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心やすまるカフェ&喫茶店。「渋カフェ」その13 千住桜木〈ミルクホール モカ〉で昭和30年代へタイムトリップ。
Hanakoスイーツ担当が、プライベートで訪れるカフェ&喫茶店をご紹介しています。レトロなテーブル、懐かしくてかわいいメニュー。不思議と落ち着く「渋カフェ」。ウッディな世界でのんびりしたひとときを。13回目は北千住の伝説のミルクホール。
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今回の渋カフェは北千住から歩いて20分。千住桜木にある〈ミルクホール モカ〉。オープンしたのは昭和30年代後半。と言っても想像しにくいのですが、映画『ALLWYS三丁目の夕日』の設定が昭和30年代と聞くと、当時の町並が目に浮かんでくる人も多いはず。
「ミルクホール」という言葉を聞きなれない人もいると思いますが、自分も1987年に渡辺美里さんの『Milk Hallでおあいしましょう』という曲を聴くまで知りませんでした。「ミルクホール」とは、明治大正期に流行った、軽食やコーヒーを提供するお店のこと。関東大震災の後、喫茶店に人気が映り変わって行ったそうですが、喫茶店が生まれる前のカフェ的なお店の総称だったようです。
〈モカ〉は、マスターのご両親が大正生まれで、ミルクホールに憧れてネーミングして店を始めたとのことで、昭和30年代にもレトロという感覚はあったのかもしれませんね。
ちなみに美里さんの曲は、彼女が通っていた高校の近くにあるお店を歌った曲としてファンの間では有名だったのですが。当時はインターネットもなく、まして訪問するのも迷惑だろうと思っているうちに月日が経ち、最近ようやくネットを駆使してあちこちのミルクホールを覗いています。今では都内に現存する店も少なくなってしまいました。ここはその一つ。
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店内はこんな感じ。モケットソファーのオレンジがあざやか。
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柱に小さな振り子時計が、いい味を出しています。原田知世さんの映画『時をかける少女』でも、振り子時計は印象的に使われていましたね。
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奥の席にはテーブルゲームがあります! インベーダーではなく、麻雀ゲームでしたが、どちらにしてもいまや貴重。
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クリームソーダは、緑のコースターにグリーンシロップ。美しすぎる。620円。
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オレンジのテーブルにオレンジが映える!
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いちばん人気は表の暖簾にも書いてあるコーヒー。オーダーを受けてから豆を挽いてハンドドリップ。お店の中は、時間が進むのがゆっくりなので、この際、外の喧騒は忘れてコーヒーを楽しむのが吉。複数の豆をブレンドした味は実にすばらしく、心なごみます。420円。
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ふと見上げると、なにやら煙突の写真が。昭和38年まで、すぐ近くに石炭の火力発電所があったそうで、詳しく知りたい方は、「おばけ煙突」で検索してみてください。他にもこの近くには町工場があったため、「開店当初は仕事の途中に立ち寄る方もいましたね。いまは逆に住宅街になって。でもこの通りは店が何もないから、みんなすぐに無くなると思ってたみたい。そしたらあっという間に半世紀が過ぎてね(笑)」
渋カフェの楽しみの一つは、マスターとの会話。お話ししていると、昭和30年代の東京が見えてきそう。映画『ALLWAYS三丁目の夕日』を観た人は多いと思いますが、最新のCGで再現されていた懐かしい東京が、ここにはあります。
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店構えを遠くから見ると逆に目立つというか。「高校の頃、前を通っていて、最近になって初めて来ました」という方がいたりするそう。ここだけ昭和のまま。
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北千住駅が最寄りですが、歩くと20分くらいかかるので、バスが便利。西口2番乗り場から。
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3系統のバスが通っているので本数も結構あります。千住桜木バス停の目の前にお店が。バスだと5〜10分くらい。小旅行感覚で楽しめます。「時かけ気分」でどうぞ。
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今週末は、この暖簾と忘れられた東京を探しに出かけてみるのもいいかも。
〈ミルクホール モカ〉
■電話非掲載
■東京都足立区千住元町38-1
■9:30~23:30(L.O.23:00)
■不定休
■喫煙
前回の神田〈珈琲園〉はコチラ。
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14席