『伊藤家の晩酌』~第七夜3本目/ふくよかな米の旨みが燗でさらに引き立つ「フモトヰ 雄町 きもと純米吟醸」~
2020.01.19

第25回 娘から父へ…おいしい日本酒おしえます! 『伊藤家の晩酌』~第七夜3本目/ふくよかな米の旨みが燗でさらに引き立つ「フモトヰ 雄町 きもと純米吟醸」~

弱冠22歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入! 酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?第七夜のテーマは「お燗がおいしいお酒」。その3本目は、生酛造りで純米吟醸のお酒をなんと燗酒に?
(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)
伊藤 ひいな
伊藤 ひいな / 唎酒師

「東京生まれの22歳。大学入学時から割烹料理店でアルバイトをはじめ、20歳のお酒の解禁とともに日本酒にハマる。唎酒師の資格も取得し、日本酒の知識を増やすべく日々邁進中。父はHanakoをはじめ多くの雑誌で引っ張りだこの人気フォトグラファー、伊藤徹也。酒好き気質は間違いなく父親譲り!」

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今宵3本目は、燗にすると甘みが抜群に増す「フモトヰ 雄町 きもと純米吟醸」で〆。

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山形県は鳥海山の麓にあることからその名がついた。ミネラルウォーターの採水地にもなるほどの名水から生まれた酒はすべて昔ながらの生酛造り。「フモトヰ 雄町 きもと純米吟醸」720ml 1650円(税込・ひいな購入時価格)/麓井酒造株式会社

娘・ひいな(以下、ひいな)「蒲田にある〈ひかりや〉っていう地酒とワインのお店でお話しさせてもらったら、燗をつけるならこのお酒がいいよって勧められて」
父・徹也(以下、テツヤ)「お、気になるねぇ。え? でもこれ純米吟醸なんだ」
ひいな「そう。普通はこのお酒、燗にしないと思うんだけど、燗にしたらどう変化するか? まずは普通に飲んでみよ!」

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テツヤ&ひいな「んじゃ、乾杯!」

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(しみじみと……おいしさが五臓六腑にしみわたる)

テツヤ「あぁ、芳醇…」
ひいな「うん。で? それだけ? 誰かに例えてみて」
テツヤ「加藤登紀子さんだね」
ひいな「え〜わらかない(笑)」
テツヤ「いや、風吹ジュンの間違いだった(笑)」
ひいな「わかるようなわからないような例え…」

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(テツヤの例えがひいなに伝わらない…父娘のジェネレーションギャップ)

テツヤ「俺は好きだなぁ。俺、これが一番好きかも」
ひいな「それ、また言ってる(笑)」
テツヤ「飲むたびに、一番おいしいものが更新していくのもいいんじゃない(笑)?」
ひいな「まぁ、いいか。酔っ払ってるし(笑)」
テツヤ「このお酒、酸がいいね、冷酒でも十分おいしい」
ひいな「フルーティな感じもあるよね」
テツヤ「うん、すごくバランスがいいし、クセがないね。するする飲めちゃう」
ひいな「実はね、山形の生酛のお酒なの」
テツヤ「えぇ! そうなんだ!」
ひいな「『麓井』の良さはね、水の良さ。鳥海山の麓に湧く水だからすごくおいしいの」
テツヤ「鳥海山の“ふもと”だから、麓井なんだな」
ひいな「当たり!」

それではお燗に。生酛造りの純米吟醸はどんな味に変化するのか?

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(魔法瓶にお湯を入れて、ちろりで温めるだけで燗酒が簡単にできちゃいます。やり方は前前回記事を参照!)

テツヤ「これを燗にしたら一体どうなっちゃうんだろう? 今回は何度?」
ひいな「45度で上燗(じょうかん)って言うよ。温度が低いほうから日向燗(30度くらい)、人肌燗(35度くらい)、ぬる燗(40度くらい)、上燗(45度くらい)、熱燗(50度くらい)、とびきり燗(55度以上)になるよ」

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テツヤ&ひいな「燗にして、乾杯!」

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テツヤ「おぉ!!! これは燗にしたほうがうまいねぇ」
ひいな「うん、どんどん入ってくる!」
テツヤ「これはね、バカの俺でもわかる。うまい」
ひいな「そんなに?」
テツヤ「これは絶対、燗だな」
ひいな「うん! まったくの別物だよね」
テツヤ「温度もいいね。45度だっけ?」
ひいな「うん、より甘みが増したね」
テツヤ「今回の中で、一番しっくりきたのがこの温度かも。一番好き♡」
ひいな「日本海側のお酒って燗に合うイメージあるんだけど、このお酒は燗にするお酒じゃないなって思ってたんだよね」
テツヤ「挑戦してみようっていうひいなみたいな気持ちがなければ、絶対、冷酒で飲んじゃうやつ」
ひいな「そうだよね。何事も挑戦だね」
テツヤ「そう、大事。失敗したっていいんだからさ」
ひいな「いただきました。酔っ払った父からのアドバイス」
テツヤ「(笑)。今まで飲んだ中で、一口目の驚きはやっぱりこの『フモトヰ』かな」
ひいな「うん、意外性があったね」
テツヤ「ひいなはさ、これだけいろいろ飲んでたらさ、県の方向性とかってあるの? 例えば山形のお酒ってこんな感じとか」
ひいな「私、地域でひとまとめにして考えたことないかも。酒蔵によって違うから」
テツヤ「なるほどねぇ。それもひいならしい」

「フモトヰ 雄町 きもと純米吟醸」に合わせるのは、贅沢な「中とろと黒毛和牛のニンニク醤油漬けの炙り」!

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漬けにした分厚い中とろに和牛を巻きつけて、一気に炙る! その香りだけで何杯でもイケる!

テツヤ「やっぱりさ、つまみに合わせて飲んでみたいね。今回は何なの?」
ひいな「中とろと黒毛和牛のニンニク醤油漬けの炙り!」
テツヤ「うわ! 名前だけでうまそー! でもこの酒の甘みに、ちょっと脂っこくないか?」
ひいな「いやいや、これは脂に合うぞって思って。でも、この組み合わせをしたがるのは私ぐらいかもしれない(笑)」
テツヤ「うん、ひいなだけだと思うよ(笑)」
ひいな「上品な甘みが『フモトヰ』にはあって、そこに脂を足すことで、さらにワンランク上のお酒になるんじゃないかなと思ったんだよね。お酒を合わせることで、食がおいしくなるのはもちろんなんだけど、これはどちらかというとそっちよりもお酒をおいしくするための脂を選んだって感じ。コクを出すために、お父さん特製のニンニク醤油につけて」

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テツヤ「そりゃ、最高だね。もうさ、これ手で食べていい?」
ひいな「手? 熱いよ?」
テツヤ「俺さ、こういうのって手で食べたくて。コロッケとかさ」
ひいな「コロッケも熱いよ!」
テツヤ「まぐろと牛肉を合わせて、さらに炙っちゃうんだもんな〜。あぁ、いい匂いだねぇ。高級な鉄板焼きの匂いがするね。お先にいただきます!」
ひいな「前のバイト先で、ウニとリブロースっていう組み合わせをやっていて。中とろの炙りもやってるところがあったから、組み合わせたら絶対おいしいだろうなって思って、合わせ技にしてみました。今回は脂を求めてたから」
テツヤ「いい脂onいい脂だもんね。♫肴はあぶったイカでいい〜♫ ひいなこの曲知ってる?」
ひいな「♫女は無口なひとがいい〜♫でしょ?」
テツヤ「知ってるんだ(笑)」

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(手で食べたテツヤの右手は脂でべとべと。そこですかさず、ひいなが盃を口元へ!娘の優しさ…)

ひいな「おいし〜! こんな海と山の合体があるなんて!最高だね」
テツヤ「炙りってものを発明した人、天才だね」
ひいな「おいしくないわけないもんね」
テツヤ「香ばしくい香りも、ちょっと火が通った感じも最高!」

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(口内調味中のテツヤ。脂と酒が混じり合い、この顔)

テツヤ「この口内調味は、洗い流してるの?」
ひいな「いや、切ってるわけじゃなくて、脂と一緒に溶けるみたいな感じ?」

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テツヤ「これ、エンドレスでいけちゃうやつ。最高。間違いないうまさだね。うんま!」

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ひいな「顔がとろけてるよ」
テツヤ「たまんないね。牛肉と中とろなんてさ、なんかバブルっぽい組み合わせだなと思ったけど、バブルっぽくないね。見事に庶民に昇華されてる」
ひいな「よくわからない(笑)」
テツヤ「ぜんぜん嫌味がないってこと!おいしいから海と山が合体しちゃったわけで、ウニとフォアグラだとダメだね、きっと。マジでうまいよ」
ひいな「よかった〜。これが一番心配だったから」
テツヤ「脂と脂なんだけど、ぜんぜん脂っぽくないという不思議。お酒が溶かしてるんだな。ほんとに好き♡ 今日の一番はこれだね。ひいなの創作性のすごさが発揮されたね」
ひいな「ありがとう。べた褒めだね(笑)」

(次回は2020年1月26日(日)更新です!)

第七夜2本目「「日置桜 鍛造にごり 山田錦」」はこちらから

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