あなたにとって働きやすい会社とは? #4 Morning Labo 中野笑里さん
福利厚生や待遇が良いにこしたことはないけど、「決定権や裁量権を若手にまかせてもらえる」「人生のステージの変化によるパフォーマンスの波を受け入れてくれる」など、人によって「働きやすさ」は多種多様です。この連載では毎回、一人の女性の職場を訪問。人と会社のいい関係について考えます。第四回目は〈Morning Labo(モーニングラボ)〉の中野笑里さんです。
女性向けマーケティング支援を行う「コミュニケーションプランニング事業」と早起き研究所「朝渋」を展開する〈Morning Labo(モーニングラボ)〉で、企業のSNSの運用を担当する中野笑里さん。メディアの編集長やディレクター、フリーランスのライターを経て、2022年11月に入社した。プライベートでは、2021年に出産を経験し、現在2歳の娘を育てている。
〈Morning Labo〉の社員は現在6名。そのうち、中野さんを含めた2名が時短勤務で、1名は台湾に留学しながらリモートで勤務しているという。
「毎週火曜日は出勤で、月・木・金は、8時半〜16時ごろまでリモートで働いています。水曜日は午前勤務にしていて、保育園の給食が終わった頃に娘を迎えに行きます」(中野さん)
元々は、フリーランスのまま業務委託で働く予定だったが、〈Morning Labo〉代表・中村朝紗子さんに正社員として働くことを後押しされたという。中野さんと同じワーキングマザーの中村さんとは、困ったことがあれば相談できる関係性だ。
「入社して4カ月経った頃、一人で仕事を抱え込み、体調を崩してしまったことがありました。『やっぱり正社員として働くのは無理かもしれない』と精神的にも追い詰められていたときに、中村が家まで来てくれたんです。中村と話して『もう一度がんばってみよう』と思えたので、業務整理について相談し、得意分野のエディトリアルやライティングなど、力を発揮できるポジションに変えてもらいました」
“イヤイヤ期”にもじっくり向き合いたい
仕事とプライベート、そのどちらにおいても最優先に考えるのは娘のこと。「娘と笑顔で過ごすこと」を大切にしていると話す。
「降園後は、娘と公園で遊んだり、スーパーに寄って買い物をしたりしています。近頃は娘がお話しできるようになり、『公園ですべり台シューした』と保育園のできごとを話してくれるんです。会話を通じて娘の世界を知れることが、とても楽しいです」(中野さん)
娘とゆっくり過ごす時間を確保できていることで、イヤイヤ期とも余裕をもって向き合えているという。
「『イヤイヤ期が大変だから保育園に任せる』選択肢もありましたが、私はあえて一緒にいることを選びました。娘の機嫌が悪そうだと感じたら、スーパーでの買い物を諦めて公園に遊びに行くことも。私に対するイヤイヤがあまりにもひどいときは、娘が落ち着くまで一旦夫に任せることもあります。イヤイヤ期は当分続きそうですが、納得いくまで娘と向き合えていることは、自分にとっていい経験だと思います」
子どもの成長や状況に応じて、親の関わり方も変化する。早い時間に迎えに行き、母子で過ごす時間をたっぷりとった方がいいと思っていた中野さんは、あるとき娘から「みんなと一緒におやつを食べたかった」と言われて、ハッとしたという。
「娘が上手に話せるようになり、初めて気持ちを聞くことができました。そこで、迎えの時間を1時間後の16時に変更したところ、私は業務を進めることができ、娘は友達とおやつを食べられるように。互いにとってWin-Winでした。
私はできることなら娘とずっと一緒にいたいし、最初は保育園に預けて働くことの迷いもありました。でも、私が働き続けることで夫や子どもに何かあっても支えることができるし、娘も保育園で友達ができて楽しそうにしています。『総合的に見た娘の幸せ』をつねに考えながら、状況に応じた選択肢を持てる自分でいることを大切にしたいですね」
フリーランスのままでは叶えられなかった成長を実感
自由度の高いフリーランスから正社員となった今も、娘を最優先に考えて働けていることには変わりない。しかし、ときにはチームを優先せざるを得ないときもある。突発的な仕事や繁忙期は、帰宅後に夫と育児をバトンタッチして仕事をするなど、娘との時間を削ることへの葛藤もゼロではない。
一方、正社員だから実現できていることもある。
「フリーランスの頃は、今の自分のスキルに見合った仕事をしていました。新たな領域に挑戦するには娘と過ごす時間を削って勉強にあてる必要があり、私にとって現実的ではなかったからです。スキルアップが見込めず、『この先も、ディレクションやライティングだけしていくのか……』と悩むこともありました。
〈Morning Labo〉は、組織として柔軟に変化していて、私も含めた社員一人ひとりが新しいことにチャレンジできる環境です。入社してから仕事の幅が広がり、フリーランスの頃にはできなかった成長を実感しています」
多様な価値観を尊重しながら働けるかどうかを大事にしたい
娘を第一に考えながら、キャリアアップもしたい。仕事やプライベートにおける軸がはっきりしている中野さんにとって、働きやすい会社とはどういうものなのだろう。
「キャリアで成し遂げたいことややりたいことを受け入れてくれる土壌や文化があるかどうかです。大切にしたいものや働きやすさの基準は、人によって異なります。その中で、社員が互いに尊重しながら働ける文化を醸成することが大切。〈Morning Labo〉は、そこに本気で向き合っていると感じます」
会社では、働きやすい環境を実現するためのミーティングを毎週行っているという。「オンライン環境にいるときも、何かあったら気軽に話しかけられる文化を作ろう」という目的で、新たなコミュニケーションツールを導入した。
「『MetaLife(メタライフ)』というバーチャルオフィスのツールです。台湾にいるメンバーを含めた全員がアバターとなって同じ空間にいるので、リモートワークをしていてもデスクに行って話しかけたり、オンラインランチを一緒に楽しんだりできるんですよ。フリーランス時代に使ったことがあり、コミュニケーションツールとして良かったので提案しました」
〈Morning Labo〉に入社して、もうすぐ1年。仕事・プライベートともに、新たな局面を迎える時期でもある。
「少しずつ仕事に慣れてきたので、今後は得意分野であるエディトリアルから、一つのクライアントとじっくり向き合う仕事へと変わる予定です。今はその準備段階で、業務の引き継ぎや、仕組みで効率化できる方法を模索しています。
プライベートでは、コロナ禍で実現できなかった結婚式とハワイ旅行を控えています。家族の健康を維持しながら、このイベントを無事に乗りきるが今の目標です」