パン好きに届け。 わざわざ行きたいベーカリー5軒。東京近郊エリアの注目ベーカリー、美味しさのこだわりとは?
数あるパン屋の中でも、行列ができるお店がある。その理由は、並んででも食べたいと思わせる味にあり。実際に編集部が調査して、その理由を大解剖。行列の先に待っているパンの秘密に迫ります。
1.行列の先に待つ、もちもちの「角食パン」。〈AOSAN〉
仙川駅から徒歩約4分の場所にある〈AOSAN〉。開店1時間前から少しずつお店の前に人が並び始め、30分前にはざっと数えて20人超え! 調べたところ、並んでいる8割の人のお目当ては「角食パン」250円。早いときには15分で売り切れてしまうという食パンなのだ。
公園の真向かいにあり、学校にあるような大きな丸い時計が目印。
中央に置かれた傾斜がついた木の台に、子どもにも人気のかぼちゃパンやスコーンなどなど、その日のラインナップが集合する。
カンパーニュは自家製酵母を使って作られる。プレーンと、くるみ入りのノワカンパーニュ、ヘーゼルナッツのカンパーニュの3種類。
2.朝からのお目当ては、パリを感じられる贅沢な朝食。〈カタネベーカリー〉
2002年にオープンした〈カタネベーカリー〉は、駅から徒歩10分ちょっとの住宅街の中。にもかかわらず、朝から閉店まで人が途切れることなく訪れるお店だ。また、近所の飲食店にもパンを卸していたりと、食のプロも認めるパンを作り続けている。ここのオーナーシェフを務めるのが片根大輔さん。毎日でも食べてもらいたくなるパンを目指し、腕を磨いてきた。スペシャリテを尋ねると、「絞れないなぁ」と悩む。それほど、すべてのパンへの愛情が深い。
クロワッサンやバゲットなど、お店で人気のパンを味わえる「パリの朝食セット」。
右から時計回りに、キッシュ230円、バゲットフランベ220円、十勝あんぱん120円(各税
込)。
3.充電期間を経て、おいしさがパワーアップ!〈la Boulangerie Naif〉
惜しまれながら一度閉店した〈ナイーフ〉。この店名を聞いてピンときた人も多いはず。中目黒から始まり、代官山で大盛況だったお店が閉店したのは2007年のこと。店主の谷上正幸さんは、店を閉めた後も様々な場所でパンを焼き続け、昨年、満を持して9年ぶりに実店舗を構えた。「昔はパンはこうじゃなきゃいけないという思いが強くて」と谷上さん。それが変わったきっかけは、数年前に国産小麦に出合ったこと。いまは、日本中から厳選した国産小麦を使い、最初から最後までひとりで作っている。それを支えるのが、奥様のフミエさん。二人が新拠点に選んだのは、世田谷の若林。「とにかく地域の方が温かくて」と夫婦でこの場所が好きになり、地名をつけた若林ブレッドも登場。18時間発酵させ、粉の旨みと甘みを引き出したこの食パンは早くも看板商品になっている。
バターとコンデンスミルクで作るクリームを、歯切れのよいパンでサンドした、ミルクフランス200円。以前のお店からの人気者で、現在も同じレシピで作られる。この懐かしい味を目指して訪れるかつての常連客も。
あんパンは、白餡、こし餡、粒餡の3種類用意。各150円(各税込)。
4.念願の地元にオープン。毎日食べたい、日々のパン。〈央製パン堂〉
のどかな住宅街に現れる真っ白な一軒家。この1階にベーカリーを作ったのが梅澤夫妻。元々、〈浅野屋〉でパン職人として働いていたご主人の和矢さんと、販売をしていた奥様の正恵さん。念願のオープンは2015年の5月。「この辺はパン屋が少ない地域で。地元の人に愛されるパン屋にしたいんです」と、地元の流山でお店を構えることが昔からの夢だったというご主人。その言葉通り、開店1年足らずで住民が足しげく通うお店へと成長。また、週末には県外からのお客も多いそう。
カフェのような自然光がたっぷり入る店内。壁は自分たちで仕上げたりと細部までこだわりが。
店内右側に厨房も見渡せる棚が。食パンやバゲット、カンパーニュなどの食事パンが並ぶ。
ゴルゴンゾーラチーズをカンパーニュの生地で巻き込み焼き上げた「ゴルゴンゾーラはちみつ」280円(税込)。仕上げにかけるハチミツとチーズが相性ぴったりの大人に人気のパン。
5.はりねずみと猫、心ときめく看板パン目指して。〈にちりん製パン〉
「地元の人の日常使いのパン屋でありたい」と話す、店主の津野大吾郎さん。鎌倉の〈キビヤベーカリー〉で修業した後、奥様のこずえさんの応援もあって北鎌倉で小さなお店を始めた。元酒屋だった店舗を数軒先の設計事務所にお願いして改装。そこに古道具のショーケースやテーブルがしっくりはまる。
人気商品の動物パンは「はりねずみ」と「猫」の2 種各230円。
津野さんのこだわりは、とにかく質のいい素材を使うこと。「パン屋の味は技術が半分、後は生産者さんが作る小麦です」。国産の小麦と北米のオーガニック強力粉を使い分け、地元の湘南小麦も取り入れている。特に全粒粉は厨房で挽き、フスマを商品に使うことも。またオーガニックレーズンで作る自家製酵母で発酵を促し……と、とにかく手間を惜しまない。それが、小麦の味が生きたパン生地に繋がっている。
(2017年8月1日ムックHanakoFOOD掲載/photo:Kaoru Yamada text & edit:Kisae Nomura)