山形・鶴岡に移住した夫婦が開いたカフェ&セレクトショップ〈manoma〉。ヒト・モノ・コトが行き交う場に。
2020.01.01

料理家&装飾家夫婦がオープン。 山形・鶴岡に移住した夫婦が開いたカフェ&セレクトショップ〈manoma〉。ヒト・モノ・コトが行き交う場に。

つい半年前まで神奈川在住で、都心を中心にバリバリ活動していたフードユニット「つむぎや」のマツーラユタカさんと、ディスプレイなどを手がけるミスミノリコさんが、山形県鶴岡市に拠点を移し、店を開いたという。なぜ、鶴岡へ。
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〈manoma〉は「間の間」。ヒト・モノ・コトが行き交う場。

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「鶴岡出身で20歳くらいまでいて。鶴岡の魅力に外へ出てから気づきました」と話すのはマツーラさん。

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農家を営む五十嵐大輔さんの柿畑から車で〈manoma〉へ向かう道すがら、見える月山。鶴岡のランドマーク。

鶴岡市は三山詣でると生まれ変わるといわれている羽黒山・月山・湯殿山の出羽三山、その眼下に庄内平野、日本海という地形で、山の幸、海の幸に恵まれた街。
「鶴岡は今でも山伏がいるんです。普段は里に住み、秋の時季などに山に入り修行をし、祈りをささげます。山伏は山と里や、神と人など、物事の間と間を取り持つ存在。そんな山伏信仰からインスパイアされて店名も〈manoma〉(間の間)と名付けました。だから、カフェだけではなく、全国にいるものづくりをしている友人たちの作品を置いたり、ワークショップを行ったりして、人やモノが交わる場になればと思っています」

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〈manoma〉は10月にオープンしたばかり。似顔絵は、マツーラさんが活動するフードユニット「つむぎや」の相方、金子健一さんの息子さんが記念に描いてくれたもの。
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キッチンカウンター上の、小さな本棚の裏に貼られた、あんちょこ。サービスの手順や、配膳の内容が手描きで記されている。カウンターには料理に使う野菜も置いてある。
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店内の一角で暮らしの道具を販売。棚には作家ものの器が並ぶ。中には、ミスミさんと長い友人である器作家・日高伸治さん、直子さん夫妻が手がけた陶磁器も。
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器のほかに販売している暮らしにまつわるあれこれも、夫妻や山形に縁のあるものが多い。山形の野菜を使った〈beni.〉のピクルスや、夫妻それぞれの著書もある。
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二人がいつか地方に場を移したいと考えていたときに、鶴岡で山伏修行をしたという人に頻繁に出会ったり、種採り農家(※1)との仕事を通して山形の在来作物(※2)の豊かさを感じたり、さらには鶴岡市がユネスコ食文化創造都市に認定され……。鶴岡の文化を再認識する流れに、過去にイベントをしたこともあるカフェバーを引き継ぐご縁が重なって、移住を決めた。

※1 その土地の気候や風土ならではの在来・固定種野菜の種を自家採種し種を継いでいる農家。
※2 採種や、種苗の保存方法、焼き畑のような昔ながらの農法とともに、地域や農家に代々受け継がれてきた作物。

何百年と続いてきたものを未来へつないでいく。

鶴岡の豊かな自然の恵みに魅了され、カフェの食材は、山形の在来作物や、庄内地方で採れた野菜を中心に、知り合いの農家や八百屋から仕入れている。

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五十嵐さんが手がける鶴岡発祥の庄内柿の畑で。

この日は400年続く農家・五十嵐大輔さんの畑を訪ねた。広大な敷地で約230本もの庄内柿が実をつけ、都会では見られない圧巻の風景!そう、庄内柿は今が収穫のシーズン。

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山形在来作物の一つ、沖田なす。

柿以外にも、沖田なす、宝谷かぶなどの在来作物にこだわり無農薬・減農薬で栽培している。
「在来作物はその地域で栽培や種採りをずっと続けて、世代を超えて初めて在来作物といわれるんです。意識的に継承していかないと残せない希少なもの。それでいうと、うちで作っている宝谷かぶ。160年もの歴史ある野菜なんですが、種採り農家さんが二人しかいなくて受け継ぎました。庄内柿は在来作物ではないですが、三世代、四世代超えないと、これだけの木の大きさにならないんです。

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お店用に仕入れた新鮮な柿と卵。

手間はかかりますが、世代を超えて残していけるものに価値を感じていて。実際のところ渋のない富有柿が一般的に普及して、渋抜きにひと手間かかる庄内柿の生産は落ちています。でも、曽祖父が植えた柿の木なので引き継いでやってます。単価も安いのに、頑固なんでしょうか」と五十嵐さんは笑う。

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ミニ庄内柿は、皮ごとがぶり!

五十嵐さんの倉庫には今年採れたミニ庄内柿が段ボールにぎっしり!皆で皮ごとほおばる。皮まで柔らかくて、甘い。この果実は、何十年と受け継がれてきたものだと思うと一層、味わい深い。

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平飼い卵も生産。

珍しい山形の野菜。どんな味、香りだろう。

ミスミさんは「顔だけじゃなくて、その人自身のことを知っている人が育てたもので料理をし、いただけるのは、とても贅沢」と話す。

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〈manoma〉では「季節のごはん」という名で定食を出している。夫のマツーラさんが調理を、妻のミスミさんが補助を担当。今年結婚10周年を迎えた二人は、あうんの呼吸だ。

〈manoma〉の定食は、どんな人で、どんなふうに作っているかを知っている農家の人たちの野菜や、山形ならではの野菜を使って、様々なアプローチで提案。
「在来作物が豊かな土地なので、山形全体のいろんな野菜のおいしさを伝えられたらと思っています。四季の色合いも豊かなので、二十四節気に合わせて2週間ごとにメニューを変え、プレートで季節の移ろいを感じていただけたら。基本的にメニューは野菜中心で、ゆるやかに肉や魚を登場させます」(マツーラさん)

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農家の五十嵐さんの柿を使ったあえ物をはじめ、希少な勘次郎胡瓜や田川かぶなど、山形の野菜をふんだんに使った定食(1,200円)。メニューは、この定食と月替わりのカレーの2つ。発酵食品や乾物にも力を入れていく予定。おしぼりをくるくるとコンパクトにして箸置きに。

二十四節気の霜降にあたるこの日の定食には、五十嵐さんの畑の柿を早速使った、菊あえが盛られていた。ほかには、真室川で栽培されている勘次郎胡瓜を使ったおかずも。このきゅうりは、昭和20年以前から地域や家庭で種を採り続けている野菜にだけ認定される「最上伝承野菜」。存在感のある野菜たちがパレットの絵の具のようにプレートを彩る。

この定食を地元の人、移住してきた人、県外から観光に来た人、多くの人が口にすることは〈manoma〉がそうありたいと願う、まさに間を取り持つ場になるのではないか。その土地の生きた財産を受け継いでいきたいと話した農家の五十嵐さんをはじめ、同じ想いで農業をやっている人たちの努力が「おいしさ」という形で食べた人に伝わるに違いない。

〈manoma〉/鶴岡

物書き料理家のマツーラユタカさんが料理を、暮らしの装飾家ミスミノリコさんが店の装飾を担当。東京の仕事も継続中。
■山形県鶴岡市朝暘町18-8
■0235-25-0293
■11:30~17:00LO 火水木休、ほか不定休 
■15席/禁煙

(Hanako1179号掲載/photo : Aya Sunahara text & edit : Nao Yoshida)

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