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2021.10.06

第10回 夏子の大冒険 〜ちいさな美術館をめぐる旅〜 染めもの体験ができる博物館へ。 『時を忘れる』編

ちいさな美物館を巡って、作品から思いを馳せるこちらの連載。記念すべき第10回目の舞台は〈東京染めものがたり博物館〉。江戸時代から続く「小紋(こもん)染め」を現代に継承する工房に併設する博物館で、袱紗(ふくさ)の染めものを体験してきました。

染め+ものがたり=?

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いつものメンバーと「来月はどこに行こうか」と話し合っている中、候補として挙がったのがこの博物館だったのですが、白状します。名前を聞いた瞬間、私は「怪しい!」と思ってしまいました。だって、“染めもの” と “ものがたり” をかけているなんて、なんだか胡散いではありませんか。それに、検索しても公式のWEBサイトは見つからず、ヒットするのはうす暗い工房のお写真ばかり。んー、やっぱり怪しい。しかし、誰かが見つけた「体験もできます」の一文に、そんな疑心も何処吹く風。当日もるんるん気分で “染めものがたり” へと向かう私なのでした。

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「時を忘れる」

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あぁ、今日も何にもできなかった。と、1日の終わりに思う。読みたい本は手つかずのまま積みあがっていくし、観るべき映画も山ほどある。行きたいお芝居はたくさんあるはずだし、あのチケット取っていない。作ってみたい中東料理があったし、朝は一時間早く起きて英語の勉強をしたかったんだ。「せめてひとつくらい」とは思うのだけど、頭が痛いし眠気に抗えない。きっと明日台風が来るせいだ。あ、連載の締め切り明日じゃん。ダメだ、忘れよう。なにがなんでも洗濯物だけは干さなきゃいけない。そうだ、明日台風だ。

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“24時間じゃ足りない”じゃなくて、“絶対的に24時間の使い方が下手”なことに、時々ひどく落ち込む。移動中のスキマ時間、24時間有効活用のチャンスに、ぼけーっと駅のホームに立っていたら、遠征帰りの部活仲間たちが目に入った。ありえない量の水筒やボールを抱えて、みんなでぶつくさ文句を言いながらエレベーターを探していた(それほどに大荷物だったのだ)。あー、24時間のフル活用だ。移動中まで青春してる。眩しさと情けなさでうっかり泣きそうになった。

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と、こんなモードは年に1回くらい誰にでもやってくるんではないだろうか(あれ、私だけ?)。そんな時の対処法といえば、私の場合、時間を忘れる場所へ行くことだ。それは、喫茶店に行って珈琲を飲むことだったり、海を見てぼーっとすることだったり。まあ、物事は一層はかどらないけど、そんな簡単なことですっきりしたりする。大体、時間なんていうのは、多分だけど人間が決めた只の数字ではないか。一旦忘れてしまえば、万事解決である。

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最近、新たに時間を忘れることができる素敵な場所を見つけた。そこは大都会、東京新宿区の一角に、ひっそりとしかしずっしりと佇んでいる。そこでは、時間を忘れて作業に没頭した。ヘラで糊を伸ばしたり、生地をおがくずにまぶしている時は無心になれたし、熱々の生地を手に行ったり来たりしていると、ここがどこなのか、今が何時代なのかも忘れてしまう。

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そこを出た時の身体は軽くて、人情に触れた心はあったまっていた。ちょっと疲れた人には、ぜひ行ってみてほしい。〈東京染めものがたり博物館〉と言って、東京の新宿区にある昔ながらの工房だ。

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今回訪れたのは…〈東京染めものがたり博物館〉

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染め物体験はもちろんのこと、染め物を教えてくれた浅野進(あさの・すすむ)さん、そして工房の皆さんのお人柄も博物館の大きな魅力です。今回、私が染めたのは、結婚式でご祝儀袋などを包む袱紗(ふくさ)。「型付け」「蒸し」「水洗い」「乾燥」。さまざまな行程を自らの手で仕上げたこの一枚には、すでに溢れんばかりの愛着が。一生大切にしようと決めました。念願の染めもの、楽しかった!

昔ながらの住宅街の中でも、ひと際、ただならぬ風格が。時折、小さな黒猫にも遭遇できます。
昔ながらの住宅街の中でも、ひと際、ただならぬ風格が。時折、小さな黒猫にも遭遇できます。
天井には、見たこともないくらいに大きな板がぎっしり。豆電球のゆらゆらが、いい絵に。
天井には、見たこともないくらいに大きな板がぎっしり。豆電球のゆらゆらが、いい絵に。
昔ながらの住宅街の中でも、ひと際、ただならぬ風格が。時折、小さな黒猫にも遭遇できます。
天井には、見たこともないくらいに大きな板がぎっしり。豆電球のゆらゆらが、いい絵に。

〈東京染めものがたり博物館〉

■東京都新宿区西早稲田3-6-14
■03-3987-0701
■土日祝休
■10:00~12:00、13:00~16:00
■袱紗の工房体験:4,500円(要予約)

photo : Yumi Hosomi

夏子
夏子 / 女優・モデル

「1996年、夏生まれ。美術と文学、猫が好き。夢は『夏子の冒険(三島由紀夫)』で夏子役を演じること。」

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