丸の内のシンボルといえば。 泊まれる文化財、東京駅舎内〈東京ステーションホテル〉へ。名物の赤レンガ色カクテルも要チェック!
歴史的な建造物が点在する、東京の中心「丸の内」。時代を超えて愛される建物の歩みをたどると、そこに息づくスピリットと街との関わりが見えてきます。今回は、5年の歳月を経て生まれかわった街のシンボル〈東京ステーションホテル〉をご紹介します。
5年の歳月を経て生まれかわった街のシンボル。
東京駅開業の翌年、1915年に誕生した〈東京ステーションホテル〉。名前が示す通り、東京駅舎内にあるこちらのホテルは、創業から100年あまり、東京駅とともに歴史を刻んできた。
南北にドームを擁する全長335m、3階建ての赤レンガ造りの壮麗な建物は、「東洋一」と称えられたが、第二次世界大戦の空襲により3階部分と屋根などを焼失。ホテルは休業を余儀なくされた。戦後、駅舎は2階建ての八角屋根の建物に復旧され、ほどなくしてホテルも営業を再開。以来、多くのゲストを日々迎え入れ、江戸川乱歩や松本清張ら文豪たちにも愛されてきた。
2003年、東京駅丸の内駅舎は国の重要文化財に。駅舎の保存・復原工事のために、ホテルは一時休館し、駅舎がかつての姿を取り戻した2012年、再開業した。
ホテルの広報によると、丸の内駅舎は高層ビル化する計画もあったが、反対の市民運動が後押しとなり、保存が決定。駅舎の工事は保存した部分と新しく復原する部分を調和させることに最も心を砕いたそう。史料をもとに調査と検証を緻密に行い、当時の素材や工法をできる限り使って、約5年をかけ、のべ78万人の職人の手仕事で完成させた。
クラシカルな客室でくつろぐ。
時間と情熱を注ぎ、人々の思いをのせて甦ったこの文化遺産に宿泊できるのは、〈東京ステーションホテル〉だけの特権だ。内装はこれまでの重厚なものから、クラシックなヨーロピアン調に改装し、端正な駅舎との調和をはかった。
赤レンガ色のカクテルを堪能。
常連の多いバーやレストランも、一部のメニューを引き継いで新装。
そのひとつ、〈BAR Oak〉は1980年代後半に2店舗目のバーとしてオープンした。
「当時は丸の内にお酒を飲める店がまだ少なく、バーを望むお客様の声に応える形で、客室を改装して〈オーク〉を作りました。近隣のビジネスマンを中心ににぎわい、その頃のお客様はいまも変わらず来てくださっています」(広報担当)
丸の内のシンボルを使い続けて未来につなぐ。
東京駅とホテルが開業した頃、丸の内は周囲に何もない原っぱのような土地だったという。その後、東京駅の発展とともに日本の中枢を担うビジネス街になり、再開発事業によって美術館やブランドショップが立ち並ぶ多面的な街に。その変遷を間近で見つめ、〈東京ステーションホテル〉は、街や人々に寄り添ってきた。「東京駅舎を後世に伝える」。ホテルスタッフはその使命を胸に東京駅を文化財として守り、使い続けて、次の100年につないでいく。
〈東京ステーションホテル〉
駅舎を設計したのは「日本近代建築の父」辰野金吾。リニューアルで客室が58室から150室に増えた。
■東京都千代田区丸の内1-9-1
■03-5220-1111
■営業時間は各店舗により異なる 無休
(Hanako1177号掲載/photo : Megumi Uchiyama text : Asami Kumasaka)
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