女性に人気のオリジナルの写経も体験! 街に開かれたお寺作りに励む〈高応寺〉住職・酒井菜法さんの場合~働く女性の転機のカタチ~

WORK&MONEY 2023.01.25PR

埼玉県三郷市にある〈高応寺〉は子ども食堂、ホタルの夕べ、がんカフェ、ヨガ、音楽ライブなどさまざまなイベントが催され、“地域に開かれたお寺”として注目を集めています。ここで住職を務めるのは宗教の領域でもまだ珍しい女性の僧侶、酒井菜法さん。私たちと同じ、一人の女性として悩み、いくつもの選択を重ねながら今があると言います。自分らしい決断をするために仏の教えがどう役立っているのか。新しいお寺のカタチを模索しながら、活動する酒井さんに話を聞きました。
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酒井さんに訪れた転機とは?

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寺院の子どもとして生まれても継承は男性に期待されることがほとんど。女性僧侶はまだ圧倒的に少ない中、酒井さん自身も兄弟ではなく自分がお寺を引き継ぐ立場になるとは思っていなかったそうです。厳しい修行に出て僧侶となり、お寺を継ごうと決意した背景には何があったのでしょうか。

「幼少期を米国で育ったため思春期は海外に憧れ、英語を使って仕事をしたいと思っていましたが、自分のルーツについてきちんと説明もできないまま世界に飛び立つのは違うと思い、幼い頃から身近だった仏教について学ぼうと仏教系大学へ進学しました。それでも気持ちは外に向いたまま(笑)。卒業後は一般企業に入ろうと、インテリアコーディネーターの勉強を活かせる不動産会社に内定をもらいました。が、その時に“このままでは社会に貢献できないのではないか”と思ったんです。生まれ育ったルーツの宗門だったら自分は役に立てるのではないかと感じ、日蓮宗宗務院に務めることになりました」

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事務員として就職し、仕事をしながら僧侶資格を取るための修行へ。そして総合職を目指して働きながら結婚をして、その後妊娠。当時多くの女性職員は結婚を機に辞める人が多い中、酒井さんは女性の後輩たちのレールを敷くよう上司に勧められ、産後数ヶ月で復帰し、仕事をしながら家事・育児を懸命にこなしました。そして、2人目を妊娠。

「育児をしながら身重の体で働くのが難しくなり、仕事は辞めることに。あれから20年経った今は事務員をしながら修行に行く女性職員や産後も働く女性も増え、家庭を持つ男性職員にも働きやすい職場になりつつあります。時代はいい方へ変わったんだなと思います。

仕事を辞めて2人目が生まれて東京で幼稚園を探していた時に、両親から“三郷に帰ってこないか”と声をかけてもらいました。

「両親がそばにいてくれる方が私も心強いですし、夫を説得して戻ることに。ちょうどその頃、女性目線でのお寺作りが評価され、“では、住職は今すぐ菜法に”ということで高応寺を急遽継承することになりました。それがこのお寺を継ぐことになったきっかけです」

“訪れたい”と思ってもらえる場所へ

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父から受け継いだ大事なお寺。自分の子どもたちにも“継承したい”と思ってもらいたいと思うようになったと酒井さん。それがさまざまな活動を始めるきっかけになりました。

「お寺は法事や葬儀で亡くなった人のためだけの空間ではなく、生きている人が救われるべき場所。だから、今生きている人たちの心が癒されることをたくさんできたらと思うんです。
私自身、慣れない子育てに疲弊していた時、お寺で手を合わせているだけですごく救われた。その感動をたくさんの人に伝えたいと思い、育児休暇中に取得した育児アドバイザーの資格を活かして、ベビーマッサージ教室を始めました。すると、たくさんのお母さんたちが来てくれて。それぞれの悩みを打ち明けながら“私だけじゃなかったんだ”という気づきと人のつながりを感じられる人気の企画になりました。お寺は自分の心に向き合い、悩みや苦しみを吐露しやすい。祈りの空間だからこそできる活動があるのだと思いました」

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「ただ、一人では限界があります。救いを必要としているたくさんの人にこの場所を知ってもらうためにも、外の人と積極的に関わっていこうと思いました。訪問看護ステーション主催のがん患者やその家族が語り合う『がんカフェ』を開いたり、ヨガの先生を呼んで『ヨガ教室』を開催したり、震災で心に傷を負った方のために復興支援員と共に企画した『被災者の集い』や、地域包括支援センターと連携した『介護者サロン』、オーガニックや職人に特化した『マルシェ』など。今日、体験してもらった写経もそうです。さまざまな活動を行うことで、これまでつながれなかった人々と出会い、どんどんと輪が広がっていった。そうしてお寺が賑やかになっていくと同時に、子どもたちや夫も積極的にお寺の手伝いをしてくれるようになりました」

心の拠り所があると幸せを感じやすい

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最後に、仏様の教えは常に自分を支えている、と酒井さんが教えてくれました。

「私も日々迷い、悩む一人の人間。壁にぶつかった時、辛く悲しい相談に寄り添う時、心が疲れている時、お経を唱え、静かに手を合わせていると“なんとかなる。絶対に神仏が護ってくださる”という気持ちになります。そういう目に見えない大きいものの力が人には必要だと思うんです。そして、心の拠り所となる場所がたくさんあるといい。“サードプレイス”という言葉がありますが、自宅や勤め先、学校ではないところで人とつながること、居心地がいい場所、元気になれる場所があると悩みが軽くなり、幸せを感じやすくなる。高応寺はそういう場所でありたいし、そう思ってくれる人が一人でも増えたら私も嬉しいです」

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