ハナコラボSDGsレポート リユース・リサイクル率99%の産業廃棄物処分会社が日本企業を変える!〈モノファクトリー〉が提案する、廃棄物の新しい在り方。/エディター、ライター・大場桃果さん
ハナコラボ パートナーの中から、SDGsについて知りたい、学びたいと意欲をもった4人が「ハナコラボSDGsレポーターズ」を発足!毎週さまざまなコンテンツをレポートします。第7回は、エディター、ライターとして活躍する大場桃果さんが、個性的な廃棄物をリユース商品として扱う〈モノファクトリー〉の河西桃子さんに取材しました。
80年以上の歴史を持つリサイクル会社の新発想。
ーー産業廃棄物のリサイクルを行う〈ナカダイ〉の事業として誕生した〈モノファクトリー〉ですが、いつ頃からこういった活動をしているのでしょうか?
「〈モノファクトリー〉の取り組みは2011年にスタートしました。グループ会社である〈ナカダイ〉の工場には毎日50〜60トンもの廃棄物が運ばれてきて、それらを選別して再び出荷していくのですが、出荷先できちんとリサイクルできてはいるものの、廃棄物の処理業ってお客さんがいっぱい捨ててくれたらその分お金が入ってくるじゃないですか。それって極端に言うと『いっぱい捨ててくださいね』ってことになってしまうんですよね…。一生懸命リサイクル率を上げて環境のことを考えているのに、言ってることとやってることが矛盾しているなと感じてしまって。そんな中で、廃棄物の量ではなく質を高めていこうと始まったのが〈モノファクトリー〉です」。
ーー〈ナカダイ〉は99%のリユース・リサイクル率を実現していますが、これはきっと業界の中でもかなり高い方ですよね。
「そうだと思います。廃棄物はどれだけ細かく分別されているかによって処理にかかるエネルギーやコスト、リサイクル率が変わるのですが、プラスチックの中でも細かく種類が分かれていたりと、素材の選別がかなりシビアなんです。例えば、埋立処分場へ持っていく廃棄物の中に誤って木屑が混ざってしまうと、処理場の担当者から『もう持って来ないでください』と断られてしまうことがあるくらい。〈ナカダイ〉では細かい選別はすべて手作業で行うことで、高いリサイクル率を叶えることができました」。
ーー手作業で選別しているからこそ、〈モノファクトリー〉で販売しているような面白い素材を見つけることができるわけですね。
「選別の途中で良さそうな廃棄物が出てくると、工場からこちらに連絡が来るようになっています。その後、廃棄した会社に販売して問題がないかを確認して、OKだったら〈モノファクトリー〉が仕入れ、商品として扱われます。基本的には自然と集まってきたものを扱っていますが、お客さんから『こんなものを探してるんだけど』と相談があれば、そういう廃棄物がありそうな会社にこちらから探しに行くことも。私たちがビビッとこなくても、誰かはそれを面白いと思ってたりするから、選ぶのはなかなか難しいですね」。
ーーお客さんはどんな方々が多いですか?
「初めの頃は、建築や内装デザインの仕事をしている方々がユニークな素材を探しに来ることが多かったです。あとは夏休みの自由研究に活用する子ども連れの方もたくさんいますね」。
ーーたしかに、子どもは大人よりも自由な発想で色々な使い道を思いつきそうですね。
「そうなんです。あとは、実際に素材に触れて『アルミは磁石にくっつかない』『プラスチックは金属より温かく感じる』などと学べる機会はあまりないと思うので、そういった面でも教育の役に立てるのかなと感じています」。
素材を捨てずに延命することもリサイクルの大切な手段。
ーーこのショールームにはたくさんの素材がありますが、特に人気の商品はどれですか?
「人気があるのはPCのLANケーブルの被覆膜です。リサイクルするためには中の銅線コードとそれを覆っているプラスチックの部分を分けなくてはいけないのですが、その結果としてこの素材が見つかりました。色々な色があってかわいいし、熱を加えると形が変わるので、アイロンで溶かしてコースターを作るワークショップを開催したこともありますよ」。
ーーまさに夏休みの宿題にぴったりですね!壁にただ掛けておくだけで目を引くから、お店の内装とかにも活用できそうです。
「それから、〈Open A〉という建築デザイン会社と協同でやっているプロジェクト『THROWBACK』のアイテムにも注目してもらいたいです。これはソーラーパネルを再利用したテーブルなんですけど、ソーラーパネルって太陽光から電気を作ることができてエコな反面、リサイクルの面ではかなりの処理困難物なんです。アルミやガラス、基盤がぴったりくっついていて単一素材に分けるのがとても大変なんですよ。今の技術だときちんと分別できないため、仕方なく埋め立て処分されることも多くて…」。
ーーエコだと思われている最新技術が、必ずしもリサイクル可能ではないということですね。長期的な目線で見ると、果たしてそれってサステイナブルなの?って考えさせられます。
「数年後には技術が進化して、ソーラーパネルを上手くリサイクルできるようになっている可能性もあるわけじゃないですか。だからこうやってテーブルとして再利用して、この素材を延命しているんです。最終手段である埋め立て処理までの期間をどれだけ延ばせるか、という考え方も実は大切なんですよ」。
ーーなるほど!廃棄処理までの時間を延ばすことが環境への負荷を減らすことの第一歩になるとは新しい発見です。
企業の意識を変えて、「つくる責任・つかう責任」を果たす社会へ。
ーー〈モノファクトリー〉では企業の廃棄物処理に関するコンサルティング業も行っていますよね。
「“発想はモノから生まれる”をコンセプトに、“使う”と“捨てる”を繋げて、捨て方をデザインするコンサルティングを行っています。さまざまな企業からの『どうやって捨てたらリサイクル率を上げられるの?』という相談に、長年廃棄物の処理を行ってきた私たちの知識や経験を生かしてアドバイスする取り組みです。最近はSDGsへの関心が高まった影響で、法人からの問い合わせがどんどん増えてきていますね。これまでの日本企業は海外にゴミの処理を依頼してやり過ごしてきていたので、国内でリサイクルすることに対する機能がまだ弱いんです。だから私たちはそこを開拓して、いろんな企業をサポートしていけたらなと思っています」。
ーーまだまだ課題はたくさんあるものの、社会全体としてリサイクルへの関心が高まっているのはいいことですよね。最後に、〈モノファクトリー〉として今後の目標があれば教えてください。
「リユース商品の可能性を広く発信することで世の中の廃棄物に対するイメージを変えるのはもちろん、社会全体の循環の仕組みを整えていけたらなと思っています。これまではほとんどの企業が業者に依頼して廃棄物を処理していましたが、これからは製品を販売するメーカーが自ら回収してまたリサイクルするというサイクルが必要になってくるのかなと。SDGsで言うとまさに「つくる責任・つかう責任」の部分ですね。そこに共感してリサイクルを頑張ろうとしている企業と一緒に、私たちの経験や知識を生かして循環の仕組みを作っていけたらうれしいです」。
〈モノ:ファクトリー〉品川ショールーム
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