ハナコラボSDGsレポート 幸せや平和について私たちができること。ウェルビーイングの前野隆司先生に聞きました

SUSTAINABLE 2023.07.06

ハナコラボ パートナーの中から、SDGsについて知りたい、学びたいと意欲をもった4人が「ハナコラボSDGsレポーターズ」を発足!毎週さまざまなコンテンツをレポートします。今回は、ナチュラルビューティーハンターとして活躍するシナダユイさんが、ウェルビーイング研究の第一人者・前野隆司先生に話を伺いました。

※ウェルビーイング(Well-being)…身体・精神・社会的に良好で満たされた状態であること。 

「SDGs=幸せ、そのもの」

前野隆司(まえの・たかし)/慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授、ウェルビーイングリサーチセンター長。研究領域は、ヒューマンロボットインタラクション、認知心理学・脳科学、心の哲学・倫理学から、地域活性化、イノベーション教育学、創造学、幸福学まで。主宰するヒューマンラボ(ヒューマンシステムデザイン研究室)では、「人間にかかわる研究なら何でもする」というスタンスで、様々な研究・教育活動を行っている。
前野隆司(まえの・たかし)/慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授、ウェルビーイングリサーチセンター長。研究領域は、ヒューマンロボットインタラクション、認知心理学・脳科学、心の哲学・倫理学から、地域活性化、イノベーション教育学、創造学、幸福学まで。主宰するヒューマンラボ(ヒューマンシステムデザイン研究室)では、「人間にかかわる研究なら何でもする」というスタンスで、様々な研究・教育活動を行っている。

ーー巷でよく見かける「ウェルビーイング」と「幸福学」に違いはありますか?先生はどちらについても書籍を出されていますよね。

「同じですね。研究を始めた頃は幸福学と言ってましたが、少し宗教っぽく聞こえるので(笑)、近頃はよく使われているウェルビーイングが専門だと言っています。本には幸せのリテラシー、すなわちみなさんが知っておくといいことをまとめました」

ーー幸せのコツが「やってみよう・ありがとう・なんとかなる・あなたらしく」 と、とてもわかりやすく要約してあり、私自身もこのレポートに挑むにあたって重宝しています!幸せの4つの因子を導き出すまでに時間はかかりましたか?

「学生と一緒に、世界中でどのような幸せの研究が行われているのか2年くらいで集めて勉強し、それを質問にしてアンケートをとり、機械にかけて数値解析で分析したものなので、割とすぐ出たと思います。4つの因子は幸せな人が満たしている条件で、理解してコツを掴むとちゃんと幸せになりますよ」

ーー幸せで心を満たすということは、SDGsにも関係していますよね。

「SDGsの目標3は『グッドヘルス・ウェルビーイング(すべての人に健康と福祉を)』ですし、働きがいの部分でも関係していますが、17の目標自体が生きとし生けるものの幸せを願ってのことなので全てに関係する上位概念だと思っています。SDGsをまとめると“幸せ”、そのものです」

自分だけではなく、周りのことも考えて生活すると幸せに

幸せの4つの因子(コツ)について、より詳しく知りたい方は『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社)がおすすめ。フォーカシング・イリュージョン(人は所得などの特定の価値を得ることが必ずしも幸福に直結しないにも関わらず、それらを過大評価してしまう傾向がある)や、地位財・非地位財の幸福の持続性などの項目がおもしろかったです。
幸せの4つの因子(コツ)について、より詳しく知りたい方は『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社)がおすすめ。フォーカシング・イリュージョン(人は所得などの特定の価値を得ることが必ずしも幸福に直結しないにも関わらず、それらを過大評価してしまう傾向がある)や、地位財・非地位財の幸福の持続性などの項目がおもしろかったです。

ーーSDGsに取り組んでいても戦争はなくならなかったり、むずかしい世の中ですね。

「戦争というのは自分だけの幸せを考えているから起きること。ロシアが大きくなるのはロシアの幸せ。要するに、他人の幸せのことを考えていない。それをなくすべきですよね」

ーーなるほど。自分だけのことだけでなく、周りのことも考えて生活する。私たちくらいの年代の女性に置き換えると1番身近にできることってそういうことですよね?

「いきなり『戦争反対!』って運動しなくても、周りの人、となりの人のことを思いやること。それが世界に広がれば世界平和になります。自分ができることでいいんです」

ーー思いやりですね。

「嫌な上司とかいるかもしれませんが、『嫌い!』と言ってしまうと相手もお前は嫌いとなりますから、争いになる。規模は違っても戦争と一緒です。わかり合うこと、そこから始めればいい。女性の方が男性よりも共感力が高いことがわかっているので、まさに平和で幸せな社会を作るのにはその共感力。みんなと仲良くしていこうというあり方が大事なんです」

ーーそうはいっても、仲良くしていそうに見えて実はちょっと嫉妬心を持っていたり、SNSでもそういう風に感じたりしたときに自分の嫉妬心と向き合うにはどうすればいいですか?

「“あなたらしく”いることです。嫉妬心っていうのは自分と人を比べてうらやましいと思ってしまう。それはやめた方がよくて、人は人、自分は自分。そう思えるようになるには自信を持つといいです」

ーー自信がない人はどうすればいいですか(笑)?

「一つはリラックスすること。とりあえず妬ましく思うようなことがあれば、おいしいお菓子を食べてもいいですし、リラクゼーションでもいい。まずはリラックスして、そのモヤモヤした気持ちからはなれること。はなれて頑張る気になったら何かにチャレンジをする。おすすめは自分を磨くこと。Hanakoの記事にもたくさんあると思いますが、リラックスと自分を磨くことです」

ーーかなり取り入れやすいですね。

「チャレンジするとスキルアップして自信がつく。自信がつくと人のことは気にならなくなります。それを少しずつですね。30代くらいだとまだ若いから、自分は何ですごいのかまだ見つかっていないかもしれないので、60代をイメージして、あと30年くらい経ったときに自分は何で頑張っている人になりたいか考える。焦らなくていいんです。何万日もあればいろんなことができるじゃないですか。そこで人と比べてうらやましいとか思っていたら、時間がもったいないです」

「デジタルウェルビーイング」について

シナダがマーカーや書き込みをした前野先生の書籍を診断していただきました。「幸福度は順調ですね。点数の低いところを今の調子で頑張っていけば上がってくると思います。バランスが大事です」(前野先生)。
シナダがマーカーや書き込みをした前野先生の書籍を診断していただきました。「幸福度は順調ですね。点数の低いところを今の調子で頑張っていけば上がってくると思います。バランスが大事です」(前野先生)。

ーーもう一つ、デジタルウェルビーイング(デジタル機器に翻弄されることなく、デジタル利用のメリットを享受すること)について、これからの関わり方についてアドバイスがあれば教えてください。

「どんなテクノロジーも使いようで幸せにも不幸せにもなると思います。うまく使い分けるには、それが本当に長期的に自分の幸せに資するものかどうか、という視点を持つこと、“幸せファースト”です。今は勉強しようか携帯ゲームでサボろうか迷ったらサボる方が楽ですけど、長期的には勉強した方が幸せになるわけじゃないですか。真面目で当たり前の答えですけど(笑)」

ーー当たり前だけど、できていないですよね…。過去の自分に教えてあげたいです。

「健康や環境問題と似ていて、目の前の短絡的な幸せを求めて食べ過ぎたり、プラスチックを選んでしまうより、配慮して自分が成長することや利他的である方が幸せ。ふと立ち止まって全体を見ることです。歳を重ねれば全体を見たり、俯瞰して見ることは自然にできていくことなので、30代より40代、40代より50、60代と幸福度は上昇していきます。楽しみにしていてください」

ーー勇気付けられます。今からでも「なんとかなる」。ありがとうございました!

photo:Miyu Yasuda

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