ハナコラボSDGsレポート “おいしい”が大前提!食材のアップサイクルをする〈サステナミール〉|シナダユイ SUSTAINABLE 2022.12.17

ハナコラボ パートナーの中から、SDGsについて知りたい、学びたいと意欲をもった4人が「ハナコラボSDGsレポーターズ」を発足!毎週さまざまなコンテンツをレポートします。今回は、ナチュラルビューティーハンターとして活躍するシナダユイさんが、食材のアップサイクルをプロデュースするチーム〈サステナミール〉のマーケターで、〈dot science〉代表の小澤 亮さんに話を伺いました。

「未利用部位」という課題に再び挑む

ーー代表の阿部勝太さんとは2013年に石巻でお会いしたことがあるんです。当時は可食部ではない昆布の活用を美容方面で考えた視察訪問でしたが、実現することなく...。なので、このプロジェクトの話を聞いたときはついに!とご縁を感じ、一目散に取材させていただきました。

「シナダさんが取材第1弾になります。ご縁ですね」。

ーー〈サステナミール〉は、食材のアップサイクルをプロデュースするチームということで、まずはメンバーの阿部さん、料理家の河瀬璃菜さんとの出会いと結成の経緯を聞かせてください。

「(阿部)勝太くんとは2018年に初めて仕事をしました。〈伊勢丹〉と〈鈴廣かまぼこ〉協力のもと、勝太くんのホタテや昆布、石巻チームの牡蠣を使って高級魚肉ソーセージを作るという期間限定の企画です。この視察の際にすでに6次化の実績もあり、現場に来てくれたのが河瀬さんです」。

ーーこんなに高級な魚肉ソーセージ、見たことありません。おもしろい企画ですね。

「ホタテや牡蠣が100%なのは、百貨店ならではですね(笑)。“エシカルシーフードチャレンジ”という企画でしたが、このときは食感を良くする目的で昆布の未利用の部位を刻んで入れていました」。

ーーその企画がうまくいったことがチームをつくるきっかけになったのですか?

「そのときからいまに至るまで時間は開いているのですが、その間も勝太くんは養殖した昆布やわかめの出荷規格外で捨ててしまっているような未利用部位をどうやって活用できるかをチャレンジし続けて、塩蔵を繰り返してきたのですが、やはり漁師だけで挑戦しようとするとアウトプットが佃煮ぐらいになってしまうという話をしていて。なので、以前の企画がうまくいったということより、未利用部位という課題に向き合い、一つ事業で切り込んでみようよ。よし、スタートだ!と再集合したのが2021年。発表したのが2022年の10月です」。

ーーえ!まだ(取材時)1ヶ月くらいしか経っていないじゃないですか。てっきり製品化もされてると思っていました。現在進行形だったんですね。

「発表して1ヶ月くらいですね。ばりばりに動いているところです」。

“産地ロス”はブラックボックス

規格品と規格外品の旨味成分の含有量は同等でした。
規格品と規格外品の旨味成分の含有量は同等でした。

ーー小澤さん自身が未利用部位に着目した理由は?

「元々、大学時代からいいものを作る人を応援することを仕事にしたいと思っていて、新卒で〈Yahoo! JAPAN〉に入社しました。ですが、いざ東日本大震災という有事の際に力を発揮できない自分が許せなかった。東北に関わっていきたいと思い続けたこともあり、独立をして現地をまわり、生産者と関係を築いていくうちに、流通にのる以前に出荷規格外のために捨てられていく未利用部位が相当な量あることを知りました。例えば、勝太くんのわかめや昆布は年間約10トン捨てているんです」。

ーー生産地で出るものは食品ロスにはカウントされていないんですよね。

「日本の場合はいま“ブラックボックス”ですね。野菜だけは発表されている資料から『生産量ー出荷量=出荷していない量』で、ある程度推定できましたが、農畜水産を全て足したら食品ロスを超える量になるかもしれない。このことを勝太くんは”産地ロス”と呼んでいます」。

ーー”産地ロス”というのは消費者にとってもわかりやすい言葉ですね。

「現状規格外になってしまうのは色や形の違いだけ。そこを啓発する意味でも、未利用で捨てていたものに規格品に近い価格の価値を付けて、そこに共感してくださる小売や飲食店などの事業者に使っていただくていうことをいま進めてます。一次産業の従事者が年々減り続けていく中で、生産者を絶やさないためにどうやってサポートしていくかを考えたときに、年間でもしかしたら600万トン以上捨てているものがあり、しっかりとマネタイズすることができたら所得を上げられるのではないかという風にサステナミールとしては考えています」。

ーーまさに「あるものでまかなう(食品ロスジャーナリスト・井出留美さんの言葉)」持続可能な形を作られていますね。

「ありがとうございます。未利用な部位、部分をいかに素敵に変えていくかっていったことをやるときに使命感だけで説き伏せるようなことはしないよう、これまで通常捨ててしまうわかめとすでに商品として出荷されているわかめの成分を比較したエビデンスをとり、旨味成分の含有量は同等なので、”色が違うって理由だけで捨てています、でも味はおいしいんです”。という風に価値を可視化してお伝えしています」。

ーーおいしさが”見える”ことは消費者にとても説得力がありますね!

まずは業務用から。願いは当たり前のように家庭の食卓に届く形

ーー現在はどのように動かれていますか?

「試作は出来ているので、いまは主に企業さんに提案し、そこでフィードバックを得ながら今後どういう商品開発をしていこうか、どんな提案の仕方をどこにしていこうかというのを考えています。現時点では、大学の学食や鮮魚店、お弁当屋からも引き合いがあり、ありがたいことにミシュラン一つ星かつ、持続可能なガストロノミーのシンボル『グリーンスター』を獲っている永田町のレストラン〈ヌー.トウキョウ〉さんでは、すでにコース料理に取り入れていただきました」。

ーー「グリーンスター」と聞くと行ってみたいという願望はあります。実はいただいた、ご飯のお供系の写真があまりにおいしそうだったのでそういう形でも食べてみたいと思っていました。製品化の見通しは?

「未利用部位を食材としてそのまま流通にのせられるようにするというのが1つ、2つ目は河瀬さんによるおいしい加工品のレシピを流通させていこうと思っています」。

ーー手軽に食べられるのもいいなと。いま子育てをしているので、ご飯にかけるだけって最高だなと思いました。

「タルタルはパンのお供で、佃煮はご飯のお供なので『主食の名脇役』というポジションを意識してやっています。加えて、農畜水産全てに関わりたいと考えているので、未利用の白菜のキムチだったり、職人の作った干物をほぐしたXO醬生ふりかけなどの商品開発も同時並行で進めています」。

ーーそれは楽しみです(ヨダレ)!最後に、今後の展望をお聞かせください。

「すでに様々な生産者から『これは使えないか?』とお問い合わせをいただいており、産地からの期待の高さを感じています。そして、産地ロスの課題解決に志のある小売や飲食店のパートナーを開拓していきたいです。よく『消費者は形が悪かったり色が変わっていたら買わない』という意見を聞きますが、本当にそうでしょうか?『形や色が悪くても価値を伝えながら当たり前のように売る』という意志をもった小売店などと、“おいしい”ことが大前提で意見を塗り替えられるような活動ができればと考えています」。

〈サステナミール〉

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