大銀座老舗手帖 とっておきのメイクブラシなら、東京最古の老舗ブラシ専門店〈江戸屋〉のものを。
戦前より、東京随一の高級繁華街として国外でも名高い、大銀座エリア。近年は新しい商業施設が増え、街の景色や訪れる人にも変化がありますが、昔から愛され続けている老舗が、いまもなお、数多く軒を連ねています。今回は、100年以上続く老舗刷毛・ブラシ専門店〈江戸屋〉が守り続ける伝統と新しい挑戦を感じさせる魅力的な品をご紹介。
アイデア次第で自由に用途が広がる刷毛とブラシ。
300年以上の歴史を持つ、東京で最も古い刷毛・ブラシ専門店〈江戸屋〉。京都で刷毛作りの修業を積んだ初代は、徳川7代将軍・家継のお抱え刷毛師に任命され、のちに現在の屋号を将軍家から与えられる。大奥では化粧刷毛が愛用され、職人の道具としても重宝された。ふすまや掛け軸などを作るときに使う「経師刷毛」、絵の具を木版に塗るための「木版刷毛」、漆器作りに使う「漆刷毛」など、東京都伝統工芸品に指定されている7種類の「江戸刷毛」は、それ自体が貴重であると同時に、伝統工芸を支える大事な道具。
「白糊刷毛」も昔ながらの刷毛のひとつで、本来は障子張りなどに使うものだが、使い勝手のよさからさまざまな場面で用いられている。
明治以降は、生活の西洋化に合わせてブラシの製造をスタート。毛の種類も動物、植物、化学繊維、金属など豊富になり、生活用から工業用まで需要が広がった。現在扱っている品数は、実に3000種類!オーダーがあれば1点から応じる、少量多品目生産だ。だからこそ商品を選ぶときは、お店に足を運んで現物を手に取ってみるに限る。なぜなら「ヘアブラシ」や「メイクブラシ」などは特に、毛の硬さや質感によって使用具合がまったく異なるからだ。店頭で選ぶもうひとつのメリットは、お店の人との会話で、目的に合わせてプロならではの提案をしてもらえること。それによって、たとえば料理用の毛先の柔らかい小さな刷毛を、レコードの掃除用に使うような人もいるのだとか。シンプルで長く使える道具だからこそ、自分で用途を見つける楽しみを実感できるはずだ。
左:(左から)フェイスブラシNo.21 山羊毛、チークブラシ No.23 馬毛、眉ブラシ 短柄 No.52 馬毛、リップブラシ 黒 丸平筆 コリンスキー
「フェイスブラシ」は戦前から作っていた光学器械用の「レンズ筆」の技術を応用。山羊毛はなめらか、馬毛はしなやかな仕上がりに。コリンスキー(イタチ)は繊細でコシが強いのが特徴。左から、4,000円、2,800円、800円、2,500円
右:白糊刷毛
「糊刷毛」は掛け軸、ふすま、屏風、障子張りなど、広い面積を塗るのに適している。和紙などのしわをのばしたり、糊を薄くのばしたり、気泡を取り除いたりと、多目的に使える昔ながらの手作り。柔らかい山羊毛を使用。4,000円
〈江戸屋〉
大伝馬町一帯は、江戸時代の繁華街で、木綿問屋や繊維問屋が集まっていた。趣のある建物は関東大震災後に再建。
■東京都中央区日本橋大伝馬町2-16
■03-3664-5671
■9:00~17:00 土日祝休
(Hanako1177号掲載/photo : Nao Shimizu text :Akane Watanuki edit : Seika Yajima)
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