭生活含め、日々頑張っている人ほど悩みは尽きず、誰かに聞いてもらいたい、いいアドバイスが欲しい…そう思っている女性たちの声がHanako編集部に寄せられています。そこで、女優としてひときわ存在感を放ち、かついつもスパッと気持ちのいい発言をされている小池栄子さんに、人生の先輩としてアドバイスをしていただくこととなりました! 隔週更新でお届けします。

――たとえ自分に向いていると思った仕事でも、長く続けていると、時代や周りの環境の変化などから、将来に不安を抱いたり、迷ったり悩んだり…。今日は、そんな共感の声が多そうなお悩みです。

本日のお悩み

「学生のころから事務のアルバイトをしていて、自分に向いていると思ったので、事務に絞って就職活動をし、現在は正社員として勤めています。“与えられた仕事を、時間内に、最短で処理する”ことに楽しさや充実感も得ていて。ただ、大学時代の友人はバリバリのキャリア志向の人も多く、年収、待遇、仕事内容など“ステップアップ”を前提にした転職をしている人も多数。それらをまぶしく感じつつ、全員がステップアップしなければならないの…? と思うとモヤモヤしたものが残ります。現状、ダラダラと今の会社に居続けている毎日ですが、このまま定年まで続けていいのだろうか? また、いずれAIにとって代わられて職を失うのではないだろうか? などという心配も。そんな悩みや葛藤を抱いたまま、この仕事をしていてもいいものでしょうか」(39歳・事務職)

――これに近い悩みを抱えている人って、ものすごく多そうな気がします。

この悩み、すごくわかります! 何かをプロデュースしたり、積極的に企画を立ち上げたりするのが得意な友達がいるんですが、私はそういうことに関心がないので、基本的に与えていただいた仕事に向き合うしかなくて。自分から仕事を提案したり、新しく何かをやりたいと思うことがあまりないんです。いただいた仕事を楽しむことぐらいしか、自分には才能がないな…って。

――楽しめるというのも、素晴らしい才能だと思いますが…。

私の場合は、悩んでいる時間がもったいないから、だったら楽しもうっていうタイプなんですけどね。それである時、尊敬している同業者の子にそんなことを話したら、「周りは自分よりもチャレンジしているかもしれないけど、全員が全員、そうじゃなくてもいいんじゃない?」って言ってくれたことで、そうだよね、私は私のやり方でいいね、と思えるようになって。そこでそう思えたことで、今があると思っています。だから、私の答えとしては、あまり周りと比べて悩んだりせず、自分は自分でいいんじゃないかと。

――比べなければ、焦りや葛藤などもないですしね。

そうそう。ステップアップについては、私のような仕事と会社員の方ではまた違うし、会社には役職なんかがあるからより大事なのかもしれないけど、ステップアップしなくちゃ、って自分で強く意識するよりも、目の前の仕事を一生懸命やっていくうちに、気がついたらステップアップしていたというくらいのスタンスでもいい気がします。

――なるほど、同じステップアップでも、強く意識してストレスや葛藤と闘いながらよりも、毎日コツコツと仕事をして、充実感を得ながら気がついたらステップアップしていた、という方が、確かに気楽ですね。今の仕事はAIに奪われるかも、という悩みについてはいかがでしょう?

もちろん、世の中の仕事の中には、この先AIに奪われる仕事もあるんでしょうけど、AIにしかできないことや、AIで済んでしまうことが増えるのと同じように、人間じゃないとできないこと…例えば人の温もりを求められることとか、感情を繊細に汲み取ったりするような作業も、同じだけ必要とされると思いますけどね。だから今一度、自分は自分だと割り切って、自分に自信を持って欲しいな。

――そもそも、事務の仕事に充実感を得ているんですものね。

そうそう、それに“与えられた仕事を、時間内に、最短で処理する”ってすごいなって思いました。昔、爆笑問題の田中(裕二)さんがコンビニでバイトをしている時の話で、レジ打ちをしているうちにどんどん上達していったそうなんです。そのうち、お店に入ってきたお客さんが次々カゴに入れていくものを見て、レジに到着した時に合計金額がわかるようになったらしいんですが、それってすごい才能ですよね。

――すごい〜! 

カゴを置いた瞬間に合計がわかるって、すごい怖いとも思いますけどね(笑)。この人、ずっと見てたんだ、って(笑)。でも、どんな仕事や作業も、突き詰めるとこんな風に天才になるんだなあって。だから、自分のやり方で突き詰めていきましょうよ。

苦手なことからは逃げてもいい。それよりも、長所を伸ばしたい。

――この相談者のように、39歳ってこういう悩みの壁にぶつかりそうな年齢でもあるかもしれませんね。余談ですが、若い時は苦手なことにもどんどんチャレンジして、克服していくのもいいと思いますが、このぐらいの年齢になっても、苦手は克服するべきなんでしょうか。小池さんはどうですか?

私は、苦手なことには自ら触れないし、それよりも好きなことや、長所を伸ばしたいです。もし他者から苦手なことを与えられた場合は、いただいたお仕事なので精一杯やろう、って思いますが、そのくらいのスタンス。克服しなきゃと自分を追い込んで無理矢理に頑張るよりも、それぐらいに構えておけばいいんじゃないかな。それに、本当に苦手なら、逃げてもいいと思うんですよね。

――小池さんって苦手なものはあるんですか?

いろいろありますよ〜。基本的に、相手の顔が見えない、その場で反応がわからないことは苦手です、不安になっちゃうので。映画の感想やコメントを求められた時とか、これを相手はどんな顔して読むんだろうとか思うと、自分の想いを文章にするのがすごく恥ずかしくて、なかなか筆が進みません。だから、コメント書って難しいんですよね。
でも、この間、以前仕事をさせて頂いた監督の新しい作品のコメントを書いたんですけど、監督のことを考えながら書いたらすごく楽しくて。コメントは映画に対するものだけど、まるで監督へのラブレターみたいだな、って。そこから、書くことに興味を持ち始めました。書くことで、自分の文章の癖が見えてきたり、もっと文章で感情表現できるようになりたいから他の人の書いた文章を見てみようとか思ったりして、幅が広がったんですよね。台本を読んでいても、なんでここは「○○に」ではなく「○○を」なんだろうとか考えるようになって、文章に対する意識が変わりました。

――苦手だったことでも、たまたま楽しみを見つけて好きになれたら素敵ですね!

焦って克服しなくても、いつかそういう時がくることもあるんですね。私もいつか、エッセイみたいなものを書いてみたいですね。

Photo : Syu Yamamoto text : Aya Wakayama

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