「伊太利亜 ミラノ村からBuongiorno!」第14回 トレンドは「レトロサウンド」!思わず口ずさみたくなるイタリアン・ポップス3選 LEARN 2021.11.13

元ミラネーゼによる『伊太利亜通信』。目下の楽しみは、シンプル&素材勝負なイタリアの食を楽しむこと。そして、大好きなイタリアン・ポップスに浸ること。まだまだニッチな分野ですが、計り知れない魅力が詰まっているんです。今年も、忘れられない“トルメントーネ”(耳にタコができるほど、あちこちで繰り返し耳にする夏の大ヒットソング)が誕生しました!

1.「MILLE」/Fedez, Achille Lauro, Orietta Berti

ラジオで最もオンエアされ、間違いなくこの夏最大のヒットとなった一曲。軽いノリと耳に残るメロディーで老若男女問わず受けがよく、6月中旬のリリースからわずか2か月半でプラチナレコード×4枚を獲得。と思いきや、10月に入ると5枚に記録更新!未だ勢いは衰えません。“60年代へのオマージュ”というだけあって、ツイストステップやプールサイドでの日光浴のシーン、美容院でのタブロイド紙やカラフルな水泳帽など、ミュージックビデオにはレトロでキャッチ―な要素が盛り沢山。2分59秒の映像の中で、過去1年半の制約された生活によって求められていた軽さ、ゆるさ、明るさが存分に表現されました。物語は徐々にクライマックスへと移行し、フィナーレはカオスでエネルギーあふれる60年代の夏の夜を彷彿とさせる光景。

伊太利亜 14回

メンバーは、往年の名演歌歌手のような貫禄があるオリエッタ・ベルティ(78歳)、毎度型破りなスタイルで楽しませてくれるラッパーのアキッレ・ラウロ、そして起業家キアーラ・フェッラーニの夫としても知られるラッパーのフェデツ。アーティスト同士のコラボレーション(特にデュエット)が多いイタリアン・ポップスの中でも、50年以上のキャリアを経たベテランと30代のラッパー2人から成る“異色のトリオ”として多くの反響を呼び、3人は完全に2021年の夏を象徴する顔に。イタリア人現代アート作家Francesco Vezzoli(フランチェスコ・ヴェッツォーリ)が古き良き“ベル・エポック”時代の絵画をトリオの顔でリメイクしたディスクジャケットも、話題となりました。

2.「Bongo Cha Cha Cha」/Goodboys

イタリア音楽界のレジェンドとして知られるカテリーナ・ヴァレンテ(90歳)の名曲がイギリスのハウスミュージックグループ・Goodboysの手によって息を吹き返し、62年の時を経て驚きの再ヒット…!
原曲「ボンゴ チャ・チャ・チャ」が2019年公開の映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のサウンドトラックに収録され再び注目を集めていたところ、Goodboysの手掛けるリミックス版が今年の夏にTikTokを通して拡散され、トレンドに急浮上。デジタルツールの恩恵を受け、イタリアを含む欧米での2度目の爆発的ヒットへと繋がりました。
1959年のリリース当時には誰も想像しなかった、パンデミック時代における再ヒット。時代を経ても通用するイタリアン・ポップスの目新しさはさておき、誰もが今持っている息抜きをしたい衝動にもタイムリーにヒットしたのでは?東京五輪に出場した、競泳・イタリア代表のフェデリカ・ペッレグリー二が、シャワーを浴びながら曲に合わせて踊る動画をInstagramに投稿したことでも話題を呼びました。

3.「Toy Boy」/Colapesce, Dimartino, Ornella Vanoni

2021年3月のサンレモ音楽祭に出場し、一足早く哀愁漂うレトロなサウンドで一世を風靡したコラペッシェ&ディマルティーノは、シチリア出身のデュオ。この夏にイタリアン・ポップス界で巻き起こったレトロブームの火付け役は、実はこの2人だったのかもしれません。
彼らが今回タッグを組んだのは、テレビ番組『小さな村の物語 イタリア』のあのオープンニング・エンディングテーマで有名なイタリア音楽界の女王、オルネッラ・ヴァノーニ(87歳)。

伊太利亜 14回

夏を代表するヒット曲がこぞってリズミカルでキャッチ―な中、この曲は一風変わったテイストで人気を集めました。必ずしもハイテンポなポップチューンでなくとも“トルメントーネ”として多くの人に受け入れられることを証明したのです。とはいえ、メロディーが軽快かつシンプルであることに変わりはありません。雰囲気のあるボサノバのリズムが私達を癒し、エキゾチックな世界へと誘うかのよう。2人のシンガーソングライターとヴァノー二が交互に交わす優しい歌声は、喧騒から離れた幻の楽園で繰り広げられる男女の会話を想起させます。極めつけは、どこかノスタルジックな色調のミュージックビデオ。古くからの火山や静かな海辺など手付かずの自然が魅力の「エオリエ諸島」を舞台とし“秘境の島々を巡る愛の旅”を描写したこの曲は、初めて聴くのにどこか懐かしい!

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