おこもりスタイルブック2020-21 大切に読み進めたい「厚さ3cmを超える本」11選!〈HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE〉店長&編集部がセレクト。
気になって買ったものの読み進められていない本、部屋に溜まってはいませんか?長期休暇は分厚い本に手を伸ばすチャンス。読み終えた時にはきっと大きな達成感があるはず。そこで今回は厚さ3cmを超える本をご紹介します。
【花田菜々子’s CHOICE】
1.『読書の日記本づくり/スープとパン/重力の虹』著・阿久津隆(NUMABOOKS)
“本の読める店”〈fuzkue(フヅクエ)〉店主の阿久津隆さんによる、長い長い読書日記。5cmを超える圧倒的な厚さがありながら、まるでラジオを聴くような感覚でするりと読み進められる一冊。「独特の煮え切らない思考のテンポがクセになり、ついついハマってしまいます。小説と違って、斜め読みで気になったところだけランダムに読むのもアリですよ」。1,850円(全669ページ)
2.『はてしない物語』著・ミヒャエル・エンデ、訳・上田真而子、佐藤真理子(岩波書店)
映画『ネバーエンディング・ストーリー』の原作としても知られる傑作ファンタジー。いじめられっ子の少年・バスチアンは、突然本の中に吸い込まれ、不思議な世界での冒険に巻き込まれる…。「バスチアンが読んでいる本と同じあかがね色の装丁や、2色で刷り分けた本文など、“紙の本”としての美しさも魅力。一生手元に残しておきたくなる本です」。2,860円(全589ページ)
Navigator…花田菜々子(はなだ・ななこ)
書店〈HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE〉で店長を務める。自身の実体験を綴った書籍が好評発売中。
【Hanako’s CHOICE】
1.『スーパー・サッド・トゥルー・ラブ・ストーリー』著・ゲイリー・シュタインガート、訳・近藤隆文(NHK出版)
舞台は、経済破綻と一党独裁による軍事化が進むディストピア。その世界では誰もが信用度や性的魅力を数値化され、自由にプロフィールを検索されるようになっていた。冴えない中年・レニーと、家族と自分の幸せを求めてあがく美女・ユーニスが出会い、奇妙な恋物語が始まる。登場人物の会話に引き込まれる、絶妙なユーモアが詰まった一冊。2,300円(全456ページ)
2.『ヒロインズ』著・ケイト・ザンブレノ、訳・西山敦子(C.I.P.Books)
モダニズム文学の華々しい男性社会の裏で、彼らのミューズとして優しく寄り添いながら、一方で自らの表現者としての立場を奪われてきた女性たち。そんな“モダニズム作家の妻や愛人たち”について綴った作品。無名作家である著者自身の葛藤をかつてのヒロインたちに重ね合わせながら、改めて彼女たちの物語を響かせようと試みている。2,300円(全428ページ)
3.『雲』著・エリック・マコーマック、訳・柴田元幸(東京創元社)
突然の雨を逃れて入った古書店で見つけた一冊の本には、19世紀にスコットランドのある町で起きた“黒曜石雲”という謎の雲にまつわる奇妙な出来事が綴られていた。かつてその町を訪れたことがある主人公は、その書物を通じて自らの魂や亡霊に巡り合う。幻想小説やミステリー、ゴシックの魅力を併せ持つ、著者の集大成ともいえる長編作。3,500円(全333ページ)
4.『暇と退屈の倫理学 増補新版』著・國分功一郎(太田出版)
400ページを超える壮大な内容を通じて、「人間らしい生活とは何なのか?」を問う本。パスカルの有名な断章「部屋にじっとしていられないから、人間は不幸を招く」を皮切りに、文化人類学、考古学、経済学、消費社会論、動物行動学などを通じて、その答えに接近していく。倫理学といっても決して難解ではなく、気楽に読み進めやすい一冊。1,200円(全440ページ)
5.『ミルクマン』著・アンナ・バーンズ、訳・栩木玲子(河出書房新社)
主人公である18歳の女の子はある日、牛乳屋(ミルクマン)として知られる年上の男性に声をかけられ、彼女に好意を持つその男から何度も追い回されるようになる。この謎の牛乳配達人はテロリストなのか?国家独立を巡るテロと性的抑圧の時代を生きる少女の、不安と絶望を描いた傑作。世界30カ国以上で翻訳され、ブッカー賞を受賞。3,400円(全400ページ)
6.『彼女たちの場合は』著・江國香織(集英社)
ニューヨークの郊外に暮らす従姉妹同士の礼那と逸佳は、ある秋の日に二人きりで“アメリカを見る”旅に出た。ボストンにメインビーチズ、マンチェスター、クリーヴランド……長距離バスやアムトラックを乗り継ぎ、少女たちの旅は続いていく。なかなか海外へ行くことができない今、二人の旅を目で追っているうちに旅行気分を味わえるはず。1,800円(全480ページ)
7.『ハウ・トゥー バカバカしくて役に立たない暮らしの科学』著・ランドール・マンロー、訳・吉田三知世(早川書房)
元NASAエンジニアという経歴を持つ人気マンガ家、ランドール・マンローによる一冊。「川を渡る」「ピアノを弾く」「スマホを充電する」など、一見日常的な課題を解決するために、あえて“とんでもない”方法を使って探っていく。バカバカしくて役に立たない解決法を通じて、身近にある科学やテクノロジーを楽しく理解することができる。1,600円(全400ページ)
8.『リンカーンとさまよえる霊魂たち』著・ジョージ・ソーンダーズ、訳・上岡伸雄(河出書房新社)
かつての大統領であるリンカーンが、急逝した息子・ウィリーの記憶に浸るため夜の墓地を訪れると、そこには自らの死を受け入れられずに彼岸と此岸の間をさまよう霊魂たちがいた。奇妙な霊魂がリンカーンと出会うことで、ユーモラスで感動的な物語が動き始める。今作が初の長編作となるジョージ・ソーンダーズによる、全米ベストセラー。3,400円(全456ページ)
9.『パワー』著・ナオミ・オルダーマン、訳・安原和見(河出書房新社)
ある日を境に、世界中の女性が手から強力な電流を発する力を得る。母親を殺された復讐を誓うロクシーや、政界進出を狙う市長のマーゴットをはじめ、次々と反逆を開始する女性たち。オバマ前大統領のブックリストや、エマ・ワトソンが主宰するブッククラブの推薦図書としても話題を呼んだ、男女逆転ディストピア・エンターテインメント。1,850円(全440ページ)