花井悠希の朝パン日誌 あのパンがやってくる!…〈C’est Une Bonne Idee〉と〈petrin〉 LEARN 2020.05.07

あぁ。無情にも、1年でもっとも健やかで気持ちのいい季節が屋根の上を、窓の外を通り抜けていく。真っ青な太陽に、花の香りを含んだ空気たちが踊り、鳥や虫たちが宴を広げている。こんな季節はお外でピクニックやキャンプなんて最高だけど、今はお家にいなくちゃね。コロナもそんな簡単には落ち着いてくれそうにはないし、STAY HOME期間ももう少し長引きそうです。だったらせめてお家で朝起きる楽しみを用意しなくっちゃ!今は全国各地、沢山のパン屋さんがお取り寄せパンを始めてくれています。私もお家時間のお供に、パンのお取り寄せにすっかりハマってしまいました。だってそれは、言い換えれば普段なかなか行く機会の少ない街のパン屋さんのパンを食べられるチャンス!しかもお店のおまかせで詰め合わせてくれて。自分で選ぶのじゃないからよりお店のカラーが際立つ気がします。今回は気になっていたこちらの2店をお取り寄せ。

手書きメッセージにほっこり…〈C'est Une Bonne Idee〉

箱を開けて、目が潤んでしまいました。箱いっぱいのパン達に可愛らしい字で書かれたメッセージカードが添えられています。書いてくださったのはどんな方なのかなと想像したり、書いてくださっている光景を想像したりするだけで、胸に温もりがじわーっと広がっていきます。1つ1つパンを取り出す度に、高鳴るワクワク。ご近所友達と半分こしても十分なくらいたっぷりのパン達です。1つ1つのパンの名前がわからずネットで調べたものなので、名前が間違っていたらごめんなさい。

甘いのからお食事パンまでこんなにたくさん入っていました!
甘いのからお食事パンまでこんなにたくさん入っていました!

ちなみに店名の〈C'est Une Bonne Idee〉は、フランス語で「それはいい考えだ!」という意味なんですって。今日から使えますね(どこで?)、いい言葉。まずは、お店のインスタグラムを見てお取り寄せを見つけた自分に、この言葉をかけてあげました。

シャキシャキ。この歯当たりって高級かき氷か霜柱でしょ(霜柱を食べたことはない)!?と言いたくなるほど、歯に触れるや否や響くのは、何層にも重なった薄氷の上を歩くような音。それはしゃりりりとシャンシャンシャンがやまびこのように行ったり来たりしながら、口内をこだまします。しゃりりりの先に待ち構えていた内側はふんわり。外の食感に驚かされて全神経をそばだてているうちに、ふわりとその内側に着地していました。バターの甘みがしみしみと充満していて、私の背中をさすってくれるような心優しいお人柄(おパン柄)に心が解きほぐれます。

花井さん連載 〈C'est Une Bonne Idee〉と〈petrin〉

粉が溢れることなどは一度忘れていただきたい。テーブルに溢れた粉たちは後からふきんで拭き取ればいいだけです。大きな口でいけばいくほど、このシャキシャキしゃりしゃりとした食感は味わえますよ。リベイクして前回の記事にも書いた”冷めたて”をぜひ狙って。ちなみに、そのピークタイムを少し過ぎると、内側のふんわりが少しずつ外側のしゃりしゃり達を仲間にしてふんわりゾーンが増えています。バターの甘みがひたひたに舌を埋め尽くすそれもそれでまたいいのだけど。でもやっぱりこの外側の食感は味わってほしいからまずは冷めたてを狙ってみてくださいね。

噛みごたえのある「ミルクフランス」が教えてくれます。むぎゅむぎゅっとしっかりとした歯応えの困難を(決して困難ではないけれど)乗り越えた先にはちゃんとご褒美が待っていることを。

花井さん連載 〈C'est Une Bonne Idee〉と〈petrin〉

バターがぶわぁー!とこっちのことなんて御構い無しに、乳製品らしいミルキーなコクを思いっきり放ちます。甘く甘く解けて、口の中ですーっと溶けていく。この余韻にずっと浸っていたいけど、もう一口と食べ進めると、またムギュッと小麦が逞しい世界がやってきて、その後にはまた甘い甘いご褒美バタークリームタイム。これぞ飴と鞭。いやいや、この鞭美味しすぎるがな(急な関西弁)。味わいに緩急はあってもちゃんと繋がっているんだから、比喩するなら昼と夜ですかね(急にロマンティック)。硬めのパンの「ミルクフランス」が好きな人には全力でオススメします!

その見た目からメロンパンかなと思ったら、おや?しっかりとビターなチョコレート味です。上からカバーしているクッキー生地部分はとても薄い。故に聞こえるか聞こえないかの控えめさでサクッと崩れると、マドレーヌのようなケーキらしい甘みが広がりました。

花井さん連載 〈C'est Une Bonne Idee〉と〈petrin〉

そこから内側のチョコレート色したパンゾーンへ進むと、今度はキュンとくるほろ苦さが幅を利かせて、たくさん散りばめられたチョコチップのお出ましです。さらに大人な味わいに。ふかふかでこんもり膨らんだ生地はぎっしり詰まっているのに、その一つ一つがしっかりと空気の粒を蓄えて膨らんでいるから圧迫感がなくて、密度高いはずなのに抜けがあります。メロンパンはあんまり…な方にこそ食べてもらいたいな。

先程の子と同じようなサイズ感で同じようなシェイプだったから食感も似ているかと思いきや、驚きました!軽い!!表面のチーズはシャクシャクでカリカリで、口内に入るや否や香ばしさと塩気を一斉に放ちます。そして何といってもこの生地よ。大きな一口で食らいついたら、はむって返されましたよ。密度という言葉とは無縁です。むしろ何から何までさっきの子と違うではないか(当たり前か)!人は見た目で判断するなと言われているのに全くもって私は学びませんな(人ではない)。

花井さん連載 〈C'est Une Bonne Idee〉と〈petrin〉

フワンフワンに柔らかい生地は空気、大盤振る舞い。そして水分をたっぷり抱えていてもちっと引きがあります。チーズ味のパンのポンデケージョにも少し似たふかっと抜ける空気感とモチっと感です。STAY HOMEならぬSTAY CHEESE!チーズが絶えず香って、口内にコクが充満して幸せの極みです!ポタージュスープと合わせてみたら食事を一つ格上げしてくれるような風味の品の良さ。フレンチのコースでパンが出てくるのとチーズが出てくるのどちらの醍醐味も兼ね揃えています!的な?。恐るべし。

小さめサイズの全粒粉の食パンは、サクッ!も、モチッ!も、いいとこ取り!歯切れは良く、優しく香る全粒粉の香ばしさに連れられて食べ進めていくと、もちっとさが顔を出しうっすら塩気も感じます。甘さ控えめで、お料理にも合わせられそうな食パンです。穏やかな日常を約束してくれるような親密さで語りかけてくれるこの子は、小さいけれど包容力はおっきいです。

これはほんのほんの一部。シェアしたので私が食べていないものもあるし、我が家にはまだバゲットも食パンもカンパーニュも登場を冷凍庫でスタンバイしてくれているんです。冷凍庫もっとほしい…。おまかせパンセットなので、ご紹介したものが必ず入っているわけではないのでご了承くださいませ。何が来るかはその時のお楽しみ!というのも楽しいものですよ。

手塩にかけて育てられたパン達…〈petrin〉

インスタグラムで「#通パン」というワードを発見して、そこで見つけた〈petrin(ペトラン)〉さん。茨城県石岡市にあるベーカリーカフェさんです。畑で採れる人参や果物で天然酵母を作り小麦粉だけで培養し、長期間熟成して焼いているというこだわりの詰まったパンたち。

おまかせセット、3,000円(税、送料別)。
おまかせセット、3,000円(税、送料別)。

大きめサイズのパンがごろりんとたくさん入っています。

甘みはほとんどナッシング。ずっしり重いから焼いたらどうなるんだろうと思ったら、フッカフカになりました。絶え間なく燃ゆる天然酵母らしい酸味。しっとりとしていて密度もあるはずなのに、その1つ1つが空気の浮き輪を手に、ソーシャルディスタンスを保っているから決して潰れないのです(流行りのワード使いたがり)。酸味は清々しく、焼きと小麦の香ばしさが酸味と入れ替わり立ち替わり相手をしてくれるので、そこに甘みが入る隙はないってことでしょう。

となれば逆に、甘々なこの子を投入させてみようじゃないか。美味しいんだ。美味しいんだけど、とてもしっかり甘いので合わせるものによってはtoo muchに感じてしまい、なかなか冷蔵庫の中で日の目を浴びていなかったこの子。すまん。こんな時こそ君なんじゃないか?手を差しだすと、しっかり握り返してくれた君の瞳にひと匙の寂しさが浮かんでいるのを僕は見逃さなかった(※フィクションです)。君はついにたっぷりとすくわれて、パンの大地へ広がった。誰も君を邪魔するものはここにはない。そのハチミツの甘みを誰の目も気にせずに広げることができるんだ。その甘みを酸味と香ばしさでギュッと抱きしめる。ずっと求めていたのはこれだったのかもしれない。そこで目が覚めた。(どこからこうなった?)

「カンパーニュ」。
「カンパーニュ」。

クラストはしっかりと色づいてトーストするとガリガリな食感。そこから立ち上るは焼ける釜のにおい。たくましくって力強い香ばしさがたまりません。相反して内側はキメが細かく、シーソーのように、合わせる料理とバランスを上手にとってくれます。サラダにもマリネにも、スープはもちろん、シチューやパスタにも。お料理を引き立てながら小麦の風味で味付けしてくれるのです。己を主張しすぎない、「カンパーニュ」。

「カカオショコラ」。
「カカオショコラ」。

とろり。艶めかしいチョコレートにハッと我にかえります。生地は甘さ控えめでドライでビターなカカオ味。「カンパーニュ」に似た表面のガリッと感と内側の目の細かさで、口当たりは柔らかく少しもっちりとしています。カカオのソリッドな旨みと香りが冴え、甘さは抑えめ。このブラックな生地のかっこよさをそのまま体現したかのようなスマートでクールな味です。うーん、俳優さんでいうと綾野剛さん的な(本当?)。そこに、ですよ。艶めかしいチョコレートがとろりと口の中をゆっくりとした速度でなぞるのです。ほら、ゾクゾクしてきませんか!?女子はキュンキュンきてしまう妖しさ。体感してみてほしいです!

このふっくらとした厚みがそそりますよね。厚みから想像する通り、もっちりと引きが強く、お口の中でお米のように甘く柔らかく溶けていきます。そしてイングリッシュマフィンらしい酸味は、オレンジやグレープフルーツにも似た爽やかさ。清涼感を携えたまま喉を抜けていく感覚は、とても清々しい喉越しです(決してオレンジを添えたからそう感じるわけではないはずだ)。この土台があるからこそ、上に乗せるアレンジが映える映える。とりあえずバターはたっぷりを推奨します。まず、切れ目を入れて焼き目をつけるくらいしっかりめにトースト。焼きあがったらすかさずバターをONして、そのままトースターの中でバターを育てます。いい具合にとろけてきたのを確認したらGO!とろけたバターをイングリッシュマフィンがぐんぐん吸い込むから、齧った時のジューシーさに面食らいますよ。普段なら少し甘いかな?とか思うくらいに、はちみつをたっぷりかけたり、ジャムをのせたりした方がオススメです。甘めにしてもイングリッシュマフィンの酸味が爽やかに運ぶので、生地のおいしさも、合わせるジャムや蜂蜜のおいしさも引き立ててくれますよ。

パン屋の皆さんや配送業者さんが頑張ってくださってお家にきてくれたパン達。ありがとうございます。お取り寄せをこの度始められるパン屋さんも多くて、その受付方法は様々。この時期なので注文が殺到しているお店もあり、告知したタイミング数時間で受付数終了してしまったり、オーダーしてから届くまで時間がかかったりというお店も。でもそんなそれぞれのやり方に合わせてゆったり待つのも、今はいいのではないでしょうか。むしろ、その手作りな感じも愛おしい。お家に例え1人だとしても、その先にパン屋さんの香りや、パン屋さんのキャラクターが見えてきて、受け取ったそのぎっしりとパンが詰まった箱を前に、人と人との繋がりを感じて温かな気持ちになりました。この機会に気になっていたパン屋さんのパンをお家にお迎えしてみませんか?まだまだこちらの「朝パン日誌」、お取り寄せパン記事が続く予感です。お楽しみに!

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