2階は1日1組限定の宿。 京都カフェで今おすすめしたい、江戸建築をリノベした〈きんせ旅館〉。海外ファンも多数の魅力とは? FOOD 2018.09.25

京都でも、知る人ぞ知る島原エリアに、宿泊客の9割が外国人という旅館がある。1階には大正末期から昭和にかけて改装したカフェが。その独自の魅力を紐解いた。

日本最古の花街に残る、江戸と大正浪漫の和洋折衷

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西本願寺の西側に位置する島原地区。かつては、揚屋や(高級料亭のような場所)や置屋が軒を連ね、幕末には西郷隆盛や新選組も通ったという古い花街の一画にその店はある。入ってすぐのカフェスペース。ダンスホールだった大広間は、大正時代の洋館様式で、格子を入れた天井が特徴的。椅子やテーブルなども、当時のものに手を入れて使っている。

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本当にカフェがあるの!?と半信半疑で石畳を進み、幕末時代劇に出てくるような木造家屋ののれんをくぐると、確かに玄関先にコーヒーの焙煎機。ホールに入ると一転、今度は大正浪漫の世界に誘われる。飴色の壁や窓のあちらこちらにステンドグラスがはめ込まれ、目を落とせば、床には色とりどりの泰山タイル…。右がオーナーの安達浩二郎さん。米国在住時に知り合ったパートナーのシャナシーさんは、ここで生け花のワークショップも。左の志賀大樹さんはドイツから帰国し、京都へ。北区でスタジオを営む写真家でもある。

玄関先には、直火焙煎のコーヒー屋さん。

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いつともつかぬ時代に迷い込んだような和洋折衷の空間は、海外からの旅行者ならずとも、見入ってしまう。「子供の頃の自分にとっては、単に、夏休みになると遊びに行くおばあちゃんの家でした」。東京から京都に移り住み、母の実家だった〈きんせ旅館〉に新たな息吹をもたらした安達浩二郎さんは言う。

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併設の〈IWASHI COFFEE〉焙煎所では、毎朝直火式の焙煎機でコーヒーが焙煎される。豆の販売や通販のほか、カフェでも至福の味を。コーヒー500円、本日のケーキ600円

作者不明のステンドグラスが、ホールのそこかしこに。

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江戸末期に建てられたと伝えられる築250年あまりの元揚屋を曾祖母が購入。大正末期から昭和初期にかけて改築し、長らく旅館として営業していたが、20年ほど前に閉じ、そのままになっていた。〝ここでライブを開きたい〞という依頼を受けて片付け始めたところ、骨とう品が出てくるわ出てくるわ! 改めて祖母の家の価値を認識。埃をかぶっていた絵画を倉庫から引っ張り出し、ダンスホールだった広間に飾り、椅子を張り替え……と、ひとつずつ息を吹き込んでいった。

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大正末期の改装当時は、日本で最初のステンドグラス作家が活躍していた。玄関に牡丹、欄間に鳳凰やツバメ。窓にバラや菊が。どこか日本情緒を感じさせるが、作者は不明。

“きんせ”から程近い場所に、もうひとつの客室が誕生。

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そして2009年、1階がカフェとして蘇る。2年後には、揚屋時代の内装を残す2階が、1日1組限定の宿として復活した。徒歩3分ほどのところに、旅館の従業員用に使われていたという築約90年の木造家屋があった。ここも昨夏、リノベしてはなれに。宿泊は本館・別館共に1泊2名20,000円~。

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「表ののれんも、つい最近倉庫から出てきたばかり。当時は、漢字で〝金清〞って書いていました」。1階は、宿泊しなくても使えるカフェ&バー。復活時に唯一手を加えて作ったカウンターで、コーヒーからお酒まで提供。

〈きんせ旅館〉

■京都府京都市下京区西新屋敷太夫町79
■075-351-4781
■15:00(土日祝10:00)~22:00
■不定休(twitterで告知)
■18席/禁煙

(Hanako1162号掲載:photo : Masahiro Tamura text : Yuko Saito)

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