「シンプルだからこそむずかしい、トマトと卵の炒め物」|真佑のお弁当奮闘日記
料理研究家のウー・ウェンさんを義母にもち、ウー・ウェンさんのクッキングサロンでアシスタントを務める井上真佑さん。ウー・ウェンさんとの日々の仕事と著書から学び、義母としてのウー・ウェンさんのアドバイスを受けながら、井上さん自身の工夫を加えて作ったお弁当の中身とは?
私とお弁当箱
私がこの連載のお話をいただいたとき、1番に「人に見せられるようなお弁当なんて作っていない!」と思いました。お子さんや旦那さんなど、人に渡す、人に見られる前提のお弁当は見映えを気にするかと思いますが(私もデートのときや、姪っ子のお弁当を作るときは気合いを入れます)、どうしても「自分のためだけ」「誰にも見られない」「日々のお弁当」となると、やる気も気合いもおきません(この想いに味方がいることを祈ります)。
いままでは、高校生のときから使っている、食べ終わったら重ねてコンパクトに持ち帰れる年季の入ったパステルカラーのお弁当箱に、適当にぼん!ぼん!とおかずとご飯を詰めていました。しかし、どんなに頑張って撮っても食欲がわかない見た目。
どうしようかな、と悩んでいたところに「私が大好きな作家・赤木明登さんにお弁当箱を作っていただけるようにお願いしましょう」と先生(ウー・ウェンさん)。実は先生、「私はお金持ちではないけど、お皿持ちなんですよ」と宣言するほど器が大好き。中国の器はもちろん、作家さんの物など色々持っています。
「わーい!」とうれしい反面、実は器がどんなにいいものでも、中身が私の料理だからなあ…と不安になっていました。
ドキドキしながら届いたお弁当箱にストンとおかずを入れてみたら、なんとも美人!器を変えるだけでこんなに変わるのか、と驚き。なんだか食欲も違う。
実は私、赤木さんの作品はこれが初めてではなく、以前先生から結婚祝いに、と赤木さんの赤と黒の三つ椀をいただき愛用しています。お椀に汁物をいれ、手に持って飲むととてもしっくりきて温かみを感じます。
漆器は扱いづらいのかな?と思っていましたが赤木さんのぬりものは日常使いに、と考えられているので、難しい手入れはなく私みたいな初心者には助かります。
馴染みのないものは自分で選ばないことが多いですが、飛び込んでみると意外としっくりくるものですね。器の世界は奥深く、沼だと聞いているので少しずつ勉強していきたいなと思います。