たまプラマダム御用達。 新たなパン激戦区、誕生?【たまプラーザ】エリアは美味しいパン屋さん巡りにぴったりな街。
パン戦争と呼びたくなるほど、名店が火花を散らす街、たまプラーザ。その日の気分で使い分けや、欲張り気分のときはパン屋はしごも。大注目のたまプラーザエリアのパン屋さん5軒をピックアップしました。
1.徳永淳さんが生地を仕込み、妻・久美子さんが味を決める。〈ベッカライ 徳多朗〉
カレーパン、ミルククリーム…。売り場は名物パンが目白押し。なぜそうなのか、厨房に入ってわかった。手作りゆえのおいしさ。大きな銅鍋にデニッシュ用のリンゴが煮えていて、煮汁の、なんとも美しいピンク色。「皮まで使うのがコツ」と、久美子さんは教えてくれた。本当に料理が好きな人。元気いっぱいに厨房を走りまわる。「おいしいものを食べてもらいたくて。お客さんの顔を思い浮かべて作ります」。
食パン、バゲットは取り置き可。カフェスペースあり。
2.ほしいものが絶対あるパンの百貨店。〈PAIN STAGE prologue〉
なぜパンステージなのか。矢沢永吉マニアの山本敬三シェフいわく「パン屋っていうのはさ、パン職人の生き様を見せるステージなんだよ」。熱き思いは、はっきりと主張してくる小麦の味わいからも伝わってくる。
それはルヴァンリキッド(自家製酵母)を全種類に使用し、長い発酵も厭わずきちんと取る、丁寧な仕事から生まれているのだ。取り置き可。イートインスペース(テラス)、駐車スペースあり。
3.ゴールデンブラウンの美しいパン。日本のパンの最良の部分がこの店にある。〈La Belle Colline〉
澤田利明シェフ。多くのパン職人からリスペクトを受ける、隠れた実力者。秘密の一端は黄金色の焼き色にある。焼き込んで皮の強い味を引き出すという一般的な考えに対し、澤田シェフはむしろパンのソフトさや、素材の微妙な味わいを際立たせようと努める。クロワッサンの軽やかな香ばしさ。表面はカリカリとバターで揚げたようで、なめらかな中身からバターのピュアな甘さがじわーっとやってくる。油っぽさはみじんもなく、さわやか。
カレンズとゴルゴンゾーラのサンドイッチ。チーズの強烈な塩気と香りに対し、カレンズ、クルミ、そしてハチミツの甘さで、完全なバランスを作り上げる。カレンズ(山ぶどう)の粒をつぶさずに焼くという高度なテクニックも活きている。カフェで出されるランチメニューの味つけも実に上品。たまプラマダム御用達の味である。
取り置き可。カフェメニューもあり。
4.千葉で行列ができていた人気店を閉め、縁もゆかりもない町田でカフェを開店。〈sens et sens〉
ちょっとした立ち話も「菅井語録」になる。なぜこの店はこんなに静かなのか?「無になって食べるという行為を見つめ直してもらいたくて」。無が好き?「自分の奥底から湧いてきた感情を大事にしています。まっさらなところから、ぱっと生まれてきたものから、パンを作っています」。
パルマ産生ハムとグリュイエールチーズのサンドイッチはバターと生ハムとチーズが口の中で同時に溶ける。3つの味わいは交互に出入りし、やがて絶品リュスティックの味わいとともに、ひとつの甘さへ高まっていく。なんとめくるめく体験か。「バターは塗るのではなく薄く削いだものを置く(最初から溶けているのではなく)。舌にのせ、時を感じて溶けたほうがおいしい」。孤高のパン職人は時間さえパンの調味料にする。この瞬間の、このおいしさを味わう。そのためにパン屋を捨て、カフェを開いた。
現在は予約制の日が多いため、HPで確認を。予約とメニューの案内はHP内のブログから。テイクアウトのみの利用不可。
5.常に売り切れのイングリッシュマフィンが代名詞。〈CICOUTÉ BAKERY〉
開店時に列を作る団地の人々。隣には「手打ちそば」ののぼりがはためく。その光景を見て感動した。おしゃれなハード系の店というイメージのあったチクテが、団地に根づいて、地域貢献している。「スーパーが遠いので、お年寄りの方が買い物に困られていた。お昼にパンを1個買われる方もいます」と北村千里さん。
食べても感動。自家製酵母のパンは、酸味も余計な香りもなく、すいすい喉を通る。みずみずしく、もちもち、まっすぐな麦の味。ハード系でも食べやすい。
コンクリートの古い壁にイラストレーター秋山花さんの絵。半透明の波々型の塩ビのファサード、廃校から救い出した木材で作った棚。店員さんの笑顔も含め、すべてが愛おしい。
取り置き可(前日10:30までに要電話)。通販は月に1度オープンするオンラインストアにて受付。
(2017年8月1日Hanako food掲載/photo:Shin-ichi Yokoyama,Tomo Ishiwatari)