娘から父へ…おいしい日本酒おしえます! 『伊藤家の晩酌』~第十四夜3本目/すっきり、キレ際立つ「播州一献 純米 夏辛」~
弱冠23歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入! 酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは? 第十四夜3本目は、アルコール度数低め、超辛口の1本。
(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)
第十四夜3本目は、スーパードライな飲み口の夏酒「播州一献 純米 夏辛」。
父・徹也(以下、テツヤ)「“夏辛”って文字がいいね」
娘・ひいな(以下、ひいな)「夏酒!って感じがするよね」
テツヤ「俺、夏あんまり好きじゃないんだけど、夏って言葉は好きなんだよね(笑)」
ひいな「わかる!」
テツヤ「キリッと辛口ってことは、キンキンに冷やして飲むのかな」
ひいな「それがね、このお酒は飲む前に冷蔵庫から少し出しておいたものを飲んでみてほしいの」
テツヤ「一回冷やしたものを、少し温度を上げてるってことだな」
ひいな「そう。これは断然、冷酒よりも温度を少し上げたほうがおいしいと思うから。冷酒と常温の間くらい」
テツヤ「へぇ〜、そうなんだ。さてさて、早く味わってみたいねぇ」
ひいな「んじゃ、乾杯しましょうか」
テツヤ「香りがいいね。うーん? なんて言えばいいのかな……」
ひいな「どう? なんかさ、改善の余地ある気がしない?」
テツヤ「わかる。ワインで言うと、渋みが残るというか、口に残る感じ?」
ひいな「でしょ?」
テツヤ「最初に感じた香りと味のギャップがあるんだよなぁ」
ひいな「実は私も、最初飲んだ時『あれれ?』って思った。私、『播州一献』が大好きで。去年セミナーにも行って杜氏さんの話を聞いたくらいすごく好きなお酒なの」
テツヤ「播州っていうことは兵庫県のお酒なんだな」
ひいな「そう。『播州一献』って、ぬる燗か熱燗で飲むイメージが強いお酒なんだけど、ここが夏酒を出してるっていうのが不思議で」
テツヤ「うーん。正直なところ、コメントに困ってる(笑)」
ひいな「大丈夫(笑)。おつまみと合わせて飲んでほしいから」
テツヤ「早く早く!」
「播州一献 純米 夏辛」に合わせるのは、山椒たっぷりの「うなぎのおにぎり」!
ひいな「実はね、このお酒に合わせる料理、何にしようかぜんぜん思い浮かばなくて(笑)」
テツヤ「ひいなでもそんなことあるんだ」
ひいな「でもね、蔵の方からうなぎが合うって聞いて。それに素直にしたがってみようと思って『うなぎのおにぎり』にしてみたよ。山椒もたっぷりとかけて召し上がれ!」
テツヤ「いただきます! うわぁ〜〜〜! さっきの日本酒がめちゃくちゃ合うぞ。ひいな、天才だな!」
ひいな「ね! めちゃくちゃ合うね!」
テツヤ「山椒も抜群だね。日本酒とおにぎりって、なかなかな組み合わせだね(笑)」
ひいな「米と米、だもんね」
テツヤ「最近のひいなの組み合わせで一番好きかも!」
ひいな「やった!」
テツヤ「2020年、No.1!」
ひいな「まだ半分しか経ってないけど(笑)」
テツヤ「たれの甘辛い味、うなぎのジューシーな脂、ピリッとした山椒をさっぱりと洗い流す辛口の日本酒。さっき単体で飲んだ時のイメージと違うよ、ぜんぜん!」
ひいな「でしょ? 夏のお酒は、夏のうなぎに合うんだね」
テツヤ「もうさ、麦茶みたいに、ゴクゴク飲んじゃう。こりゃいいよ!」
ひいな「このさっぱりとした日本酒には、ある程度、重さがあるものじゃないと合わないと思うんだよね」
テツヤ「あぁ。じゃ、冷奴とかは……」
ひいな「うん、物足りないと思う。でもこれね、高級なうなぎじゃなくて、スーパーで買ったうなぎをチンして、ごはんと混ぜただけなんだよ」
テツヤ「それがこんなに合うんだもんな! やっぱりさ、日本酒単体よりも合わせるもので何倍にもおいしくなるお酒って、ほんとうにこの企画にぴったり」
ひいな「うん、『伊藤家の晩酌』だからね!」
テツヤ「うなぎと山椒が監督とコーチだったら、ドラフトで他の球団は敬遠しても、うちは育てられるぞ、と。そういうことだ」
ひいな「もう、何でもかんでも競馬と野球に例えがち(笑)」
テツヤ「相撲もね(笑)。いや〜、これはすばらしかった。このお酒、全国のうなぎ屋さんに卸せばいいのに!!」
ひいな「本当だね。それぐらい合うもんね」
テツヤ「名付けて、うなぎ酒!」
ひいな「その名前で、みんな飲んでくれるかな……(笑)」
テツヤ「やっぱりたれだよね。白焼きじゃ違う気がするよね」
ひいな「うん、こってりしてるほうが合うと思うな」
テツヤ「あと米があるかどうかも大事だよな」
ひいな「そうだね、お米と合わせるのがおいしいと思う!」
夏にも日本酒を! 食材と合わせたり、飲み方で、もっと楽しんでほしい。
ひいな「初め、『播州一献』に対してあんまりいいイメージなかったでしょ?」
テツヤ「うん、正直なところね」
ひいな「実はね、1週間前にすでに開封しておいたものがあって。こっちも飲んでみてほしいの」
テツヤ「あぁ、こっちのほうがぜんぜんうまい! 同じ酒とは思えない!!」
ひいな「でしょ?」
テツヤ「うまいよ、これ!!」
ひいな「味、違うでしょ?」
テツヤ「うん、マイルドになってる。水の分子が細かくなった感じ?」
ひいな「そうそう。やわらかくなったよね」
テツヤ「開けたばっかりの時は、ちょっと固い感じだもんな」
ひいな「空気に触れたことで変化したんだよね、きっと」
テツヤ「日本酒のこの味の変化が、やっぱりおもしろいねぇ」
ひいな「春酒もあるから飲んでみない?」
テツヤ「おぉ、いいね。こりゃ春酒に一票だな。うんまい! 最高じゃん!」
ひいな「でしょ? ぜんぜん味わいが違うよね」
テツヤ「日本酒のおいしさは、やっぱり米感だよ!」
ひいな「米の旨みとかコクとか甘さが、日本酒のおいしさなんだなってしみじみ思っちゃうよね。この蔵はね、毎年、夏酒を試行錯誤してて、去年は日本酒度数+15度だったんだけど、今年は+10度にしたみたい。アルコール度数も14度で低めなの」
テツヤ「じゃあさ、これから毎年夏には『播州一献』を飲むっていうのはどう?」
ひいな「いいね! 毎年、味の変化を楽しむ」
テツヤ「夏のお酒ってひとくちに言ってもいろいろあるんだな」
ひいな「おもしろいでしょ? 日本酒ってさ、どうやったら夏にも飲んでもらえるかが課題だと思うんだよね」
テツヤ「夏は違うもの飲みがちだもんな。ビールにレモンサワー、キンキンに冷えた白ワインとかさ」
ひいな「そのイメージを覆したい!」
テツヤ「重いのかな、やっぱり日本酒って」
ひいな「そうだね。アルコール度数高めだし、ぬるくなったら重くなっちゃう。度数と温度が大事かもね。ロックで飲んだり、うなぎと合わせたり。日本酒を夏でももっと楽しんでほしいな」
テツヤ「じゃ、ほかのお酒を飲む回数減らして、これからは夏も日本酒だな!」
ひいな「っていうか、うちの場合は、お酒を飲む回数が増えるだけなんじゃないの?」
テツヤ「さすが! わかってるねぇ」
ひいな「バレバレです!」
→次回は7月19日(日)更新
【ひいなのつぶやき】
毎年必ず飲むお酒に! 我が家の夏の風物詩になるかもしれません!
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