駒場東大前をぶらり。歴史の残り香を捕まえて|花井悠希の「この街この駅このパン屋」

FOOD 2023.01.05

ヴァイオリニストの花井悠希さんがお届けする、新しいカタチのパン連載。1つの駅、1つの街にフォーカスを当て、ここでしか出会えないパン屋さんを見つけていきます。

2軒目〈Le Ressort〉

駒場東大前駅といったら絶対に訪れたかったのが〈Le Ressort(ル・ルソール)〉さん。老若男女、たくさんのお客様がそれぞれのお気に入りを買い求めに来ている感じ。新参者の私は少しみなさんの様子見て、チョイスしていきましょう。駒場公園のベンチに腰掛けて、早速いただくことにしました。

チーズが本格的な香りとコクで目を覚ましてくれます。このチーズ、おいしすぎる!と2度見した目はすっかりギンギンです(←怖い)。もっちりと引きのあるチャバタに、脂身と赤身のバランスが良いハムが燻製の香りと塩気をプラス。そこにチーズの濃ゆいコクがぐんと深いところへと引っ張っていってくれます。まさに沼!ハムとチーズのサンドイッチという、シンプル故につい想像してしまう味をいとも簡単に超えていくおそろしい子(褒め言葉)。

「ピスタチオクリーム」。
「ピスタチオクリーム」。

なんてこったい!ピスタチオが濃いです。本場です(本場とは…?)。「ピスタチオの味ってこれなのよ」と、手解きしてくれているのかしら?と思うほど豊かな風味が広がります。クリームからしゃりりりと滲む砂糖は嬉しい変化球。クリームを泳ぐアーモンドと、パン生地にゴロゴロと練り込まれた胡桃が、角度の違う香ばしさを放ちながら、ピスタチオの青々とした香ばしさと並走して、一緒にゴールを目指します(何の?)。

「ミルクフランス」。
「ミルクフランス」。

ハードなフランスパン生地からはたくましい小麦の香りと塩気が冴え渡る。すっかりそれに安心して甘えるミルククリームがいて、惜しみなくコクを運ぶミルキーな甘さとバターの塩気がいて。この子もシンプルなのに想像を超えてくるあたりかっこいいな。禁断の高カロリーな甘い罠に気をつけて(自らかかっていきましょう)。

「チャバタ」。(撮影:花井悠希)
「チャバタ」。(撮影:花井悠希)

ぐんと引きがあって、ぱしゅっと空気が抜けると、もっちりふくよかな弾力からふわりとオリーブオイルの香りが立ち上がってきます。しっかりとした塩気も相まってどことなくイタリアンな趣です。表面は小麦粉がまぶされドライな質感。気泡がたくさん入っている分の抜け感があって全体的に軽やかなあたりも、軽快なイタリア人男性(○ローラモさんのような)を彷彿とさせますね(私調べ)。

「塩バターコーンパン」にサンドされているのは“バターまみれのとうもろこし”(←言い方な)。これでもかと、とうもろこしと対等な量のバターがまみれているのです。もちもちのパンに、キリッとした粒たちのとうもろこしがいて、冷たいバターが口内でとろけるのを待っている。もう私にこれ以上必要なものなんてないのでは(あるだろうよ)?

「バナナとピーカンナッツのタルティーヌ」は焼かれることによって酸味と甘味が増したフレッシュさの残るバナナが主役。とはいえ、パンに練り込まれたピーカンナッツが影の立役者。上にバナナを載せられ、アーモンドクリームに覆われようともほっくりさをキープしています。ほやほやでホワッホワと溶けるアーモンドクリームににんまり(語彙力の消失)。

〈Le Ressort〉
■東京都目黒区駒場3-11-6 桑野ビル1F
■9:00〜17:30
■月火休

どっしりとした風格の歴史ある建物に、駅前のあちらこちらを彩るイチョウの黄金色。ふと足を止めたくなる景色がいっぱいだった駒場東大前。歴史が息づく街で刺激を受けた街歩きとなりました。次はどんな街に出会えるかな?
いままで綴ってきた「朝パン日誌」を読んでくださっていたみなさまも、今回初めて読んだわ〜というあなたも、「この街この駅このパン屋」を、どうぞよろしくお願いします!

photo:Kaori Ouchi

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