熟成日本酒と熟練の職人が作る創作和食をペアリング。 20年ものの日本酒も。恵比寿の隠れ家〈酒遊び とらとら〉で希少な熟成日本酒と出会う。

LEARN 2022.04.25

ワインやブランデーは熟成するとおいしくなると言われますが、実は日本酒にも熟成日本酒という楽しみ方があります。その魅力と和食と合わせて提案するお店〈酒遊び とらとら〉が2022年3月、恵比寿に誕生しました。熟成日本酒と創作和食のペアリングによる奥深い世界を垣間見てきました。

恵比寿神社から30秒。ビルの3階にある隠れ家のようなお店。

恵比寿 酒遊び とらとら

恵比寿の恵比寿神社のそばにあるビルの3階にオープンした〈酒遊び とらとら〉は、希少な熟成日本酒を洗練された創作和食に合わせていただけるお店です。

恵比寿 酒遊び とらとら

熟成日本酒とは聞き馴染みがありませんが、お酒の貯蔵技術が進歩する以前は、日本酒を自然の力に任せて熟成させて、古酒として楽しむ文化がありました。〈酒遊び とらとら〉は知る人が少なくなった熟成日本酒の文化を知ってもらいたいとオープン。

コース料理にペアリングをお願いすると他のお店では飲めない稀少な熟成日本酒のほか、伝手がなければ手に入らないような珍しい日本酒を味わえるという貴重な体験ができます。

ペアリングが生む、料理と熟成日本酒の味わい深い相乗効果。

先付の「蜆汁(しじみじる)」からスタート。
先付の「蜆汁(しじみじる)」からスタート。

「美味佳肴」(8,800円)のコースにペアリング(2,500円)をお願いしました。まず先付にいただいたのが「蜆汁(しじみじる)」。しじみの出汁をしっかり感じるお吸い物に三つ葉の香りが上品です。

前菜は5種盛りで柔らかく旨味のある「鴨の酒蒸し」、ぷりっとした食感の「甘海老の沖漬け」、紅芯大根を合わせた「唐墨の西京漬け」、たっぷりのガリの下に〆鯖が隠れた「ガリ〆鯖」、手作り酢味噌がまろやかな「信州産アスパラ酢味噌掛け」という5種盛り。順番に食べるとしっかり旨味があるものから徐々に酸味のあるものに。

愛知県〈青木酒造〉で作っているオリジナルの純米活性にごり「あぶく」をペアリング。瓶の下の方に米が残っていて、乳酸を思わせる味わいです。

次はお造り。ひと目で新鮮と分かる美しいお刺身は右からきびなご、いさき、鰆、真鯛、本マグロの5種類。すだちをかけて、岐阜県のたまり醤油でいただきます。

この5種盛りのお造りには2種類のお酒が合わせられました。右の3種類には酸味と苦味を感じる岩手県〈川村酒造〉の「酔右衛門(よえもん)」の2年熟成を。徳島県〈三芳菊酒造〉の「三芳菊」は、2016年に発売された後、冷蔵で熟成。ねっとりした油分を感じるお刺身と相性がいいとのこと。

焼き物として「常陸牛の酒粕味噌漬け」を卓上の炭火コンロで炙って、炭の風味を移していただきます。酒粕の旨味が移った常陸牛のサクサクした食感にふわっと炭火焼きの風味に唸りそうになります。

こちらには青森県〈竹浪酒造〉の「七郎兵衛」を温度50度ほどのところで10分ほどかけてゆっくり燗して合わせます。2018年のビンテージでかなり貴重なものだそう。

盃はたくさんある中から好みのものを選べます。盃も貴重なものが多く、中にはもう買えないものやお願いしても1年待ちのものなども。

そしてカウンターの上に最初から用意されていた陶器の盃台に乗せていただきます。ちゃぶ台や座卓がまだなかった頃、お酒は特別なものとして一段高く置かれていたそうです。盃台は今はもうほとんど作られていないので、骨董品を集めているんだとか。錫製のとっくりも、昭和の年代物です。

そして次は「熟成純米酒しゃぶしゃぶ」。大きな蛤と鰆、うるいと菜の花という季節を感じる4種類の具材を純米酒で火を通していただくという贅沢さ。付けダレの代わりに日本酒に梅干しと鰹節と昆布を加えて煮詰めた煎り酒が出されました。周囲にお酒のいい香りが充満して、食べる前から気分が上がってしまいます。

しゃぶしゃぶに合わせたのは埼玉〈神亀酒造〉の「ひこ孫」。2009年醸造の純米吟醸です。鰆を食べたあとにお酒を口に入れたら鰆の旨みを改めて感じて、ハッとしました。

そして「鮎並女(あいなめ)の揚煮 旨出汁餡」は美しいお椀の中に、あいなめがどことなく凛とした表情で鎮座していました。上品な餡の中に、表面はさっくり、中はふんわりでしたあいなめのおいしいこと。揚げ物ということもあり、さっぱりと自家製のレモンサワーがペアリングされました。

そして酢の物として「初鰹の燻製ポン酢」が出されました。目の前で燻製が施された鰹は、風味豊かに、しかもクセのない食べやすい仕上がりです。穂しそや青ネギの薬味と合わせていただきます。

鰹には京都府〈向井酒造〉が古代米で作った「伊根満開」という赤く、甘酸っぱいお酒が合わせられました。海外でも人気のお酒だそうです。

食事として出されたのは「鮑と山田錦のリゾット」です。山田錦は酒米として有名なお米のひとつ。澱粉質が多くて、炊くと普段食べているお米と食感が異なるので、〈酒遊び とらとら〉では焼きおにぎりやリゾットとして提供しています。確かに舌触りに特徴がありました。

クリーミーで食感も楽しいリゾットには和歌山県〈中野BC〉の「超久」が合わせられました。なんと、2002年に醸造された20年もの。飲み始めは爽やか、飲み終わりにしっかりした印象が残るお酒でした。

最後に出されたのが「北海道産小豆の白玉ぜんざい」。そして鳥取〈梅津酒造〉の「野花(のきょう)」という梅酒と先ほども登場した〈向井酒造〉が作る夏のお酒「伊根町夏の想い出」をミックスしたカクテルのようなお酒が合わせられました。

お酒をぜんざいにかけてもおいしいとのこと。試してみると、いちごの酸味とお酒の酸味、まろやかなあんこに作りたてで柔らかい白玉で幸せな気分に。デザートも丁寧に作られていて、最後までお酒の魅力をたっぷり楽しめる演出に脱帽です。

熟成日本酒や古い酒器に触れられる貴重な時間。

カウンター14席とこぢんまり。
カウンター14席とこぢんまり。

〈酒遊び とらとら〉で飲める熟成酒は、酒蔵や酒屋さんが熟成したものを信頼関係をもとに集めたもの、店主が自家熟成したものが揃っています。実は、熟成酒の方が二日酔いしにくいので、お酒が弱い人こそ試してみてほしいとのこと。

しばらく忘れられていた日本酒を熟成させるという文化と熟練の腕で作られる創作和食の組み合わせ。〈酒遊び とらとら〉で、古くて新しい日本酒の奥深さにハマってみてはいかがでしょうか。

〈酒遊び とらとら〉
■東京都渋谷区恵比寿西1-13-6 ブラッサム ZEN3F
■03-6455-3485
■17:00~23:00(22:30LO)
■日休
公式Instagram

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