働く女性のための転機の準備 特別編「国際女性デーを学ぶ」 快適に働く鍵は、生理とうまく付き合うこと。

HEALTH 2023.03.07

今は、キャリアアップも母になることも諦めずに自分の望む生き方ができる時代。そこには、医療の進化による選択肢の広がりがありました。2月28日発売1218号「沖縄特集」よりお届け。

心地よく生きるために、自分でカラダの意思決定を。

約20年前は、婦人科の相談のメインといえば生理痛だった。ところが今では、生理痛とPMS(月経前症候群)が半々くらいの割合に変化。
「わたしはこれをとてもポジティブなことだと捉えています。というのは、女性が社会で活躍するようになって、PMSに振り回されている自分を自覚し、PMSによる働きづらさや生きづらさを改善すればもっといいパフォーマンスができるはずだ、と考える方が多くなったということだから。昔は、不調を感じても“仕方のないもの”として諦めていたわけです。それが、諦めなくてもいいと気づき、働きやすくなるための自発的アクションとして婦人科で治療を受ける、というところまで女性の意識が変わってきました」
仕事のパフォーマンスを上げるため、ピルによる月経調節を選択する人も少しずつ増えているとか。「仕事の大切な予定を入れる時、生理痛やPMSの時期を避けるのはもちろん、“自分がいちばん動けるのは生理周期の中でここだ”と考えて月経調節をする方もいらっしゃいます。これは、アスリートの方々がよくやられている手法でもあります。もちろんすべての方におすすめというわけではありません。でも、完全に受け身である必要はなく、“自分のカラダ、生理との付き合い方には選択肢がある”ということを知っておいて損はないと思います」
実は日本は他の先進国に比べて、子宮頸がん検診の受診率がダントツで低いという問題を抱えている。「婦人科は内診があるので、どうしてもハードルが高いのでしょう。できれば女性医師がいいとか、産科のないところがいいとか、いろいろ希望はあると思います。地方では都会のように病院の数や種類が多くないため、なかなか自分に合う病院を見つけづらいという問題もあります。ちなみに男性医師にも良さがあって、痛みの共通体験がないからこそ優しく気遣ってくれる、というパターンもあるので、絶対に女性医師希望という方でなければおすすめです」
ところで子宮頸がん発症のピークは30代後半。これは、出産を迎える方が多い世代でもある。
「そろそろ子どもを産みたいと思った時に、実はがんになっていて子宮を摘出…、という最悪のシナリオだってありえます。子宮頸がんは、母親にならせない病気という意味で、海外ではマザーキラーという通称もあるほど。病気がかなり進行しないと不正出血、腹痛などの症状が出てこないので、どうしても発見が遅れがちなんですね。だから症状がない状態だとしても、最低1年に1回は婦人科を受診して早期発見のチャンスを逃さないでほしいです
近年のフェムテックの進化はめざましく、その恩恵は女性のライフスタイル全般にいきわたる。
「生理日管理アプリなどは、自分のカラダの変化に気づくきっかけを得られていいですし、日本の性教育ではカバーしきれなかった性やデリケートゾーンにまつわる正しい知識が少しずつ浸透しているのも感じます。わたしが仕事を頑張る女性に婦人科医として提案したいフェムテックのひとつが卵子凍結です。若くて元気な卵子を保存しておくことで、キャリアと妊娠のタイムリミットに悩まず、柔軟に選択できる可能性が広がります。今は、生き方も働き方も、自分の意思である程度は決められる時代。だからこそ、何でも相談できるかかりつけ医を持つこと、フェムテックをうまく活用することで、いろんな選択肢の中から自分らしい生き方、働き方を見極めていけるはずです。それが、女性が自分らしく、いきいきと輝く社会につながるのだと思います」

PMSの「なんとなく辛い......」をそのままにしないで改善!

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PMSとは、生理の3〜10日くらい前に始まる精神的(情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害、自律神経症状としてののぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感など)、身体的(腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなど)な不調のこと。症状の中身、症状を感じるスパンは個人差が大きく、日常生活に差し支えるほど重い場合も。辛い症状に悩まされている人は、医療機関を受診することも考えてみましょう。個々の症状や体質に合わせた治療を受けることができます。

今さら聞けない婦人科のあれこれ

illustration:SANDER STUDIO text:Saori Tsuchiya

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