続々登場する新顔に、老舗&定番も充実。 焼菓子がある時間。PART #5 【 AREA SAMPO 京都 】
焼き菓子店が急増中の街で、店を巡る楽しい時間を。
休みが多い、行列がある、などなんのその。焼き菓子(ベイクグッズ)の店が増えているのが、西荻窪と京都。お目当ての店から店へとホッピングするのも楽しいという。
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京都で買いたいものを聞いて焼菓子という答えが返ってきても、ちっとも不思議じゃない。それどころか納得するほど、魅力ある焼菓子店が数多い。手づくり市やイベントでの人気を経て店を構えたり、自分のライフスタイルに合わせて週末だけの店を開いたり。けっして営業日が多くなくても、行列に並ぶことになっても、ファンはちゃんと待っている。それは小商いが根付く街ならでは。
とりわけここ1、2年で登場した店の多さは目をみはるほど。イベントが減ったことで開店の背中を押されたという話も聞く。
徹底的に作り込んだレシピが揺るぎない〈ミュルミュール 小川通の店〉。レストランとベイクの2本立ての〈リアン レストラン&ベイク〉。世界を巡った夫妻が、旅で出会った友人から届く食材を使った〈ローカル ベイキング トゥリーツ〉。ジェラテリアから展開する〈スギトラパティスリーラボ〉。パリの星付きレストランで腕を磨いたパティシエが開いた〈エトラ〉。お菓子にまつわるすべての人が笑顔でいられるようにと、フェアトレード認証素材などを使う〈サイベイクス〉。住宅街で優しい味のお菓子を作る〈焼き菓子 日はうたう〉。
店主それぞれが自分の好きを追求した焼菓子は個性豊かで、ほかと被ることがないのもうれしい。ぎゅっと凝縮するサイズ感の街だから、気になる店を巡るのも難しくない。好みの焼菓子と出合う幸せが待っている。
Le murmure 小川通の店|西陣
姉妹で作る、洗練と素朴さを兼ね備えた味。
週にたった1日の営業だった頃から評判の高かった焼菓子店。その新たなアトリエショップができたのは2021年のこと。
お菓子を作るのは妹の斉藤直子さん。試作を繰り返し、これぞというレシピにたどり着いたタルトタタンやシフォンケーキ、ガレットなどが並ぶ。その魅力を伝えるのは姉の丸井優子さん。ほっと心が和む、ここだけの味が魅力。
lien restaurant&bake|二条城
レストランのウィンドウに並ぶ焼菓子の可愛らしい姿。
店主の尾原順子さんはレストランでも活躍してきた経歴の持ち主。
「淡路島の有機栽培レモンや、京丹後のジャージー牛乳など安心できる素材を使って、シンプルにおいしいと思えるものが作れたら」と尾原さん。しっとりした食感をキープするためウィークエンドは小さく焼いてカットしないなど、こまやかな心配りがうれしい。
LOCAL〜baking treats〜|二条川端
気どらず温もりを感じる、焼菓子も空間もホームメイド。
店主の中村さん夫妻は3年かけて世界を旅した後に京都へやってきた。「店と家は夫が、アメリカンベイクは私が作ってきました」という。素材の持ち味を活かすべく、砂糖やバターは控えめに。「季節の果物は旅でできた友人から届く日本各地のものを」。旅に育まれたお菓子が待っている。
SUGiTORA Patisserie labo|一乗寺
ジェラートの人気店が作る正統派焼菓子。
ジェラートと華やかなパフェで知られる〈SUGiTORA〉が展開する焼菓子店。クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー2015で銀メダルに輝いた、オーナーパティシエの杉田晋一さんが手がける焼菓子は奇をてらわず上質。とりわけ注目は、軽やかな食感とナッツのコクが口いっぱいに広がるダックワーズ。1つでも満足感たっぷりの味わい。
ETRA|聖護院
琵琶湖疏水を眺めながら、パリ仕込みの甘い幸せに浸る。
疏水の流れる冷泉通に面した開放的なパティスリーカフェ。店主はパリでキャリアをスタートさせ、五ツ星ホテルや星付きレストランでの修業を経て帰国した寺田星羅さん。外側をバリッと薄く軽やかに焼き上げたカヌレや、「パティシエの特権のような焼きたてを味わって」というシューケットなど、さりげなくも贅沢な焼菓子が揃う。
Saibakes|二条城南
路地奥に見つける喜びと、心惹かれる品のいい姿。
初めてなら迷うこと必至の路地奥に、週末の2日だけ登場する焼菓子店。店主の谷百合香さんが作るのは、甘すぎたり重すぎるものが苦手な自分でもおいしく食べられるお菓子。「甘さを抑える代わりにスパイスやハーブ、お酒で風味を加えたり、味にアクセントを」と谷さん。想像を裏切る味もまた笑顔にさせるものばかり。
焼き菓子 日はうたう|一乗寺
工務店でのもてなしから始まった優しい味。
実はこちら、モダンな工務店のショールームに作られた焼菓子店&カフェ。とはいえ侮ってはいけない。国産小麦粉など安心な素材と、季節の果物を使った焼菓子は作り手の木村理恵さんが、丁寧に完成させたもの。もう一つと手が伸びる、あとを引く味わいだ。
Traditonal
京都で洋菓子を語るとき、欠かせない存在が明治40(1907)年
創業した〈村上開新堂〉。明治13(1880)年に創業した、京都で最初の洋菓子店〈桂月堂〉が閉店してしまった現在では、もっとも古い洋菓子店となる。愛され続けるクッキー缶やロシアケーキは、京都の焼菓子文化のルーツそのもの。
続いて紹介するのは、存在感を放つ定番の店々。2019年に実店舗を構えた〈ノーウェアマン〉も、活動をスタートしたのは2010年のこと。0000年に手作り市やイベントから始まった〈坂田焼菓子店〉、2012年にオープンした〈ナカムラ ジェネラル ストア〉と、3軒とも10年以上愛され続けている。人々を惹きつけてやまない存在が身近にあることで、焼菓子というカルチャーは広がり、洗練されていったのだ。京都は焼菓子の街と断言してもいい、そう感じさせてくれる近ごろ。
京都 村上開新堂|寺町二条
4代目が受け継ぎ守る、京都きっての老舗菓子店。
昭和初期に建てられた、カーブを描くショーウィンドウに風格を漂わせる。店の代名詞といえるロシアケーキは、少し柔らかな食感のクッキーで昭和30年代から作り始められたもの。5つのトッピングそれぞれに、異なる食感も楽しみたい。クラシカルな進物箱は、自分用にも箱入りで買い求めたくなる愛らしさ。
Nowhereman|四条南
力強くエッジの効いた焼菓子と詩と。
詩の世界観を洋菓子で表現するクリエイションブランド。そう掲げる店主の長野洋樹さんが作るのは、フランスの伝統菓子の輪郭を際立たせ、力強さを感じさせる菓子。新しいフレーバーに期待膨らむバターサンド、月替わりのテーマで展開する〈BY10〉など、心くすぐられる仕掛けも多々。
坂田焼菓子店|上七軒
日々を豊かにしてくれる、素材と向き合う丁寧な味。
手作り市で注目を集め、2015年に店を構えるとたちまち人気店に。店主の坂田保子(よりこ)さんが作るのが、子供の頃に母親が作ってくれた焼菓子がルーツ。とはいえ気に入ったカナダのパイ専門店で働き、レシピをブラッシュアップさせるなど、常に進化もし続けている。
NAKAMURA GENERAL STORE|烏丸御池
現地の味をそのまま再現、ハワイ流のアメリカンベイク。
古着店店主から料理人へと転身し、ハワイに暮らしていた店主の中村淳一郎さん。その味に惚れ込んだ店のアメリカンベイクを身につけ、帰国後に開いた専門店。スコーンやマフィン、ブレッド、ビスケットなど開店に合わせて焼き上げる焼菓子は15種類ほど。京都で出合う、ちょっと遠くなったアメリカの味だ。