TOP_MG_0108
TOP_MG_0108

まだ見ぬパン屋さんへ。 小さいが個性的でハイセンス! 幡ヶ谷〈ケノヒパン〉&〈steppin’〉/池田浩明のまだ見ぬパン屋さんへ。 Learn 2022.09.23

パンラボ・池田浩明さんによる、Hanako本誌連載「まだ見ぬパン屋さんへ。」を掲載。上原から北へと移り、小さいが個性的でハイセンスな店が次々とオープンする幡ヶ谷エリア。ワインバーやカフェ、そしてパン屋も注目店のオープンが続く。

1.〈ケノヒパン〉パリの味が東京でも。 商店街に活気を再び!

ピザ200円、はちみつトースト200円など、庶民的なパンだが国産小麦を使用し、フランスで学んだ技術で作られる。
ピザ200円、はちみつトースト200円など、庶民的なパンだが国産小麦を使用し、フランスで学んだ技術で作られる。

新宿・渋谷からほど近いエリアに、こんな昭和な商店街があったなんて。ゲートをくぐると、まるで定休日のように、シャッターを閉めた店がそこかしこ。そんな街を盛り上げようと、若いパン職人の夫妻が、閉店したパン屋の跡地に飛び込んだ。陳列棚にピザパンやホットドッグが並ぶありふれた街パン屋...おやっ? と思った。その横には、「ロデヴ」や、自家培養したルヴァン種で醸す「カンパーニュ」など本格的ハードパンがあったのだから。

鈴木崇志さん・美影さん夫妻。互いにパン職人としてリスペクト。
鈴木崇志さん・美影さん夫妻。互いにパン職人としてリスペクト。

13年間パリのブーランジュリーをたかし渡り歩いた鈴木崇志(たかし)さんと、惜しくも閉店した下町の名店〈ロワンモンターニュ〉で腕を磨いた鈴木美影(みかげ)さんが4月にオープンさせた店。
「ロデヴ」は、北海道産小麦「キタノカオリ」を高加水で仕込んだ平べったい食事パン。ぷるぷるの生地がじゅわーっと溶け、キタノカオリならではの華やかな甘さが広がる。「カンパーニュ」は、信州上田の〈なつみ農園〉の在来種、「黒小麦」を使用。そのおかげで、皮のロースト香が群を抜いている。美影さんが丹精込めたルヴァン種が発するすがすがしい酸味と、いいコンビネーションだ。

手前左から時計回りに、カンパーニュフルーツ(ハーフ)600円、カンパーニュナチュール(ハーフ)210円(9月1日に価格変更予定)、チョコパン各100円。
手前左から時計回りに、カンパーニュフルーツ(ハーフ)600円、カンパーニュナチュール(ハーフ)210円(9月1日に価格変更予定)、チョコパン各100円。
食パン400円。小麦の風味があってコシがある。
食パン400円。小麦の風味があってコシがある。

名物のチョコパンは、街の人みんなに食べてほしいと100円。取材の日も、小学生が百円玉を握り締めて買いにきていた。大人になって、子供の頃食べていた国産小麦・高加水生地のそのパンは、彼の深い部分に影響を与えずにはおかないだろう。おしゃれな街できらびやかな店を営む実力をもった人が、あえて〝ケ〞(日常)の街で、〝ケノヒノパン〞を焼くことの尊さを思う。

〈ケノヒパン〉について

_MG_0146

〈ケノヒパン〉
住所:東京都中野区南台3-13-121 │地図
営:10:30〜18:00
休:木曜、水曜不定休
4月開店。パリと東京で経験を積んだ夫妻が、商店街で「ケノヒノパン」=日常のパンをリーズナブルに提供。

2.〈steppin'〉美しい形が目立つ、繊細なパンの数々。

クロワッサン各300円。ざくざくの皮ともっちりな中身のコントラスト。微妙な食感にこだわり精緻に焼きあげる。
クロワッサン各300円。ざくざくの皮ともっちりな中身のコントラスト。微妙な食感にこだわり精緻に焼きあげる。
古いバンジュウに置かれた、ゆめちから小麦のイングリッシュマフィン各130円。上に広がった形がユニーク。ぷるぷる食感に驚くはず。
古いバンジュウに置かれた、ゆめちから小麦のイングリッシュマフィン各130円。上に広がった形がユニーク。ぷるぷる食感に驚くはず。

2回目に訪れたとき、
「今日のクロワッサンはいい出来です。このまえ来られたときは、〝ほろっと感〞が出てなかったので」
と、店主の市村学びさんに言われたが、どこがちがうのかわからなかった。少し小ぶりで、いかにもざくざくとした鋭角なツノを持つこのクロワッサンはいつだって、〝すこぶる〞うつくしい。ざっくりと歯がよろこぶ砕け方をし、中身はまんじゅうを思わせるほどやわらかなもっちり感。ひとつのクロワッサンの中に、こんなにも異なる食感を両立させる腕は並大抵ではない。

市村学びさん。学び=「真似び」つづける姿勢を大事にしたいと、本名・学に「び」の1文字を加えた。
市村学びさん。学び=「真似び」つづける姿勢を大事にしたいと、本名・学に「び」の1文字を加えた。
メープルバタービスケット各350円。
メープルバタービスケット各350円。

他人には見えていないような細かいポイントまで見通しているからこそ、この食感が表現できるのだろう。たった人で、製造と販売を担う。パンと向かい合い、お客さんの顔を見てパンを手渡し、食べ方を説明する。それでやっと針の穴を通すようなピンポイントの感動が食べる人に伝わるというように。
壁にかけられた「古物商」の札。骨董を愛し、陳列に使用する家具や食器はすべてヴィンテージ。パンを見通すのと同じ繊細な視線で選ばれたものだ。この空気感、食感に再会したいばかりに、何度も足を運ぶことだろう。

〈steppin'〉について

_MG_0004

〈ステッピン〉
住所:東京都渋谷区本町6-37-101│地図
営:8:00〜売り切れ次第閉店
休:水・木曜、ほか不定休あり
4月開店。裏通りの古民家で店主が1人で製造、接客。小麦の個性を生かしたパンと焼菓子を提供。

Navigator…池田浩明(いけだ・ひろあき)

「パンラボ」を主宰しながら、ブレッドギークとして、日本全国のパン屋さんを巡り情報を発信する。いち早く国産小麦にも注目し、日本のパンの未来をみつめる。

■パンラボblog:panlabo.jugem.jp

(Hanako1212号掲載/photo:Kenya Abe text:Hiroaki Ikeda)

Videos

Pick Up

記事4_top_1Peachで行く、奄美大島 (直行便!) の旅④ | カヌーで巡るマングローブ原生林、海が青すぎる展望台…世界自然遺産を体感!絶滅危惧種を含むユニークな動植物が数多く生息する鹿児島県の奄美大島。奄美群島のひとつである徳之島、沖縄島北部、西表島とともに2021年に世界自然遺産に登録され、海外からも熱い視線が集まっています。 サンゴを育む奄美ブルーの海と白砂がまぶしいビーチ、アマミノクロウサギをはじめとする天然記念物も暮らす亜熱帯の森やマングローブの原生林。地球の宝ともいえる、奄美ならではの美しい自然を味わってみませんか? 奄美大島は「アクセスが良くない」というイメージもありますが、LCCのPeachが運航する直行便なら、成田空港から約3時間、関西空港から約2時間。そして時期によっては片道4,990円からとリーズナブル! “遠い楽園”が身近になるPeachの直行便で奄美大島2泊3日の旅に出たのは、ハナコラボパートナーである藤井茉莉花さん。今回は美しい海岸と展望台、マングローブの森でのカヌーツアーを体験した絶景&アクティビティ編をお届けします。 ※奄美群島のアクティビティの情報は、「あまみシマ博覧会」のサイトでも探せます。 https://www.amami-shimahaku.com/ 公式サイトはこちらTravel 2023.03.22 PR
お散歩がてら“おいしい”を満喫!東京・町田のレトロなグルメスポット5選お散歩がてら“おいしい”を満喫!東京・町田のレトロなグルメスポット5選いま最も注目を集めるスポット・町田。活気あふれる商店街を始め、地元の人に愛される洋食店、100年以上続く名店など、気になるお店が盛りだくさんなんです。そこで、今回は“レトロ”をキーワードに、いま行くべきグルメスポットを厳選。次の休日、きっと町田に行きたくなる!(PR/町田市)Food 2023.03.22 PR
SPpeachPeachで行く、奄美大島 (直行便!) の旅。2021年に世界自然遺産に登録された鹿児島県の奄美大島。一年を通して比較的温暖で豊かな森も美しい海も楽しめ、旅先に選ぶ人が増えています。 簡単におさらいしておくと、奄美大島は鹿児島本土と沖縄の間の洋上に浮かぶ離島。加計呂麻島や徳之島、沖永良部島など周辺の島々を合わせて奄美群島と呼び、フェリーや飛行機を使って群島ホッピングも可能です。 そんな奄美大島、いざ行くとなると「アクセスが良くなさそう」「航空券も高くなるのでは」と心配の声が聞こえてきますが…。大丈夫です! 日本のLCCを代表するPeachなら、奄美への直行便があるのです。成田空港から約3時間、関西空港から約2時間、そして(時期にもよりますが)片道4990円からとリーズナブル。これは、躊躇していたら損!Travel 2023.02.28 PR
サントリーvol3SP文筆家・塩谷舞による「今日、サントリーホールで。」Vol.3「何か豊かなものに触れて気持ちを切り替えたい。美術館で何かいい展示してないかな、映画館は……」。そんな日常の選択肢に加えて欲しいのが「コンサートホール」。クラシックといって構える必要はありません。純粋に音を楽しむのはもちろん、目を閉じてゆっくりと息を吸いながら、最近の自分のことを振り返ったり、あるいは遠くの場所や知人のことを思い出したり。ホールを出るころには心と体がふわっと軽くなる。文筆家・塩谷舞がサントリーホールで体験して綴る、「コンサートホールのある日常」。Learn 2023.02.28 PR
サントリーホールのオルガンは、オーストリアのリーガー社謹製。職人たちが1年がかりで手作業で作ったパイプをはるばる船で運び、半年かけて設置したのだとか。文筆家・塩谷舞による「今日、サントリーホールで。」Vol.2「何か豊かなものに触れて気持ちを切り替えたい。美術館で何かいい展示してないかな、映画館は……」。そんな日常の選択肢に加えて欲しいのが「コンサートホール」。クラシックといって構える必要はありません。純粋に音を楽しむのはもちろん、目を閉じてゆっくりと息を吸いながら、最近の自分のことを振り返ったり、あるいは遠くの場所や知人のことを思い出したり。ホールを出るころには心と体がふわっと軽くなる。文筆家・塩谷舞がサントリーホールで体験して綴る、「コンサートホールのある日常」。Learn 2023.01.27 PR
記事3_top_1Peachで行く、奄美大島 (直行便!) の旅③ | 絶景サンセットから、夜の森でアマミノクロウサギに遭遇!絶滅危惧種を含むユニークな動植物が数多く生息する鹿児島県の奄美大島。奄美群島のひとつである徳之島、沖縄島北部、西表島とともに2021年に世界自然遺産に登録され、海外からも熱い視線が集まっています。 サンゴを育む奄美ブルーの海と白砂がまぶしいビーチ、アマミノクロウサギをはじめとする天然記念物も暮らす亜熱帯の森やマングローブの原生林。地球の宝ともいえる、奄美ならではの美しい自然を味わってみませんか? 奄美大島は「アクセスが良くない」というイメージもありますが、LCCのPeachが運航する直行便なら、成田空港から約3時間、関西空港から約2時間。そして時期によっては片道4,990円からとリーズナブル! “遠い楽園”が身近になるPeachの直行便で奄美大島2泊3日の旅に出たのは、ハナコラボパートナーであるフォトグラファーのもろんのんさん。今回はサンセットの名所と森のナイトツアーを体験した絶景&アクティビティ編をお届けします。 公式サイトはこちらTravel 2023.03.14 PR
記事2_top_1Peachで行く、奄美大島 (直行便!) の旅② | とれたての海鮮丼から、島唄居酒屋で歌って踊って!?2021年に世界自然遺産に登録された鹿児島県の奄美大島。一年を通して比較的温暖で、豊かな森も美しい海も楽しめ、「沖縄より混雑していない」ことでも注目されて、旅先に選ぶ人が増えています。 簡単におさらいしておくと、奄美大島は鹿児島本土と沖縄の間の洋上に浮かぶ離島。加計呂麻島や徳之島、沖永良部島など周辺の島々を合わせて奄美群島と呼び、フェリーや飛行機を使って群島ホッピングも可能です。 そんな奄美大島、いざ行くとなると「アクセスが良くなさそう」「航空券も高いのでは」と心配の声が聞こえてきますが…。大丈夫です!日本のLCCを代表するPeachなら奄美への直行便があるのです。成田空港から約3時間、関西空港から約2時間、そして(時期にもよりますが)片道4,990円からとリーズナブル。これは、躊躇していたら損! そこで、ハナコラボ パートナーである藤井茉莉花さんが奄美大島2泊3日の旅へ。 奄美に魅せられて移住し、現在は多拠点でライターや通訳士として活動する藤原志帆さん(https://enjoy-amami.com/)に教わったおすすめスポットをまわります。 今回は海鮮丼、島唄割烹、お土産のセレクトショップなど、グルメ&お買い物編をお届けします。 公式サイトはこちらTravel 2023.03.07 PR
記事1_top_1Peachで行く、奄美大島 (直行便!) の旅① | 島とうふにスパイスカレー、超地元スーパーでおかいもの。2021年に世界自然遺産に登録された鹿児島県の奄美大島。一年を通して比較的温暖で、豊かな森も美しい海も楽しめ、旅先に選ぶ人が増えています。 簡単におさらいしておくと、奄美大島は鹿児島本土と沖縄の間の洋上に浮かぶ離島。加計呂麻島(かけろまじま)や徳之島(とくのしま)、沖永良部島(おきのえらぶじま)など周辺の島々を合わせて奄美群島と呼び、フェリーや飛行機を使って群島ホッピングも可能です。 そんな奄美大島、いざ行くとなると「アクセスが良くなさそう」「航空券も高いのでは」と心配する声が聞こえてきますが…大丈夫です! 日本のLCCを代表するPeachなら、奄美への直行便があるのです。成田空港から約3時間、関西空港から約2時間、そして(時期にもよりますが)片道4990円からとリーズナブル。これは、躊躇していたら損! そこで、ハナコラボ パートナーでフォトグラファーでもあるもろんのんさんが奄美大島2泊3日の旅へ。 奄美に魅せられて移住し、現在は多拠点でライターや通訳士として活動する藤原志帆さん(https://enjoy-amami.com/)に教わったおすすめスポットをまわります。 まずは、島とうふの定食にスパイスカレー、超地元スーパーでショッピングなど、グルメ&お買い物編をお届けします。公式サイトはこちらTravel 2023.02.28 PR