祈りにルーツを持つ、水引の奥深さを知る。 水引デザイナーの長浦ちえさんが語る、次代へ繋ぎたい水引デザインの魅力。
可愛らしさやデザイン性で近ごろ人気の水引。本質を大切にしたいという水引デザイナーの長浦ちえさんに、知って贈りたい、受け取りたい、水引のことを聞きました。「見えない気持ちを形にできる水引」
脈々と受け継がれる水引の本質を知って次代へ繋ぐ。
祝儀袋や正月飾りなど、日本の冠婚葬祭に欠かせないものであり、また近ごろではアクセサリーなどとしての人気も高い水引。デザイナーとして、オリジナリティあふれる作品からプロダクトまでを手がける長浦ちえさんは水引アレンジの先駆者だ。日本文化という枕言葉に惹かれ、水引デザインを仕事に選んだ長浦さん。
「振り返ると人と人の繋がりを不思議に感じたり、ものにも人格があるように思えて捨てられない子どもでした。大人になって、ご縁について考えていたことや、八百万(やおよろず)の神のことを知って腑に落ちました。見えないご縁も、ありがとうやおめでとうの気持ちも、言葉にできても形のないもの。それを形にできるのが水引と、携わるうちに知ることに」紙をこよりにして糊で固めた水引。
「結ぶときは一発勝負、やり直しがきかない潔さも好き。束では力強く1本では繊細、強いけれどしなやか。筋の通った日本女性みたいだなって」と語る。凛として、的確な言葉を紡ぎ出す長浦さんを見ていると、その姿は水引と重なって見える。
「水引が流行ってますよね、といわれるようになった今、可愛いだけが先行している部分もあって。結びは祈りに通じると漠然と思っていたのですが、ルーツを知ると変えてはいけない本質があるし、相手を思う気持ちは軸として大切にすべきこと」ルーツを改めて調べた書籍の出版や、神社のお守りのデザインなど、活動の幅をますます広げている長浦さん。水引を通じて見せてくれる新たな世界は、これからも楽しみだ。
Navigator…長浦ちえ(ながうら・ちえ)
福岡生まれ。美大卒業後、水引商品の開発に携わる。1年間のパリ滞在中にアートワークの制作を始め、2013年からは自身のブランド〈TIER〉を主宰。12/31までは福岡〈岩田屋新館〉に出店。迎春飾りが一堂に揃う。