ドラマ『今夜、秘密のキッチンで』 ドロドロ設定も多いのに、なぜか上品に見えてしまう不思議。
第一話の謎はどう回収されていくのだろう?
主人公の坪倉あゆみ(木南晴夏)は、もともとは女優をしていたが、実の母親の金銭トラブルによって引退し、そのときに支えてくれていた人気レストランの二代目社長・坪倉渉(中村俊輔)と結婚し、彼の前妻の娘の陽菜(吉田萌果)と三人暮らしをしていた。
しかし、以前は優しかった渉は今ではモラハラばかり。義母の京子(筒井真理子)も、跡取りを望んだり、料理に文句を言ったりで、あゆみは気が休まらない日々を送っていた。
唯一落ち着けるのはキッチンだけ。ある日、キッチンでブランデーを飲んでいたあゆみは、台所で倒れてしまう。彼女を助けたのは、シェフのKei(高杉真宙)だった。
一話では、謎がたくさんあった。まずはキッチンにふらりと現れるKeiの存在だ。夫は「新しい店の責任者がしばらく家に出入りする。イタリアンのシェフだ」と言っていたから、そのシェフがKeiなのだと視聴者もあゆみも思っていた。しかし、夫が紹介したシェフはKeiではなかった。
だとしたらこのKeiとは誰なのか?と思うのは自然なことだろう。Keiはいつも音もたてずにキッチンに突然現れることが多い。見ていて、「この人はいつ家に入ったのだろう?」と不思議に思っていたのだった。
これは一話の終わりで気づくことになる。Keiはこの世の人間ではないということに。あゆみが彼のことが見えるのは、彼女が倒れて生死をさまよったことによるのだった。彼のことが見えるのは、あゆみのほかに、隣の家に住んでいた鈴木林太郎(安井順平)のみ。彼は三年前に亡くなっており、娘を遺して逝ってしまったことに整理がつかず、現世をさまよっているのだった。
しかし、この林太郎がいることで、コミカルな雰囲気も加味され、あゆみとKeiとの関係性にも、ほのぼのした雰囲気が宿っている。

複雑な設定なのに、“悪人”が見当たらない物語の行方は?
そもそもこのドラマは、ドロドロした設定も多いのに、なぜかドロドロして見えない。ドロドロの要素はたくさんある。あゆみの夫の渉は、出会ったときは優しかったのに、今ではモラハラ夫だ。あゆみの劇団時代からの友人とは今もランチをしたりと仲がいいが、その一人、吉野舞(佐津川愛美)は今は女優の道をあきらめ、人気ヨガインストラクターに。しかし、この舞が渉と不倫をしているのだ。
しかも、Keiには、現世では小椋藤子(瀧本美織)という人気料理研究家の婚約者がいたということもわかる。また、Keiがこん睡状態になったのは、神奈川県の山で転落したことに原因がある。そのことを刑事は追っていて、その事件も何か渉に関係がありそうにも見えているのである。
ただ、不思議なことに、このドラマは夫や姑のモラハラ、不倫、事件など、物騒なことが多いのに、不思議と上品なのである。
その要因を考えると、あゆみが、藤子や姑の京子に、あからさまな反撃に出ないこと。そして、あゆみとKeiの仲は、愛情を感じあってはいるが、それがプラトニックなこと。そして、Keiの婚約者の藤子が、あゆみとKeiの仲を疑ってはいるが、嫉妬に狂うことはなく、あくまでも冷静であること。夫も不倫をしながらも、気持ちはあゆみに戻りつつあり、モラハラも少なくなっていること。そして、あゆみにとっては連れ子の陽菜との関係性が良好で、陽菜は義母の京子よりもむしろあゆみになつき始めていることなどがある。
最新話ではまたあっと驚く展開が起こった。Keiはこん睡状態から目が覚め、もとの若林慧に戻ってしまったのだ。そして、これまでのあゆみとの記憶はすべてなくしてしまったのである。
記憶をなくしたKeiは、若林慧としてあゆみのことを思い出すのだろうか。そしてふたりが、ひとときは感じた愛を成就することができるのか。そして、Keiの事故には、誰が関係しているのか、予想のつかない展開で、続きがきになってきている。
しかし、このドラマ、難しいのは、Keiの婚約者も、あゆみもまともで、悪人であるところがまったくないところである。そのことで、Keiをめぐっていがみあうこともできないだろうし、むしろ、お互いを思いあって、お互いが身を引きそうな人の良さも感じさせている。 ふたりが、いがみあったりしていれば、ドロドロの展開にもなりそうなものだが、このドラマのある種、上品な雰囲気の中で、どのように、あゆみとKeiの関係性が落ち着いていくのかが気になっている。
第一話公開中 https://shuro.world/episode/129079/
あれ、主人公の設定がドラマとは……。同じタイトルの作品なのに、別のストーリーであるかのような気持ちで楽しめそう。
text_Michiyo Nishimori
















