第27回 写真家・田尾沙織の『Step and a Step』500gで生まれた赤ちゃん 【田尾沙織のStep and a Step・27】大好きジンベエザメと海遊館
写真家・田尾沙織さんに、500gで生まれて、軽度の知的障害とADHDだと言われている息子、奏ちゃんの子育てと日常について綴っていただくこの連載。
2人の日常を、田尾さんによる色鮮やかな写真と共にお届けします。
奏ちゃんが初めてジンベエザメを見たのは、1歳半の時に沖縄の美ら海水族館で。食い入る様に大きな水槽のガラスいっぱいに泳ぐジンベエザメを見つめて、何度も巨大なジンベエザメを指差していました。まだ話せなかった奏ちゃんに「ジンベエザメ大きかったね」と言うと、必ず大きく両手を天に仰ぐ様に広げて「大きかった」というベビーサインをしてくれていました。
そんな出会いから、奏ちゃんの好きな動物ナンバー1はジンベエザメになりました。
1歳半の記憶なのに、話せる様になる前は「ジンベエザメ大きい」のサインをよくしていました。
大好きなトミカでは、海遊館という水族館のトラックがジンベエザメを運んでいるトミカを買い、そのトラックが出てくる「ジンベエザメのはこびかた」という写真絵本、ジンベエザメのフィギュア、図鑑、海の生き物のDVDを見てもジンベエザメに夢中。
ジンベエザメはやさしい生き物。そんなところが好きなんだそう。
先日6歳の誕生日迎えて、就学前に誕生日のお祝いにディズニーランドに一度くらい連れて行ってあげようかと思って奏ちゃんに相談したところ、
「ミッキーよりジンベエザメに会いたい!」と即答。
そして、毎年保育園の先生がお誕生日に作ってくれるカードには、大きくなったらなりたいものが書いてあるのですが、昨年までは奏ちゃんの語彙力と性格の問題で、周り子が言ったことを復唱してしまっていました。
(周りの子「アンパンマンになりたい」と言ったのでつられて同じことを答えてしまっていました)
それが、今年は「水族館の飼育員さんになりたい」と先生に伝えられたのです。
これは、ジンベエザメを見に大阪海遊館に行かないわけにはいかない! そんなこんなで海遊館行きが決定しました。
私は18年くらい前に仕事で大阪に行った帰りに、大阪出身のスタッフに勧められて、ひとりで海遊館に行ってみたことがありました。その時に、水族館の構造、魚の見せ方に感動した記憶があったのですが、18年ぶりの海遊館は少し年季が入ったものの、川から水が海に流れ、海面からだんだんと海底へ下がっていく展示は今も素晴らしかったです。
そして大水槽にたどり着くと、奏ちゃんはジンベエザメのフィギアを握りしめて、ジンベエザメに見せていました。ジンベエザメが近づいてくると、「ぼくのことすきなのかな」と、うれしそうに呟いていました。
そして今回のハイライトは、ジンベエザメバックヤードツアー!
別売チケットを購入して、水族館のバックヤードに入れてもらい、飼育員さんがジンベエザメに餌やりをしているのを水槽の上から見学できるのです。
短時間なのですが、ツアーガイドさんみたいなお姉さんがジンベエザメについて、大きさや歯があるのかないのかとか、どこから連れてきたのかとか、説明をしてくれました。この日は特別に、ウエットスーツを着た飼育員さんが水の中に入って、大きな口を開けて泳ぐジンベエザメの口元に餌を運んであげていました。奏ちゃんは何度も何度も「すごいね!」と大きなジンベエザメに感動し、
最後にお姉さんが「今日はどうでしたか?」と感想を聞いている中、
いつも恥ずかしがる奏ちゃんが、「はい!」と手を上げて、気持ちが焦っていつもより吃音がひどく出ながら、「ジンベエザメがごはんたべてた!」とうれしすぎて感想ではなく状況を一生懸命説明して、このツアーは終わりました。
1歳半の時見た記憶はもう消えてしまったらしいけれど、これでまたジンベエサメとの楽しい思い出ができました。