心揺さぶられる1冊に出合いたい。作家・鈴木涼美さんおすすめの新刊3冊
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1. 理屈で説明できない体験で、現実とは何かを考える。『霊感ゼロの女がオカルト体験全部やったら宇宙まで飛んでいった話』角 由紀子

オカルト系メディアの編集長などを経て、いまやその分野の研究者として大変な人気を集める著者が、もともと霊感などなく、懐疑的だった立場から、実際にオカルトな現場に行き、自分で体験し続けた記録。ちょっと名の知れた心霊スポット巡りから南米での臨死体験、「タントラ」の瞑想で自分の前世を見る。気づけば話題は宇宙と人間の意識にまで広がる。鼻で笑うでもなく、かといって押しつけがましく盲信するでもない、私たちと同じ現実を生きる著者の言葉は素直に興味深く読み進めてしまう。経験から得た「本当に効く」除霊法などつい読みたくなるコラムもたくさん。
2. 清潔で正しい時代に、僅かな不協和音が救いになる。『ノー・ファンタジー』上田岳弘

働くシングルマザーとして仕事や子育てを全うする女性は、海外出張から帰る日の夜だけ、学生時代の知人で会社を売ったばかりの男と空港近くのホテルで過ごす。会社をやめてFX 取引で手堅く生計をたてる男は登山中に他界したかつての同級生が残した形見で安全とリスクについて思いをはせる。合理的に整えられた世界で安全に生きながらえながらもどこか息苦しさを感じる者たちが待ち望む、小さな破綻。安全性や清潔さに小さな違和感を持つ私たちにとって、世界の綻びみたいなこの小説はすべてを諦めて受け入れてはいけない、と語りかけてくるような気がした。
3. 母が娘にかける呪いはどこまで巻き戻せば解けるか。『虐幸のくるちゃん(1)』木陰ひな田

何不自由なく暮らすくるちゃんは、自分と違って幸福な青春時代を送れなかった母の幸福を望んでいる。文字で書いてしまえばなんとなくいい話に思えるそんな世界だが、丁寧に描かれる家庭の様子を見ると、母親の機嫌が作り出す空気や言葉の端々にくるちゃんを支配する呪いの正体が隠れる。大切な人の幸福を望む、一見正しい感情に突き動かされるくるちゃんに、自分が虐待の被害者なんていう発想はひとつもない。たとえ母の疲れひとつで自分のしたいことを全て奪われる環境にあっても。自分は娘にどんな呪いをかけているのだろう、と空恐ろしい気分で読んだ。
すずき・すずみ/著書にエッセイ『めめSHEやつら』(KADOKAWA)など。新刊『女の子未満』『悪い血』が発売中。


















