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花井悠希の朝パン日誌 vol.18 憧れのあの子…〈uneclef〉と〈美瑛選果〉
馴染みのないエリア、遠方、大行列のお店、営業時間。理由は様々ですが、いつか食べたいと願っていても、その“いつか”が積み重なるばかりで、なかなかお目にかかれないパンってありますよね。
今朝の朝パン日誌は、私の中でそんな憧れを抱きつつやっと最近出会うことのできたパンたちを紹介します。
早起きは勝ち組…〈ユヌクレ〉
小田急線豪徳寺駅のほど近くにある〈ユヌクレ〉さん。オープン前から行列ができ、デニッシュなど人気のパンは午前中に売り切れ、午後も早い時間で全品完売のことも多くて、近くに住んでない私にはなかなか難易度の高いパン屋さん。
やっと訪れることができました。(でもデニッシュは買えず)
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奇跡的に今ココに立っている。持ち上げた瞬間にそう感じたこちらは「スイートポテト」。
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じゅんじゅんと水分を抱え、こぼれ落ちる一粒一粒までしっとりな生地は、形を保っているのが不思議なほどのしっとり加減です。どっぷりしたその身体を構成する全てが簡単に重力に負けてしまいそうなほど柔らかい。お酒を効かせたり、シナモンを主張させたりとそういうごまかしが一切なく、真っ向からさつまいもを受け止めて、その美味しさをダイレクトに伝えてくれます。
断面図のこのホクホク感を見ても伝わるのではないでしょうか?
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無類のさつまいも好きの私からしたら、きっとこれを作った人は芋好きに違いないと親近感を勝手に抱いてしまうほど、芋欲を満たしてくれます。
じゃあ、芋食べてればいいじゃない?と思ったあなた。違うのですよ。言うなれば、ステーキとハンバーグくらい違うはず!(キリッ!!)さつまいもの甘みとバターや乳製品のコクが滑らかに溶け合って初めてスイートポテトとして完成すると思うのです。これからも追いかけ続けますよ!
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ちょこんとした姿が愛らしいこちらは「いちじくと林檎のスコーン」。
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この小さなスコーンを半分に割った途端、声を上げてしまいました。ドライイチジクとりんごがしかけ絵本のようにわぁ!と飛び出してくるんです。
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よくこんな小さな身体でたくさん抱えてきたねって、労いの言葉をかけてあげたくなるほど頑張り屋さん。生地のサクッとした歯切れは軽快で、サクサクとリズムに合わせてスキップしたくなっちゃうくらい心地よい。
水分を吸って膨れたイチジクはプチプチとした食感とねっとり絡みつく甘みで誘惑し、それだけだと甘みが強くなりそうなものを、すかさず林檎がきゅっと酸味を前に出して引き締める。まさに、黄金コンビここに有り!という説得力のあるスコーンでした。
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こちらは、ぷっくりした高さに惚れ惚れする「イングリッシュマフィン」。
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まずはバターと蜂蜜たっぷりでいただきます!
【モチモチ】のその上、【ミチミチ】とでも言うのでしょうか。ミチミチした食感の、弾力性が抜群に高い生地は、噛んだそばから潰れた断面が形状記憶のように戻っていきます。形を乱した1つ1つの気泡たちがみんな揃って、のっそりと元の位置へ立ち上がってくる様は、幼き日の観察心を刺激されワクワクさえしてきます!
じっくり観察しながら味覚の方へ意識を向けると、酸味もあり、小麦の大らかさや爽やかさも感じられて、素朴さの中に幅広い味わいの世界が広がっていることに気づきます。皮の部分はカリリとした食感と香ばしさがクセになる薄皮で、内側のもっちもちな食感との対比もたまりません。
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ジャムやレーズンバターとの相性ももちろん最高。我がイングリッシュマフィンランキング1位に躍り出ました!!
出会いは突然に。…〈美瑛選果〉の「コーンぱん」
新千歳空港で人気沸騰中の〈美瑛選果〉のコーンぱん。なんとブーランジェリー〈VIRON〉とのコラボで出来たパンなのです。
でもこのレア度がすごい。私もコンサートで新千歳空港を利用した時に見に行ってみましたが、焼き上がり時間が1日に5から8回、一度の焼き上げる個数が少ないので毎度長蛇の列で買えず…。とうもろこし好きとしては打ちひしがれながら、いつもの『札幌おかきoh!焼きとうきび』(これも大好き)を買って帰ったものです。
ですが、そのチャンスは突然に私の前に舞い降りました。お土産で頂いたのです!
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これがあのコーンぱんかー!!案内通りに丁重にリベイクして頂きます。(緊張!)
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真ん中に切り込みを入れた途端に雪崩のように滑り落ちてくるとうもろこし。一粒一粒がツヤツヤと生き生きしていて、雪崩にのり「ひゃっほー!」「初めましてー!」と口々に駆け下りながら挨拶してくれるようです(妄想力豊かなタイプ)。
北海道のとうもろこしを思う存分味わってほしいという心意気が、ビシビシと伝わってくるこの溢れるばかりのとうもろこし量よ。どや。
あれ?今気づいたけど、このパンの形からしてとうもろこしの粒型ではないかい!?
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表面をサクッとしたらば現れる、しゅんと柔らかく口溶けする生地。豊かに気泡が入り空気がたっぷり混ぜ込まれているのでふっかふか!
水と砂糖は一切使用せず、とうもろこしの水分と甘さで焼き上げられていると情報で知っていても、にわかに信じられないくらい生地にしっかりと甘みがあります。でも、とても瑞々しく後味はすっきり。後に残らずふわりと届く甘みは砂糖じゃないからなのかと納得です。中に目がいきがちですが生地にもとうもろこしが散りばめられていて、ぷちぷちと活きがいいです。(魚か!)
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(バターのせ!)
さぁて、お待たせしました。中のとうもろこし部分は、思いのままにわっしゃわっしゃと頬張りましょう。シャキシャキと瑞々しいとうもろこしを己の頬袋に心ゆくまま詰め込んで!お口いっぱい(心もいっぱい)味わえる幸福に感謝したくなります。調味料、材料は最低限に。それは、美瑛産の素材に自信があるからこそ。大地の恵みにありがとうを伝えたいパンでありました。