LIFEHACK JOURNAL 年収240万円を10年で20倍超にした元会社員が語る、転職のヒント。 WORK&MONEY 2023.10.06

働く女性に役立つ情報を月替わりで紹介。今月は働き方を通じてお金について考えます。成功する転職、失敗する転職などこれからの働き方を見つめ直すヒントがいっぱいです。

INTERVIEW 暮らしを健やかにする知識とヒント[ お金 × 働き方編 ]

30年以上、平均賃金が横ばいで推移している日本。物価高や円安といった逆風も吹く今だからこそ、年収を上げる働き方について、考えてみるいい機会かもしれません。

20歳・地方ホームセンター/240万円▶22歳・人材企業/330万円▶23歳・リクルート/540万円▶27歳・ITベンチャー+副業/900万円…。motoさんが実際にたどってきたキャリアを、人生ゲームのマス目のようにデザインした著書『転職と副業のかけ算 生涯年収を最大化する生き方』(扶桑社)。働き方に悩む多くの人が手に取り、「読者が選ぶビジネス書グランプリ 2020」にもノミネートされ、売り上げは10万部を超えた。

「企業の看板は“錯覚資産”。これからの“安定”の定義は、“企業への依存”ではなく、“個人で稼ぐ力”にシフトする。当時もそう書きましたが、4年経った今は、ますますその傾向が強くなっていると感じます」

資金力やブランド力によって、“すぐ潰れない企業”は存在するが、それがイコール“安定”とは限らない。大企業が希望退職者を大量に募ったり、不採算部門を他国企業に売るといったネガティブなニュースを耳にする機会が増えた今、“大企業に所属していること”と“大企業で自分がサバイブできること”は全く別の話であることは、もう誰もが気づき始めている。でも、個人で稼ぐ力を身につけようにも、まず何から始めたらいいのか。不安を抱えたまま、モヤモヤと“現状維持”でいる人も多いだろう。だが、motoさんは“動く”ことを推奨する。

「会社員としての経験や知見を武器に転職で年収を上げ、さらに副業に活かす。これは誰にも使える術。特に転職はすぐにでも年収アップに繋げられる可能性があるのに、動かない人が多いのはもったいない」

“動く”、その第一歩は転職エージェントへの登録。

日本ではまだまだ転職というと、“裏切り行為”のように捉えられる風潮があるが、それも変化しつつある。
「ようやくドラマ(今夏放送された成田凌主演『転職の魔王様』)のテーマに取り上げられるなど、以前よりオープンになってきている兆しはありますよね。新卒入社後、すぐ転職エージェントに登録する(P.112DATA参照)のだって、僕からしたらごく当然のこと。転職は自分の市場価値を上げる“手段”。どんな船でもいつ沈むかわからないこの時代、いつでも乗り換えられる状態でいることは大事なことですから」

転職市場は常に流動的かつトレンドもあるため、それを敏感にキャッチしておくためにも“お抱え転職エージェント”を持つことは必須だと続ける。

「スペシャリストに限らず、事務職や営業職だったとしても、持つべきです。職種が同じでも、業界を変えれば年収が変わることはあるし、事務職や営業職にどんなプラスアルファのスキルが求められているのかだって、転職エージェントから聞くことができる。また、彼らと面談することで、自分の“値段”も把握することができます。職務経歴書を定期的に更新しながら、売り時を見極め、自分を高値で売り込んでもらうには、転職のエキスパートの存在なくしては難しいですから」

“青い鳥症候群”という転職の落とし穴。

では、実際に転職を思い立った際、重要視すべき条件は?
「コロナ禍の前は、転職イコール“いい会社に入る”“キャリアアップする”“年収を上げる”といった野心的な動機が多く、求める条件もわかりやすかった。でもコロナ禍を経て、リモートワークが普及。自宅で過ごす時間が増えたことで、“自分にとって何が幸せなのか”と、働く意味や目的を見つめ直した人が多いようです。最近は、“ワークライフバランス重視型”で転職を考える人が増え、年収や会社名を気にする人は、以前より減ったかもしれません」

とはいえ、“自分にとって何が幸せなのか”をクリアに答えられる人は、そう多くない。
「“年収を上げたいわけではないけど、下げたくはない”“ハードワークは嫌だけど、成長はしたい”みたいな人がジワジワ増えているというか(苦笑)。“青い鳥症候群”になってしまうケースはありますね」

“青い鳥症候群”とは、現状の実力や取り巻く環境、待遇などを受け入れられず、“自分にはもっと能力を発揮できる場所があるはず!”と、理想の職場を求めて転職を繰り返す人のことを揶揄した表現だ。
「そうならないためには、年収が上がるならハードワークは許容する、残業なしで週休2日が徹底されるなら年収が下がるのはOKなど、妥協できるポイントをクリアにしておくことは、最低限必要なこと。よく、“いい会社とは?”“いい人間関係はどう見極めますか?”という相談を受けるんですが、その答えは正直すごく難しい。結局は、“自分が最終的にどうなりたいか”であって、“いい会社”や“いい人間関係”は、そのために本当に必要ですか? っていう話だと思うんです。僕が転職で失敗しなかったのは、“年収を上げて、金持ちになりたい”というゴールが明確だったからにほかなりません」

次の次の会社までを見据えた長期的視点を。

転職をゴールに設定するのではなく、“最終的になりたい自分”がゴールであること。ここを取り違えてはいけない。
「例えば今、転職活動中でA社を受けようと考えているとします。だとしたら、その段階でA社を辞めた人は、次はどこに転職しているのかもリサーチする。その先にGoogleやApp
leがあれば、自分にもチャンスがあるかもしれない。もちろん能力次第ですけど、スキルとセットでA社でのキャリアが活きる次の場所はどこなのか。次の次の会社まで見据える視点を持っておくことは大事かな、と」

一方で、“同じ給料なら無駄に働かない方がいい”という人もいる。
「でもそれって、短期的には時給は高くなるけれど、長期的な視点で見ると得られる経験が小さいわけで。それでは市場価値は上がっていきませんから、いつか頭打ちになる。複数の会社で経験を積み、自分の市場価値を上げていくことは、これからの働き方における一つの自己防衛策だと思います」

CHECK LIST

motoさん流成功する転職。


転職エージェントに登録し、職務経歴書のアップデートを怠らない。
1社に依存するのではなく、複数のエージェントに登録していることが重要。その上で、自分が転職先で役立つ人間であることが明確にわかる職務経歴書を“戦略的”に作成する。


転職をゴールと捉えず、その先のロードマップを描いている。
どんな会社員であっても、ある程度の「キャリア地図」は持っておくべき。ただ漫然と会社にいるのではなく、情報収集をしながら“自分が次に行けそうな会社のリスト”の更新を。


仕事が最高に乗っている時が辞め時とわかっている。
大切なのは“在籍期間”ではなく、“期間における中身”。今の職場で成果を出せているタイミングであれば、1年しかいない職場からの転職でも、高値で売り込める。


自分が現在所属する部署の売り上げや利益を把握している。
利益が出ていないのに、給料が上がることはない。「大きい会社ゆえ、自分の貢献度が測れない」というのは言い訳。所属部署の売り上げや予算達成率などは必ず把握しておく。


転職条件の優先順位を明確につけられる。
“結局、何を叶えるための転職なんだっけ?”と目標がぼやけたままだと、“こんなはずではなかった”に陥りがち。あれもこれも理想を叶えてくれる会社はない、と心得よ。


一生ひとつの会社に留まる気は最初からない。
たとえ今の環境に満足していたとしても、そこにいることで自分の市場価値は上がるのか。冷静かつ長期的な視点で常に俯瞰して考えること。居心地がいい、は逆に危ない。

VOTE ハナコラボ パートナーに聞いた転職Q&A。

みんなの転職事情、実際のところが聞きたくて、ハナコラボ パートナーにアンケートでヒアリング。浮かび上がってきたのは、やりたいことに前向きな姿勢と良好な転職結果でした。

質問 これまでの自身のキャリアで、転職経験は何回ですか?

moto 戸塚俊介

多いと見るか、少ないと見るか。受け止め方は人によるが、回答者の平均年齢が30代前半ということを踏まえれば、5年に1回のペースで転職、がリアルなよう。

質問 転職を考えた&転職した理由はなんですか?

moto 戸塚俊介

ほぼ上記3つの理由に集約。ほかには「市場価値を高めたい」「スキルや経験値を上げたい」といった将来を見据えた理由もちらほら。

質問 転職してよかったですか?

moto 戸塚俊介

ポジティブな意見が7割超。「やりたいことが叶った」が大きな理由だが、「病気をしなくなった」といった切実な回答も。

質問 転職後、収入はどうなりましたか?

moto 戸塚俊介

いくら上がった? という質問には、年収で約100万~300万円(!)と、幅広い回答あり。“転職は収入UPの近道”かも。

KEYWORDS 働き方にまつわるワード。

お金とも密接に関わることから、最近しきりに叫ばれる2つのキーワード。改めておさらいし、正確に意味を把握しておきたい。

KEYWORD

【副業】
主な収入を得ている本業以外の仕事のこと。就業規則で禁止されていなければ、会社員でも副業に就き、収入を得られる。ただし、年間の副業収入が20万円を超える場合は要確定申告。


【タイパ】
「タイムパフォーマンス」の略語。時間を効率的に使うことを指し、Z世代の早送り視聴や共働き世帯に人気の時短家電など、タイパを意識したことから生まれた行動や商品も多い。

DATA 転職エージェント

将来に不安を抱えながらも、働き方への柔軟性を併せ持つ。若い世代のリアルな心模様が反映された数字とは。

「doda」に登録する新社会人が激増中!

転職サービス「doda」が過去13年間の会員登録者数のうち、4月に登録した新社会人の数を分析したところ、今年は調査を開始した20
11年以降で最多に。2011年比では約30倍まで増加。意識が向上し、自らのキャリアを主体的に考えている新社会人の姿が浮かびます。

CASE STUDY 転職して変わった使えるお金、時間、働き方。

“年収アップ”にこだわって転職活動をして、約1カ月。希望年収800万円で複数社からオファーを受け、目標を叶えたゆみにゃんさん。「転職こそ年収アップの近道」と語る彼女の実例に学ぶ。

Before(30歳)

新卒で入社した大手ゲーム会社時代。


年収(手取り)  650万円
残業時間  80時間/月
住まい・家賃  ワンルーム 10万5000円
交際費  3万円/月
貯金  約200万円/年間


1.入社当時は残業時間月170時間超えも…。
20代前半の年収は約400万円。その後、“働き方改革”により残業時間は約半分になり、残業代ゼロに。ただ、実力主義で結果を出していたこともあり、同期と比べれば順調に年収アップ。


2.部下と飲みに行く時は多めに出す、が通例。
会社が六本木にあり、仕事帰りの飲み会も多く、1回の単価が高かった。同僚とはワリカンだが、部下と飲む時は多めに出す、が暗黙の了解。28歳からは節約を始め、貯金も増えていった。

After(32歳)

転職で入社した大手ITベンチャー勤務時代。


年収(手取り)  890万円
残業時間  0時間/月
住まい・家賃  デザイナーズマンション 12万5000円
交際費  1万円/月
貯金  約400万円/年間


3.キラキラOLに憧れてお引っ越し。
賞与なしと聞いていたが、インセンティブなどで年収は初年度から890万円に。早速、調子に乗って引っ越すも、固定費を高く設定することのもったいなさに気づき、約1年で再引っ越し。


4.充実した福利厚生でモチベーションUP!
同僚との飲み会は会社から補助が出るため、持ち出しはゼロ! 会社主催のバーベキューやパーティ、旅行も多く、充実した福利厚生に感動。副業もあり、貯金は倍速で増えていった。

10代の頃から憧れていた有名企業で、やりたかった仕事に就く。誰もが羨む環境を新卒時に手に入れたゆみにゃんさん。だが、当時を振り返り、こう語る。
「好きな仕事ができている自分は幸せなんだ、と思い込んでいたけど、それは“やりがい搾取”だったかもしれません」

激務によって生理は止まり、肌荒れもひどくなる一方。唯一のストレス発散は散財、という悪循環に陥ったことも。心機一転、転職を決めたのは32歳の時。
「年収800万円は妥協しない! と、固く決めていましたが、拍子抜けするほど即答で複数社からOKをもらえました」

業種を変えただけで、仕事内容はむしろ簡単になり、残業ゼロに。自由になった時間は副業に充てられるようになった。
「こんな天国があったなんて! というのが正直な感想(笑)」

4000万円貯まった時点で退職。現在は世界中を旅しながら、セミリタイア生活を満喫中だ。人生をも変えてしまうきっかけは、意外にもすぐ足元に転がっているのかもしれない。

illustration_masco eri text_Yoshie Chokki

Videos

Pick Up