美しき温泉旅館に、ひとりで浸る。松本〈金宇館〉|まろが行く、ひとりホテルのすゝめ
ひとり時間の楽しみ方を提案するメディア「おひとりさま。」を運営する“まろ”が、ひとりホテルステイならではの魅力を伝える連載。第3回は、長野県松本市にある〈金宇館(かなうかん)〉です。
今回、宿泊するホテルは…長野県松本市〈金宇館〉
第3回目は、長野県松本市にある〈金宇館〉。美ヶ原高原の麓の里山に佇む、わずか9室の小さな温泉旅館です。
“時をつなぐ”小さな温泉旅館の美しさ
「昭和初期に建てられた木造3階建ての宿屋をもう100年残したい」と、2020年4月に本館改修工事と浴室棟新築工事を終えてリニューアルオープン。改修にあたり、時間とともに味わいが増す自然な素材を用いていて、時をつなぐような、昔と今の境目のない素敵な空間に仕上がっています。
夕方あたりに差し込んできた西日は、息をのむ美しさ。はっと息が止まった。何度も言いますが、こういう瞬間を逃さずに、じっくり味わえるのは、やっぱりひとりステイならではだな~と思います。
中でも1番魅了されたのが、本館と別館をつなぐ渡り廊下!階段がめちゃくちゃかっこよくないですか?窓からはお庭が見渡せて、特に用もないのに、ただこの景色を目に焼き付けたくて、何往復もしてしまいました(笑)。
お部屋に向かうとき、木の窓に映る空の景色を見上げることができて、これもたまらなく美しかったです。立ち止まりたくなるポイントが多すぎて、なかなか目的地にたどり着けない。
泊まったお部屋は、本館2階にある「包石」。大きく広がる木枠の窓から、中庭の景色を堪能することができます。別館と浴室棟の瓦屋根ものぞめるので、旅館ならではの情緒を味わえます。
しかも、なんとお茶とお菓子まで用意されているので、こちらを味わいながらお庭を愛でることができるのですよ…優雅すぎる。
お庭に目を凝らしていたら、喫煙所を発見。こんなお庭を間近に眺めながら一服できるなんて。このときばかりはスモーカーになりたくなったのでした。
旅館の風情を感じて…身も心も潤う、温泉とお食事
さあ、待ちに待ったお風呂です。総ヒノキ造りの湯小屋に、露天風呂が2つ(「光の湯」と「影の湯」)と小さな内湯の貸し切り風呂が1つあります。
20時に男女入れ替え制になるということで、夕食前にまずは「光の湯」へ。木造だからこそ、伝統ある宿屋の風情が感じられるのと、何よりこのヒノキの縁で切り取られた十和田石が美しすぎる。今まで入った温泉の中でも、美しさでこんなに心を奪われたのは初めてじゃないかと思うほど、惚れ惚れしてしまいました。あちこちに移動して、いろんな角度からこの光景を“ひとりじめ”しました。
お部屋に帰ると、窓からはこんなにきれいな夕暮れの景色が。実はこれ、部屋に入ってきた虫を外に出そうと思って、ベッド側の障子を開けたら偶然目にした景色(笑)。小窓から、里山の風情をこんなに感じられるとは…。虫くんに感謝!
いよいよ夕飯の時間。美しい旅館の情緒を感じることが主目的だったので、実は夕飯についてあまり調べていなかったのですが、優しい味わいの山菜を美味しくいただけて、歴代の旅館の中で1番おいしかったです。
写真は、うるいとほたるいかを、からしと酢味噌で和えたものと、蕗味噌コロッケ。冬と春の間を感じられる、この時期の山菜はいいですよね。にんにく唐辛子といただく馬刺しも新鮮で、最高に美味しかったな。
締めは、安曇野のそば粉で打った手打ち蕎麦。この締め方、天才すぎませんか。染みわたる美味しさ。最後までシンプルで、信州の恵みそのものが味わえて幸せでした。
幸せ気分に浸りながら、夜の温泉へ。入れ替わった「影の湯」に入りました。照明に照らされることで、湯気や石の削り感がくっきり浮かび上がって、また昼とは違った表情なのがいいなあ。
外に出ると、お庭と別館へ続く渡り廊下も照らされていて素敵でした。湯上りに、しばらくここでぼーっと、旅館の風情をひとりでしみじみと味わいました。幸せだなあ。