言いたいコト、書きたいコトバ…混じり気ナシ! 弘中綾香の「純度100%」~第28回~ LEARN 2020.06.12

ひろなかあやか…勤務地、六本木。職業、アナウンサー。テレビという華やかな世界に身を置き、日々働きながら感じる喜怒哀楽の数々を、自分自身の言葉で書き綴る本連載。初インド旅4日目はインドの代名詞的な観光地へ。

「インドに行ってきた」(その7)

 インドで思いつく一大名所といえば、やはり世界遺産の「タージ・マハル」だろう。皆さんも写真で一度は見たことがあるはずの、白く悠然と立つ美しい霊廟。計算されたシンメトリーが荘厳かつ気品を漂わせている。ミーハーな私が同行の皆さんに一つだけリクエストしていたのが、ここに行くことだった。調べるまで全く知らなかったのだけれど、タージ・マハルがある場所は私たちが泊まっていたニュー・デリーからは車で3~4時間と結構遠い。アグラという市に位置している。往復するだけで半日かかるので、皆さんの貴重な一日をいただいて、“タージ・マハルデー”を設けてもらった。

 移動時間がかかり、かつ、世界中から観光客が押し寄せるため午後は混んでいるということで、車をチャーターし、早朝にホテルを出発するプランになった。これも全部私はついていっただけで、業者選びからドライバーさんとの連絡まで全てやっていただいたという、いい歳して本当に「おんぶにだっこ」である…。
 朝は6時すぎにロビー集合だった。大好きなホテルの朝食ビュッフェがちょうど6時にオープンするということだったので、あんなおいしいものをスキップしてはいけない、とどこまでも食い意地が張っている私は、朝ごはんも短時間ながらしっかりいただく。ああ、思い出したらまたあのラッサム(インドのお味噌汁的立ち位置の酸っぱいスープ)が飲みたくなってきた(東京で飲めるお店あるのかな)…。腹ごしらえも完了し、車に乗り込む。日本車だった!こういうときにホッとする自分に唐突なアイデンティティーを感じる。街を走る車と違って、乗り心地も心なしかいいように感じた。
 ニュー・デリーを出て高速にのり、アグラを目指す。ひとたび街を抜けると、だだっ広い土地に囲まれた一本道がひたすら続くばかり。車の揺れも相まってすぐに眠ってしまった。高速でもウインカーを出さずに車線変更をするのには驚いたけれど…。

 タージ・マハルに近づくにつれて街が騒がしくなってくる。年間を通して観光客がひっきりなしに訪れる一大観光名所ということもあって、ツアー会社や飲食店も多い。近年、押し寄せる観光客の車の排気ガスによって真っ白なタージ・マハルの景観が損なわれているらしく、車で行けるエリアが決まっている。ここからは電気自動車か徒歩、というようにボーダーが引かれて、必ず車は停めなくてはいけない。車を降りると、公式ガイドであるというIDカードをぶら下げた沢山の人が「ガイド?」と、まるで新宿のキャッチおぼしく声をかけてくる。けれども滞在数日にしてインド人のしつこさに順応してきたので、特段気にすることもなく、またやってる、くらいで済ませられる。横目で流すのみだ。水やお土産ものを売ってくる人たちを交わしつつ、私たちはタージ・マハルまで歩くことにした。まだお昼前、しかも季節は乾季の2月なのに、差し込む太陽の光が強く、汗をかくくらいだった。

 やっとの思いで入場ゲートにつくと、入念な荷物チェックがあり、ペットボトルの水と靴カバーが手渡される。こちらも大理石で作られたタージ・マハルを汚さないための方法である。何もかも大らかで無頓着そうに思えたインドで唯一こまやかな気配りを感じた瞬間といってもいいかも。入口を入って一番に目に飛び込んでくるのは巨大なメインゲート。門といっても、いわゆる漢字の「門」そのままの形、例えばフランスの凱旋門のような、でん、とした威圧感のあるものではない。温かみのある赤茶色の砂岩で出来ている。そこに、赤やオレンジ、緑の宝石でお花の模様を描き出した白い大理石が埋め込まれている。塗り絵のお手本のような、色のコントラストが美しい表情を付ける。綺麗な曲線を描くドーム状の大きな吹き抜け、角の生えたメレンゲのお菓子みたいな形の塔がいくつも並んだ屋上など、頭の先からつま先までどこをとってもメンテナンスが充分にされている裕福なご婦人のような、優美だけれど、どっしりとした芯のある包容力を感じる。
 それもそのはず、というか、私はすでに背景を勉強していったからそういった印象になってしまっているのだが、ここで説明しますと、このタージ・マハルには「世界一美しい霊廟」といわれるだけの愛に満ちた美しいストーリーがあるのです。
 気になるその物語については次回に。
 
次回:6月26日更新予定

photo:moron_non
photo:moron_non

【弘中のひとりごと】
モノが少ない人になりたい…。

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