ハナコラボSDGsレポート NYでファッションを学んだ2人が立ち上げた、生産過程で余ってしまった残糸・残布のアップサイクルプロジェクト〈RYE TENDER〉

SUSTAINABLE 2021.04.27

ハナコラボ パートナーの中から、SDGsについて知りたい、学びたいと意欲をもった4人が「ハナコラボSDGsレポーターズ」を発足!毎週さまざまなコンテンツをレポートします。第25回は、エディター、ライターとして活躍する大場桃果さんが、残糸・残布をアップサイクルするプロジェクト〈RYE TENDER(ライテンダー)〉を取材しました。

良質なものを手頃な価格で提供し、その理由から生産背景を知ってもらいたい。

ファウンダーの澤木雄太郎さん(左)と、ディレクターの小池勇太さん(右)。
ファウンダーの澤木雄太郎さん(左)と、ディレクターの小池勇太さん(右)。

ーー〈RYE TENDER〉は2020年の秋にデビューしましたが、お二人はどんな経緯で一緒にプロジェクトを立ち上げることになったのでしょうか。

澤木さん:僕は元々、商社の繊維事業部に勤めていて、その海外研修という形でニューヨークへ行ったんです。向こうの学校へ通いながら、現地のブランドでインターンをすることになったのですが、そこで先に働いていたのが小池くんです。一緒に働く中で次第に仲良くなっていきましたね。

小池さん:僕がそろそろ日本へ帰国するって時に雄太郎さんに連絡したら、日本で会社を辞めて独立したということを知って。そこからまた色々と仕事の話をするようになりました。

澤木さん:前職ではアパレルブランドやセレクトショップなどの企業に対して商品を売っていたのですが、「自分で作ったものを自分で売りたい」って気持ちが常にあったんです。OEMに携わる中で素材がたくさん余ってしまっている業界の裏側をずっと見てきたので、そこをどうにか変えていきたいなと。「残糸」と聞くと粗悪な素材をイメージするかもしれませんが、実はとてもきれいに管理された状態で放置されていたりするんですよ。でも、それらの糸は安く売られるか、最終的には廃棄されるしか道がなくて。これを活用してものを作ったら、廃棄量も減らせるし、コストを抑えて手頃な価格でお客さんに届けることができるし、たくさんメリットがあるなと思ったんです。そこに小池くんが協力してくれたら、より面白いものができるだろうなと。

ーー日本では、ここ数年でますます「サステナブル」という言葉が注目されていますが、アメリカのファッション業界ではどうでしたか?

小池さん:僕らがニューヨークにいたのは5〜6年前ですが、SDGsに繋がるような取り組みはアメリカの方がより活発だったように感じます。

澤木さん:ファッションだけでなく食などに関しても、サステナブルな選択肢が常に生活の中にあったんですよね。だから、残糸に着目するのはとても自然な流れでした。

ーー残布・残糸の問題は、どこの国でも同様なのでしょうか。

澤木さん:それはどこへ行ってもいっぱいあると思います。

小池さん:僕らはファッションの世界しかわからないですけど、他の業界でも似た課題はあるんでしょうね。フードロスとかも問題視されていますし。

SDGs 大場さん

ーー残ってしまった素材を使うブランドにしようというのは、二人の中でわりと最初の段階から共通して考えていたんですか?

澤木さん:実は、初めはそれほど明確に考えていなかったんです。余っているものを活用したいという気持ちはあったのですが、それよりも単純に質の良いものを安く作りたかったというか。でも、進めていく中で、背景にあるストーリーを十分に伝える必要があると思ったんです。それから二人で〈RYE TENDER〉のコンセプトをブラッシュアップしていきました。

小池さん:今の時代では、新しいものを世の中に提案する時に、環境や社会に配慮したものであることが自ずと求められると思うんです。だからそこにはしっかり応えたかったですね。

澤木さん:でも、サステナブルであることは洋服を購入する時の第一条件にはならないと思っていて。まずは純粋にアイテムを気に入ってもらって、その上で背景を知って購入してもらう方が自然じゃないですか。服を手に取って「かわいいし、値段もちょうどいいな」と感じてくれた人に「なるほど、残糸を使ってるから安く提供できるんだ」と理解してもらい、そこからアパレルの生産背景について考えるきっかけを与えられたらなと思っています。

ーーたしかにそうですね。たとえ環境に配慮した商品でも、モノとしての魅力がないと購入に繋がらないかもしれません。

澤木さん:あと、これは日本人的な気質なのかもしれないですけど、すべてを完璧にしないとサステナブルだと言えないっていう風潮もありますよね。100%サステナブルなビジネスをするのって本当に難しくて、絶対にどこかに齟齬が生まれてしまうんですよ。だから、僕らは残糸だけで自分たちのイメージするコレクションを実現できなかったら、普通に他の糸も買い足しているんです。そうすることで商品全体の調和が取れてバランスよく売れていけば、結果的にハッピーなのかなと。

小池さん:制約をかけた方がコンセプトは強くなるのかもしれないですけど、一方で、やれることに無理が出てきてしまうんですよね。100%残糸だけでやろうとしたら、難しすぎてきっと長く続かないだろうなと思って。

澤木さん:やっぱりビジネスは商品が売れないと続かないので。自分たちの作ったものが健全に売れていく状態を保ちたいなと思ってます。

トレンドや時代に左右されない普遍的なデザインを。

「BEACH POLO」10,000円
「BEACH POLO」10,000円

ーー素材はどこから集めてきているんですか?

澤木さん:最初のシーズンは、もう10年以上付き合いのある中国の工場から仕入れました。上質なウールカシミヤが大量に余っていたので、それを使っています。その後、ありがたいことに別の工場や糸問屋さんからも声をかけてもらって、今季はいろんなところの素材を活用しています。

ーー糸問屋では、一切使われていない状態のまま余っているってことですか?

澤木さん:そうです。色の入れ替えで廃盤になってしまうと販売できないという事情もあるみたいですね。あとは、次の秋冬コレクションではウールポリエステルを使う予定なんですが、それってつまりペットボトルを再利用した糸なんですよ。おそらくどこかの大手企業がリサイクルの一環で作ったのでしょうけど、結局それが余っちゃってるっていう。そういうのを見ていると、やっぱり余剰をゼロにするのって不可能なんだなと感じます。

ーーそれはなんだか皮肉的というか、難しい問題ですね…。デザインの面で、すべてのシーズンに共通するコンセプトはありますか?

小池さん:基本的なプロセスとしては、こういうものを作りたいから合う糸を探すのではなく、出てきた糸に対してどういう形が合うのかを考えていて。とにかく糸次第なんですよね。あとは、トレンドや時代に左右されない、ベーシックなデザインを追求しています。

「WORTH KNIT TEE」7,000円
「WORTH KNIT TEE」7,000円

ーー縫い方やボタンなど、ディテールにもかなりこだわっているように感じます。

小池さん:残糸を使うことで価格を抑えられているので、他の部分ではコストを下げるようなことをしたくないんです。何かの工程を省くようなことはせずに、細部まで丁寧に作り上げています。

澤木さん:デザインは二人で考えているのですが、僕はどちらかというと技術的な部分を理解していて、逆に小池くんにはアイデアがたくさんあって。僕からしてみると、小池くんが提案するデザインは斬新で、ニットの作り方をあまり知らないからこそできる発想なんですよ。僕はずっとニットを専門にしてきたから「そんなのできないよ」って思っちゃったりするんですけど。

小池さん:そんなふうに思ってたの(笑)。

澤木さん:そうそう(笑)。でも、そういうアイデアのおかげで、ベーシックだけどどこか人の心に刺さるようなデザインになっていると思います。

ーーカラー展開はどのように決めていますか? 残っていた糸の色をそのまま使うことが多いのでしょうか。

小池さん:原糸のまま残っている場合は染めることもありますし、同じ素材で何色か残っていたらそのまま活用しています。

「MOORE SWEATER」12,000円
「MOORE SWEATER」12,000円

澤木さん:「MOORE SWEATER」は2種類の色を使っていて、4色の中でも微妙に肌触りが違うんです。ここに関しては、完璧に同じ素材にこだわるよりも、全体としてのバランスを整えることを優先したかったので。

ーーどれも肌触りがとてもいいですよね。なのに値段がすごくお手頃!

澤木さん:お客さんが商品を見た時に「割安だな」と感じてもらえるかどうかを意識しています。特にTシャツとかは価格設定に悩みましたね。とてもいい素材を使っていて、ゲージが細かいため時間とお金がかかっているんですけど、Tシャツにしては高いって思われてしまうかも…と。

ーー手に取って見てみるとクオリティーの高さが伝わるので、個人的にはすごく優しい価格設定だなと感じました。

澤木さん:そう思ってもらえるとうれしいです。あとは、高すぎると説得力がないんですよね。サステナブルなものを作っていても、値段がやたらと高いと「利益をいっぱい抜いてるんでしょ?」って思われてしまうかもしれないし。もちろんビジネスとして続けるためには利益を追求することも必要なんですけど、残糸を使っているから安く提供できるってことを発信したいので、そこはブレずにいたいです。

アパレル業界の“当たり前”に反する方法にも果敢にトライ。

SDGs 大場さん

ーー今はオンラインストアとポップアップでの販売が主ですが、それは今後も変えない予定でしょうか。

小池さん:どこかへ卸しをすることも考えたのですが、買って売って買って売って…という流れの中で自分たちの意思が薄まってしまうのではという不安もあって。今のところD2C(中間流通業者を通さない顧客への直接販売)をメインにしています。ただ、僕らのコンセプトを理解して共感してくれるような小売店があれば、何らかの形で協力してもらうことは考えています。なるべく齟齬が出ない形でお客さんの手に届けばいいなって。

澤木さん:こういう商品がセールで売られていたら違和感があると思うので、余ったらこちらへ返してもらうような、委託での販売は少しだけ行っています。今はD2Cがトレンドみたいになってしますが、やはり店舗で人を通して売り買いする魅力はあると思うので、今後いろんなお店との関係性を築いていけたらと思っています。

小池さん:意思の伝達と物の伝達がそばにあるのが理想的ですね。

SDGs 大場さん

ーー購入したお客さんからはどんな声が届いていますか?

小池さん:「商品の質がいい」と褒めてもらえることが多いです。あとは、1回購入した方が追加で何着か買ってくださることもけっこうあって。オンラインなので試着ができないんですけど、1着目を着た上で納得してリピートしてくれたんだなと思うとうれしいです。

澤木さん:D2Cで実物を見せられないからこそ、商品が届いた時に期待値を上回る必要があると思うんですよね。僕自身も、通販で買った商品にガッカリした経験があるので。ブランドのファンを増やすためにも、届いたものを見てテンションが上がるような商品を目指しています。

ーー今日、私も実際に商品を着させてもらって「写真で見るより素敵!」と思いました。

小池さん:ありがとうございます。みなさんにそう思ってもらえるといいなって思います。

ーー最後に、今後の課題や目標を教えてください。

小池さん:まずは、小売店とのパートナーシップですね。商品を見た上で購入してもらえるような場所づくりを考えています。

澤木さん:ありがたいことに最初のシーズンは完売したのですが、これからブランドの規模が大きくなる中で、絶対に商品が余ってしまうと思うんです。売れ残りを多く抱えるのはブランドのコンセプトに反しますし、その余剰をどうやって健全に解消していくかが難しくて…。そこが最大の課題ですね。

ーーなるほど。

澤木さん:ファッションは鮮度が求められがちですが、たとえ旬じゃなくなってしまったとしても、服自体はまだまだ着られる状態じゃないですか。だから、トレンドに左右されて価値が下がることのないような仕組みを作れたらいいなと。

小池さん:余ってしまった製品も最後まで大切にしたいですね。既存のアパレルビジネスに対して「これって本当に正しいの?」「別のやり方ができるんじゃないの?」って果敢に問いかけていくことで、業界全体が少しずつ健全になっていったらうれしいです。

〈RYE TENDER〉

https://ryetender.com
https://www.instagram.com/rye_tender/

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