大銀座老舗手帖 和服・着物に合う香水も。【銀座】香文化を伝えるお香の老舗〈香十〉で買えるおすすめアイテム。
戦前より、東京随一の高級繁華街として国外でも名高い、大銀座エリア。近年は新しい商業施設が増え、街の景色や訪れる人にも変化がありますが、昔から愛され続けている老舗が、いまもなお、数多く軒を連ねています。今回は、100年以上続く老舗〈香十〉が守り続ける伝統と新しい挑戦を感じさせる魅力的な品をご紹介。
香りに耳を澄ませて、古の人々の思いを心で聞き取る。
440年以上の歴史を持つ〈香十〉は、織田信長が天下を取った天正年間に京都で生まれた。御所御用を務めた初代は、香を扱う御道具師として香十と名乗り、代々襲名されてきた。日本における香りの文化は古く、仏教とともに伝来したといわれている。それが香木と呼ばれる、よい芳香のする木片。平安時代になると、自己表現や身分の証として貴族が香りをたしなむように。鎌倉時代には茶と香が結びつき、のちに香道として発展。江戸時代には豪商や町民の間にも香が普及し、ようやく暮らしの中で身近なものになる。〈香十〉もやがて京都から東京・銀座へ拠点を移し、伝統を守りながら香文化の裾野を広げ、現代に至っている。
〈香十〉の長い歴史を語る上で欠かせないのが、江戸時代に多くの銘香を生み出した、第8代の高井十右衛門だ。〝香の名人〟とされた十右衛門は、天皇や茶道各流派の家元に納めた数々の香のレシピを書き残している。そんな十右衛門の技術と精神性に触れることができるのが、銘香を再現した線香「高井 十右衛門 1575/JUEMON NO.01」。一方、多彩な香りがあふれる今の時代に、〈香十〉らしいアイテムといえるのが、和装に合う香りをイメージした「オードトワレ ジュエモン」シリーズ。こうした商品の販売とともに、現代の香具師として香道体験やワークショップなどを開催している。
香りを鑑賞する芸道である香道において、香りは「嗅ぐ」ではなく「聞く」と表現する。そこには香が伝えるものを心で聞き取るという意味が込められている。心を鎮める香りを聞くひとときは、慌ただしい現代にこそ必要なのかもしれない。
右・変わらないもの 高井 十右衛門 1575/JUEMON N O.01
十右衛門が遺した、当時の主流だった直接火をつけない練香の香りを線香で再現。お香の伝統的な原料である、沈香、白檀、甘松、貝香など自然素材を配合。重厚感のなかに優しさや甘さを感じさせる、落ち着きのある香り。2,500円
左・新しいもの JUEMON 透(左)、JUEMON 花(右)
和服や着物をイメージした、オリジナルのオードトワレ。「花」は清々しい沈丁花を彷彿とさせるフローラル・グリーンの香り。爽やかなミント・アンバーの「透」は、ペパーミントやスパイシーなクローブの芳香が特徴的。各12,000円
〈香十〉
店内の「KOJU RAKU」では調香を体験できる。3階の本格香間ではワークサロン「座 香十」を開催(ともに要予約)。
〈香十 銀座 本店〉
■東京都中央区銀座4-9-1 B1
■03-6264-2450
■11:00~19:00 無休
(Hanako1177号掲載/photo : Nao Shimizu text :Akane Watanuki edit : Seika Yajima)
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