ハナコラボSDGsレポート 「語れるもので、日々を豊かに」するために、〈ファクトリエ〉が続ける姿勢とブレない秘訣。/ナチュラルビューティーハンター・シナダユイさん

SUSTAINABLE 2020.11.16

ハナコラボ パートナーの中から、SDGsについて知りたい、学びたいと意欲をもった4人が「ハナコラボSDGsレポーターズ」を発足! 毎週さまざまなコンテンツをレポートします。第9回は、ナチュラルビューティーハンターとして活躍するシナダユイさんが、ファッションブランド〈ファクトリエ〉の代表・山田敏夫さんに話を伺いました。

「内側の熱狂が外に滲み出すというのが一番美しくて。内側次第ですよね。それは組織も一緒で、内側からあたためるということはすごく重要です」。
国内にある”作り手”の工場と”使い手”の私たちを直接つなぐ〈ファクトリエ〉。その代表である山田敏夫さんはひときわ白く、とても丁寧に日々お手入れされているであろうオックスフォードシャツとスニーカー、”JAPAN BLUE"のデニムを履いて現れた。清潔感溢れるその姿から滲み出た、山田さんの”熱狂”とは...?

SDGs 品田さん

〈ファクトリエ〉のこれまで。

ーー2012年10月にスタートした〈ファクトリエ〉さんですが、以前からエシカルな取り組みをされている印象を受けました。私自身は最近になってフィッティングスペースに初めて伺い、直に商品に触れたときの品質の高さに衝撃を受けたことで、今回お話を伺いたいと強く感じました。まずはじめに、〈ファクトリエ〉さんの仕組みを簡単に教えてください。

「お客様も工場もどちらとも幸せになるサイクルが作りたかったので、そういう取り組みを行っています。2つポイントがあって、1つは全ての商品に工場の名前が記されていて、値段は工場が決めること。もう1つはそれをお客様が適正な価格で直接買えることです。
〈ファクトリエ〉というブランドの特徴は「語れるもので日々を豊かに」をミッションとして、それについて語れるか、もしくはお客様が誰かに語りたくなるかということを大切にしています。工場と一緒に商品開発をして、誰かに語りたくなる商品名をつけ、商品ページには誰かに語りたくなる要素を入れる。フィッティングスペースではコンシェルジュが誰かに語れるだけの情報をわかりやすく伝え、お店を出るときには”このアイテムってね…"と、誰かに語りたくなるようにするということ。全部を大切にしています」。

ーー社会貢献をされているイメージが強いのですが、例えば私がベルトを購入した際に同梱されていた工場からの直筆のお手紙に、”1980年代には50%を超えていた国産比率も今は4%を切るという現状”と書かれていましたが、それを解決するために...ということでしょうか?

「社会をよくする方法って色々あるじゃないですか。SDGsでも極端に言えばまだまだできていないことはたくさんありますし、元々やっていたことが”偶然”項目に入っているくらいですよね(笑)、僕ら。いろんな山の登り方と優先順位があって。僕らの優先順位が高い最初の山登りは、地方にあるモノづくりをしているクラフトマンシップをもう一度復興させたいということ。だから僕らは社会をよくするために、まずは語れるものを作ります。工場を助けるとか救うだけだとお客様を置き去りにしている。語れるものを作ってお客様が喜んでくれるから工場はうれしいんですよ」。

ーーいい循環ですね...。立ち上げまでのこと、やはりご自身の生い立ちから受けた影響もありましたか?

「僕は実家が熊本の洋品店だったので店番のお手伝いを当然ながらするじゃないですか、そのときに僕がいちばん学んだのは”あなたから買いたい”って無敵だなって思ったんですよ、母親だったり親父を めがけて来てくださるお客様を見て。それを”作り手(工場)さんから買いたい”、にしたいと思ったんです。
それから大学生になり交換留学で訪れたパリで到着初日にスリにあったために懸命に働くところを探して働けたのがグッチで、当時のパリはまだ僅にアジア人差別的なところが残っていてなかなか表に出られないなか、最後は奇跡的にお店に立つことができました。そこで彼らから工房の技術を大切にするブランドのあり方を学びました。ただそれからすぐに立ち上げたわけではなく、営業や物流で働き、焦りを感じはじめていた頃スマートフォンができたり、LCCが出来てきたり、SNSが浸透したりして"作り手"と"お客様”が繋がれる環境が一気に2011年から2012年に整い始め、今やらなかったらいつやるんだろうというタイミングではじめました」。

ーー今でこそネット通販は当たり前になりましたけど、はじめた当初はまだそこまで浸透していなかったですよね?

「特にインターネットもまだ繋がらない地方にある工場さんにご協力いただくまでが大変でした。不審者扱いされることもありましたし(笑)、最初に提携していただけるところに出会うまで50の工場を周り途中で心が折れそうになることもありました。そこでようやく気づいたのが”俺がやりたくてやっているんだよな、結局。”ということ。謙虚さと素直さが自分に足りないからこそ、力添えをしてくれるのが工場の方達でそれに気づけた瞬間に、スタンスとか立ち位置とか言葉遣いとか全部変わるんですよね。お願いします、になるわけですよ。で、今もそうなんですけど”ありがとう”っていうのは僕らなんです」。

ーー「じぶんごと」になった瞬間ですかね。

「自分がやりたいからやってるっていうことに気づいたのは、やっぱり一番大きくて、それからやっと技術力の高い地元のシャツ工場さんとご一緒することができました」。

SDGs 品田さん

続ける大切さ。

ーーお話を伺っていると、あくまで人との関係性を大切にしている気がします。

「自分が足りないところを棚に上げて工場が動いてくれないことを批判したりするのではなく、自分が足りないことをまず知り、その上で足りない部分を共有して、他の長所でどう補っていただけるか。それは組織にも言えることですね。いまは言語化できていますが、その当時はできていなかった部分。それは別に創業期だからとか資本金が少ないからとか、社員数が少ないからとかではなく、常にそう思えるかですよ」。

ーー常にそう思えるか...。

「うまくいかないときは常に立ち止まって言語化して分解したりして、深く意味を考える時間を大切にしています。自分は何が優先順位が高いのかなどを1回書き出しておくとあまり心が揺れないですし、社員とは”成長シート”というものに書き出して共有するようにしています。続けるってすごく重要じゃないですか。 結局は続くかどうかなので、物事は。続くにはモチベーションが必要で、それには”好きか”が重要で、”好きこそ物の上手なれ”ですので。
その”好き”が”得意か”じゃなくて”好きか”なんです。”得意”ってやはり飽きますし、”好きか”はなぜ好きなのか…幼少期にお母さんから褒められたからでもいいですし、友人が喜んでくれたからでもいいですし。なぜそれが好きなのかを分解して、そのキーワードをあらゆることに入れていくと続きます。エンジンの源なので。それを中心においたらブレないです」。

ーーなるほど、人生勉強になります。だから続けてこれたんですね。

「僕は本当に世の中情報が多いからこそ、お金の話題だったりいろんなもので、妬んだり羨ましがったり、常に自分が持っていかれそうになるんです。でもそれは自分の内面をちゃんと見て、言語化して、自分がどうあると1番気持ちがいいかということを整理していないから、情報が多過ぎてストレスが溜まり続けるんです」。

ーー簡単に比較しやすい、されやすい世の中ですし、そういう状況下で苦しんでいる方も多いかと思います。なるほど、そのようにして思考の整理をされているのですね。

「他者比較は多いですし、辛い部分ではありますよね。ある意味捨てることもたくさんありますし、他の流行りの言葉に惑わされない強さは内側から作っていくしかないんです」。

ーー(同い年なのですが…)高尚なお考えですね。

「コロナ禍でいうと、工場にレビューではなくメッセージが送れる機能を作ったんです。そしたら、さまざまな不安を抱えながらも医療ガウンやマスクを休まずに生産している工場に、応援メッセージが数百件寄せられて。工場の従業員さんたちがそれを掲示板に貼り付けてたくさんエネルギーをもらったって喜んでいて。その機能のもう1つに、工場の作り手側から返事がくるようにしたら、心の温度が両者とも上がっていったのをすごく感じました。そういう心の温度が高いこと、上がっていくことををやりたいんです」。

ーーその心を温める役割をされているんですね。

「基本は他者の幸せが自分の幸せなので。じゃないと、人は幸せになれません」。

インタビュー中は終始山田さんの言葉に聞き入ってしまいました。いったん心に染みた言葉のひとつひとつを思い返すと、人と人とのつながりの大切さや気持ちよく生きるためのコツが含まれていて、心の中の悟りが開けたような気持ちになり、私も心の温度が上がりました。洗濯とお手入れの話も熱心に語ってくださったので、そちらはサイトを見てみてください!

企画の時点からアイテムについて深く考え、長く愛着を持てる、先を見据えたものづくりをしている〈ファクトリエ〉さんでした。

〈ファクトリエ〉

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