枝優花さん、今月のTODO教えてください!『鈴木敏夫とジブリ展』や『異人たち』を観に行く、花見のリベンジなど CULTURE 2024.04.10

気になる展示やライブイベント、映画や演劇を観にいったり、おうちでゆったり読書をしたり……カルチャーからレジャーや美容まで、やりたいことが盛りだくさん。この連載ではゲストのみなさんのやりたいことや予定をくわしく伺います。第1回目は、映画監督 / 脚本家 / 写真家の枝優花さん。「4月はいつもよりカルチャーに触れて、自分のプライベートの時間を濃くしていきたい」という枝さんの4月のTO DOリストをご紹介。

INDEX

映画『異人たち』を観にいく

2017年に製作された映画『荒野にて』のアンドリュー・ヘイ監督の新作です。『荒野にて』は成熟する前の多感な時期を迎えた15歳の少年と馬の話で、言語を超えたものを撮っていたからこそ、言葉でごまかせないもの、何を美しいと思っているのかという監督の本質がかなり投影されていると感じました。

あと、私は悲しいシーンを撮影する時、泣き顔を直接撮るのではなく、遠くから撮ったり、逆光で顔があまり見えないようにしたりするんです。人の悲しみはその人のものでしかないから、わかりきることはできない。一方で寄り添いたい気持ちはあるけれど、そこに自分が踏み込んでいくことはできないなと思うんですよね。だから、そっと遠くから見守るように撮影したい。アンドリュー・ヘイ監督は、そういった人と感情との距離感の捉え方や感覚が、自分とすごく近い気がして。その眼差しがすごく信頼できますし、「この監督が撮るものを追いかけたい」と思っているんです。前情報はあまり入れずに観に行こうと思っていて、『荒野にて』以降の7年の間に監督が何を感じて、何を新たに撮りたいと思ったのかを見ることができるのをすごく楽しみにしています。

『異人たち』

2024年4月19日(金)公開
キャスト:アンドリュー・スコット, ポール・メスカル, ジェイミー・ベル, クレア・フォイ
監督:アンドリュー・ヘイ
原作:「異人たちとの夏」山田太一著(新潮社刊)
【R15+】15歳未満の方は、ご覧になれません。

買いためていた小説たちを読み切る

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映画と本と音楽に関してはお金を厭わないと決めていて、気になった本は買うようにしています。でも、仕事に支障が出るくらい本の世界に入り込みすぎてしまって切り替えができなくなるので、がっつり1冊の本を読むのは苦手なんです。

今は現場がなく、脚本を執筆していて、自分の内面に潜ったり向き合ったりする時期にしたいと思っていて。今なら本の世界に入り込めるし、何かヒントがもらえるんじゃないかなと。そんななかタイトルに惹かれて買ったのが、寺山修司さんの作品集『さみしいときは青青青青青青青 ─少年少女のための作品集』(筑摩書房)。寺山修司さんの作品をすごく読んできたわけではないのですが、気になる言葉や感覚が散りばめられていたのが気になって読み始めました。

あと、ずっと家に置いてあって読んでいなかったカフカの『審判』(白水社)と、オーストラリアの作家ショーン・プレスコットのデビュー作『穴の町』(早川書房)を読もうと思っています。ありえないことが起こって、そこから巻き起こる不条理を描いている作品が好きで、そういう本を探していた時期に出会った本たちです。本の世界に入り込んでも大丈夫な時期だからこそ読める作品だなと思います。

『鈴木敏夫とジブリ展』に行く

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去年、『君たちはどう生きるか』が公開された時に、宮崎駿さんが気になってジブリのドキュメンタリーを観たんですよ。そしたら宮崎駿さん以上に「鈴木敏夫さんってなんなんだろう?」という思いが湧いてきたんです。宮崎さんが突き抜けている人だというのは有名だけど、作家の狂気に寄り添い続ける鈴木さんってどんな人なんだろうって。

ドキュメンタリーを観ていても、『もののけ姫』をどうやって世に広めていくかという切り口の作り方や、前例にないことをさも絶対成功しますよっていう口ぶりで話し、権力のある人たちに対して啖呵を切っていく姿が凄まじいなと思ったんです。それでちゃんと結果を出していく怖さもある。高畑勲さんとか宮崎駿さんみたいな人につくということは、1年に10本作品を作るんじゃなくて、10年にできるかもわからない傑作を1本作るみたいな仕事になるわけじゃないですか。その間に自分の人生もどんどん動いていくのに、じっと待ち続ける。この人は何を信じてここまでできるんだろうと思うんですよ。だから、『鈴木敏夫とジブリ展』というフォーカスの当たり方にすごく惹かれて、観にいきたいなと思いました。

『鈴木敏夫とジブリ展』

会期:2024年3月20日(水祝)~6月18日(火)
休館日:4月1日(月)、5月13日(月)、6月3日(月)
開催時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
※ただし、4月27日(土)~5月6日(月休)は10:00~20:00(入館は19:30まで)
会場:横須賀美術館(横須賀市鴨居4-1)
観覧料:一般 2,000円(税込)

友達と寿司会を開催する

仲のいい友人の一人が、平日は企業で働きながら、土日は寿司屋で修行をして、「スシーランス」というフリーの寿司屋をやっているんです。その子が仕込みから何からしてくれて、友人たちで家に集まって寿司会をしています。半年ぶりに開催するので、今からすごく楽しみなんです。
お寿司は前から好きなんですけど、ちょっともやつく部分もあって。たとえば、回転寿司はみんなでいるけれど、それぞれ食べたいものを食べて個の時間だなという感じがするし、会食でいいお寿司屋さんに行っても緊張してしまう。そんなもやつきを解消して、みんなで気軽においしいお寿司をわいわい食べたいなという思いを叶えてくれるのが寿司会なんです。
初めて開催した時は、食べた魚を習字セットで書いていってお品書きを作ったんです。食べて、会話して、調べて、書く。そうすると食の体験がすごく記憶に残るんですよね。スシーランスの子がそのお品書きをTシャツにまでしてくれました。ハードルを感じずに、おいしいお寿司を楽しく食べられるって、日本なのに意外とない新しいカルチャーだなと思っています。

花見をする

3、4年前に映画の製作メンバーで、吉祥寺で花見をしたんですけど、すごい暴風で5分で断念したんですよ。シートを敷いてお菓子とかいろいろ広げたんですけど、突風が吹いて全部倒れて砂まみれになって……。みんなすぐに「解散!」という感じになって、飲み屋に直行したんです。だから、花を見てないんですよね(笑)。
その時にいた何人かで「今年、リベンジしようよ」っていう話が上がっているんです。春って気づくとばたばた終わって、GWに入ったと思ったら夏が来て……という感じであっという間に過ぎてしまうじゃないですか。新年度に気持ちが持っていかれる前に、みんなで集まれる口実になるのが花見な気もして。ただでさえ桜が咲いている期間が短いですし、みんなの予定も揃えないといけないし、主催者の気合いがものを言うと思いますが、とにかくあのひどい吉祥寺の花見の記憶を更新したいです(笑)。

text_Aiko Iijima illustration_Wasabi Hinata edit_Kei Kawaura

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