娘から父へ…おいしい日本酒おしえます! 『伊藤家の晩酌』~第三夜1本目/香りの余韻に引き込まれる「白龍 特別純米」~
弱冠22歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?第三夜の1本目は、若い女性杜氏が醸したお酒で乾杯。
(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)
第三夜の1本目は、“芳醇”という言葉がぴったりな「白龍 特別純米」から。
娘・ひいな(以下、ひいな)「今回の4本は、若い杜氏が作る日本酒4本を紹介するよ」
父・徹也(以下、テツヤ)「お、いいね。若杜氏って何歳ぐらいの?」
ひいな「いい質問だね。正直なところその定義をどうしようか迷ったの。酒蔵の人と話をしていると40歳ぐらいで若手っていわれるから」
テツヤ「政治家と同じだね。俺と同じ50代の杜氏って中堅ぐらいなのかな?」
ひいな「そうだね、45歳の杜氏でまだ若手っていわれるから。今回は、20〜30代で、これからの時代を担う若手を選んでみたよ」
テツヤ「おぉ、そりゃ若いね。ひいなと同世代だ」
ひいな「1本目は『白龍』っていう福井のお酒」
テツヤ「お! 特別純米か。これは『何かが』特別なんだよな」
ひいな「そうそう。この『白龍』の場合、何が特別なんだと思う?」
テツヤ「雪解け水で仕込んでるから?」
ひいな「私は、山田錦100%だからだと思う。福井県の永平寺町っていうところに酒蔵があるんだけど、雪解け水でお米から作っているんだって。しかもね、この杜氏さんすごいんだよ! 2015年に経済学部を卒業して酒蔵を継いだの」
テツヤ「え? 醸造学科とかじゃないんだ」
ひいな「そう。いま、27歳の吉田真子さん。お父さんが病気になって、杜氏の方も高齢で、急遽、酒蔵を継がないといけなくなったみたい」
テツヤ「なるほど、そりゃ大変だ」
ひいな「『白龍』を飲んでみたらとてもおいしくて。さらに話を聞いてみたら、お酒と真剣に向き合ってる若手の女性杜氏で、応援したくなった」
テツヤ「世代が近いと感覚もきっと似ているところもあるだろうね」
ひいな「では、飲みますか」
テツヤ&ひいな「乾杯〜!」
テツヤ「おぉ〜。これは淡麗、甘口だね」
ひいな「うん、合ってる」
テツヤ「俺、日本酒わかってきちゃったな(笑)。香りがいいね」
ひいな「これはね、イチジクみたいな香りがするなと思って」
テツヤ「この香りをイチジクって思うんだ。日本酒独特の香りだね」
ひいな「自分の好みがわかってくると楽しいよね」
テツヤ「うまいなぁ〜」
「白龍」に合わせるおつまみは……なんとパイナップル!?
テツヤ「腹減ってきたな。このお酒には何を合わせるんだっけ?」
ひいな「コリドー街にある〈初代 おかわりや〉っていう大好きなお店があるんだけど、『白龍』を持ち込んで相談したの。おつまみは何が合うと思いますか?って。それでこれだ!って」
テツヤ「え!? パイナップルなの? 日本酒に?」
ひいな「絶対合うから! 試してみて」
テツヤ「実はさ、フルーツの中で3本の指に入るくらいパイナップルが好きなんだよね」
ひいな「えーー!? そんなに好きだなんて知らなかった。あとの2つが気になる(笑)」
テツヤ「桃と梨」
ひいな「パイナップル以外は王道だね(笑)」
テツヤ「酢豚には絶対パイナップルだね」
ひいな「22年生きてきて、今日初めて聞いたよ」
テツヤ「言ったことなかったかな(笑)」
テツヤ「パイナップルお箸で食べるのが、なんか変な感じだけど(笑)」
ひいな「キンキンに冷えた『白龍』を、パイナップルを飲み込んだ直後に飲んでみて」
テツヤ「おぉ!? 合う、合う!」
ひいな「パイナップルの甘い酸の余韻と、『白龍』を飲んだ時の入り口が一緒だから、つながる感じしない?」
テツヤ「ひいな、うまいこと言うね」
ひいな「パイナップルがなくなる瞬間に流し込むといい感じ」
テツヤ「この組み合わせ、蔵の方もびっくりなんじゃない?」
ひいな「蔵の近くに川が流れてて、川魚に合いますよって蔵の方がおっしゃってたから、魚介を合わせようかと迷ってたんだよね」
テツヤ「「おととい千葉のロケで使った、でっかいはまぐりあるけど?」
ひいな「焼いちゃう?」
テツヤ「焼こう、焼こう」
テツヤ「うまそう!」
ひいな「いい香り! いただきます!」
テツヤ「はまぐり、うんめ〜!」
ひいな「本当においしいね」
テツヤ「うん、最高。このお酒と合わせると、さらにおいしいね」
ひいな「究極の食中酒を目指してる蔵として、その言葉はすごくうれしいんじゃないかな」
雪解け水で育った山田錦100%から生まれた日本酒は、おいしくないわけがない!
テツヤ「香りがいい日本酒ってさ、なんて言うの?」
ひいな「芳醇とか、香りが高いとか。香りと一口に言っても、いろんな香りがあって。お米由来なのか、酵母なのか」
テツヤ「このお酒が何の香りなの?」
ひいな「お米かな」
テツヤ「香りがいいんだよな〜」
ひいな「このお酒はね、山田錦100%なんだけど、この蔵が廃業寸前の時に『YK35』に目をつけたんだって。(ライター注:山田錦+きょうかい9号という酵母+35%の精米歩合であれば、良い酒が造れると一般的にいわれた)。蔵のある福井県は、山田錦がよく作られる兵庫県と違ってとても寒いから、山田錦が育ちにくい土地でとても苦労したらしくて。だから、せっかく採れた山田錦なんだから35%まで磨いちゃうのがもったいないからと60%くらいでお米の旨みを味わってもらおうという酒造りをしているの」
テツヤ「米を大切にしてるんだね」
ひいな「お酒造りする人が、田んぼの面倒も見てるみたい」
テツヤ「福井の大自然が生んだ米と水。そりゃうまいよね。間違いない」
ひいな「福井で捕れた魚とも合うんだろうねぇ」
テツヤ「絶対合うよねぇ。福井に行かないとそのおいしさはわからないよねぇ」
ひいな「蔵の人もすごくいい人で、杜氏さんとももう一回お話ししたいんだよね」
テツヤ「これから、魚も日本酒もうまい季節だもんなぁ。パイナップル持って遊びに行くか」
ひいな「いいね、それ(笑)。そんな手土産なかなかないよね」
テツヤ「びっくりさせちゃおう(笑)」
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(次回は9月22日更新予定です)