お寺の境内にある一軒家鮨店⁉  赤坂に江戸前鮨〈すし いわお〉誕生。散らさないちらし寿司「ちらしらず」、熟成キャビアたっぷり「キャビグロ」に注目。 LEARN 2022.04.04

赤坂の中心にある〈浄土寺〉の境内に、一軒家の江戸前鮨店〈すし いわお〉が4月1日にオープン。ほかでは味わえない個性的な寿司を、目と舌で心ゆくまで堪能できます。ランチ限定の「ちらしらず」と夜の「握りコース」を体験してきました。

国内外の5ツ星ホテルの元料理長が待望の独立。

カウンター8席のみ。ランチ(11:30〜、13:00〜)、ディナー(18:00〜、20:30〜)ともに2回転ずつ。
カウンター8席のみ。ランチ(11:30〜、13:00〜)、ディナー(18:00〜、20:30〜)ともに2回転ずつ。

赤坂駅から歩くこと約6分。お寺の境内にある一軒家というユニークなロケーションに〈すし いわお〉を開店したのは、〈ヒルトン東京〉〈フォーシーズンズホテル香港〉など国内外の5ツ星ホテルや、都内のミシュラン1ツ星鮨店〈銀座いわ〉などで料理長を歴任してきた岡部巌さん。

店主の岡部巌さん。この物件にひと目惚れし、何度も大家さんのもとへ通い詰めてオープンにこぎつけたそう。
店主の岡部巌さん。この物件にひと目惚れし、何度も大家さんのもとへ通い詰めてオープンにこぎつけたそう。

ネタは豊洲市場を中心に、週末は日本各地の漁師のもとを訪れて上質な魚介類を直接仕入れています。「ほかで味わえる鮨ではまったく意味がない」というこだわりのもと、伝統的な江戸前鮨に独自のエッセンスをちりばめたネタは唯一無二の輝きを放っています。

散らさない、ちらし寿司⁉「ちらしらず」が美しすぎる。

ランチ限定、1日16食限定で食べられる「 ちらしらず」は、看板メニュー。重箱の蓋を開けると、旬のものを中心とした16ネタを宝石箱のように美しく敷き詰めた“散らさないちらし寿司”がお目見えします。

シイタケ、白身魚で作ったおぼろ、刻んだキュウリ、甘みを演出する穴子の煮詰めをシャリの上にのせたあと、色合いを重視しながら旬のネタを“散らさずに”並べていきます。

アルデンテに炊き上げた「ロゼシャリ」「赤シャリ」を使い分け。

早速お皿に取り分けていただきます。今回は、春子鯛、エビ、タイなどのネタを楽しみました。口に運ぶと、しゃりのおいしさにもうなりました。

宮城産の大粒米ササニシキをパスタでいうところのアルデンテの硬さに炊き上げています。脂がのったネタには、昔ながらの製法で長期熟成した但馬醸造の赤酢を合わせた「赤しゃり」を、白身など淡白な魚にはやさしい味わいの「ロゼしゃり」をと、2種類のしゃりを使い分けるこだわりっぷり。

最高級キャビア×ノドグロ紅瞳が出合った奇跡「キャビグロ」。

「キャビグロ」。
「キャビグロ」。

夜の部の「握りコース」は、ひとり22,000円。目玉は、対馬のブランドノドグロ「紅瞳」を炭火で焼き上げ、世界でも珍しい無添加で長期熟成した最高級キャビアをのせた「キャビグロ」です。ノドグロの豊かな脂、赤しゃりに使われる酒粕、キャビアの塩分が一体化し、まるでマヨネーズのようにクリーミーな味わいを感じられるから不思議です。

ドイツから直輸入した1.1kgのキャビア「N25」は大迫力! カウンターに登場した時は思わず拍手!
ドイツから直輸入した1.1kgのキャビア「N25」は大迫力! カウンターに登場した時は思わず拍手!
ネーミングもキャッチーな「キャビグロ」。
ネーミングもキャッチーな「キャビグロ」。

最大限に甘みを引き出だした、熊本県天草産の車海老。

夜の「握りコース」、その他のネタもいくつかご紹介しましょう。

熊本県天草産の車海老を低温でじっくり火を入れることでより甘みを引き出した「車海老の握り」も美味でした。7割ほどしか火が入っていない生レア状態のため、噛めば噛むほどに車海老の旨味を感じられます。「手間をかけないとおいしい食材もおいしくならない」というのがお店のポリシーです。

「車海老の握り」。
「車海老の握り」。
いまがシーズンの「春子鯛(かすごだい)」は鯛の赤ちゃん。
いまがシーズンの「春子鯛(かすごだい)」は鯛の赤ちゃん。
「鰆の昆布締め」。1時間ほど昆布の上において風味をつけている。
「鰆の昆布締め」。1時間ほど昆布の上において風味をつけている。

マグロは赤身で見極める! ふわっととけるトロの口福。

「赤身がおいしいしいマグロは、おのずとトロも脂を蓄えていて美味」というのがネタの見極め方。「赤身マグロの漬け」では赤身の魅力を存分に引き出すべく、控えめながらも上品な存在感のある自家製の漬け醤油を使用しています。

「トロ」。
「トロ」。

「トロ」は、口の中で雪のようにふわっととけました。「マグロは本当に奥深く、一生修行だと思っています」(岡部さん)。

「トロタクのおはぎ」。
「トロタクのおはぎ」。
「鯖(さば)の棒鮨」。
「鯖(さば)の棒鮨」。
「生とり貝」。
「生とり貝」。
「穴子寿司」。
「穴子寿司」。

フレンチからヒントを得た「アワビの肝ソース」×北海道産ウニ。

「アワビの肝ソース」。
「アワビの肝ソース」。

コース後半には、ソース命のフレンチ料理から着想を得て和食の調理手法で作った「アワビの肝ソース」が登場。実は失敗作から生まれた偶然の産物なのだとか。改良を重ね、〈すし いわお〉のコースのなかでも異色のイチオシメニューとなりました。

赤坂 すし いわお

緑色がかっているのは、アワビの肝の量が多いから。バターのようなとろとろ食感ですが、バターは入っていないそう。サラサラの水のような状態から、ゆっくり1週間ほど肝を煮詰めています。とろみが勝負だから煮詰めすぎて焦がしてもダメ。絶妙な火加減を見極める職人の技が光っています。

赤坂 すし いわお

少しソースを残しておいて最後に北海道産ウニをオン。これぞ贅沢……。

キャビアと同様、ウニもクリーミーな質感にこだわっています。赤酢を効かせたしゃりが加わることで、どこかチーズのような風味を感じるはず。

デザートは意外な食材で作ったプリン。

このデザートの正体は……?
このデザートの正体は……?

コースの最後にはナゾのデザートが。「一体何から作っていると思いますか?」と問われ、しばらく頭を抱えました。まろやかな甘さからフルーツを思い浮かべましたが、不正解。

正解は……鮨店には欠かせない「卵焼き」から転じた「卵の黄身」です。〈すし いわお〉の「握りコース」においては卵焼きをあえて盛り込まず、代わりに黄身だけで作ったこちらのプリンを提供しているのです。火を入れていないので、どこか生卵を食べているようなフレッシュな感覚。

赤坂 すし いわお

「ほかで味わえる鮨ではまったく意味がない」という店主のこだわりは、アルコール類にも遺憾なく発揮されています。一般流通はせずミシュラン星付きレストランを中心に展開している希少な「ROCOCOビール」や、大阪の地ビール「箕面ビール」など個性的なラインアップ。

メニューには載っていないけれど、日本酒を飲みたい人は注文可能。甘口、辛口、レア物からリクエストに合う一杯をオススメしてくれます。

今回は鮨によく合う微炭酸の日本酒「天美」(長州酒造)をいただきました。月一回の料理メニュー入れ替えと同時に日本酒も新顔をそろえます。
今回は鮨によく合う微炭酸の日本酒「天美」(長州酒造)をいただきました。月一回の料理メニュー入れ替えと同時に日本酒も新顔をそろえます。

お猪口は有田焼や備前焼からイタリアで見つけたキュートなグラスまで、世界各地からコレクション。
お猪口は有田焼や備前焼からイタリアで見つけたキュートなグラスまで、世界各地からコレクション。

カウンターだけの鮨店と聞くと緊張しがちですが、店主・岡部さんが醸し出す楽しい雰囲気のおかげで、とてもリラックスした気持ちで過ごせたひとときでした。

「鮨の修行をするだけなら誰でもできる。最終的にはお客様に笑顔で『おいしかった、また来るね』と言いながら帰っていただきたいから、空間や雰囲気づくりも含めて私たちの仕事だと思っています。緊張よりは、楽しく、面白く。ぜひおくつろぎいただければ嬉しいです」と語るスマイルが印象的でした。

〈すし いわお〉
■東京都港区赤坂4-3-5
■03-5544-9862
■昼:第1部11:30〜、第2部13:00〜/夜:第1部18:00〜、第2部20:30
■土日祝休(月曜はディナーのみ)
公式サイト

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