コーヒー好きからの支持多数。 東京から移住、営業は週2日だけ。京都で愛される〈大山崎COFFEE ROASTERS〉のこだわりとは? FOOD 2018.09.28

京都のコーヒー好きに知られる、〈大山崎COFFEE ROASTERS〉。中村佳太さん、中村まゆみさんは、会社を退職したのちに、東京から大山崎へ移住。鮮度を大切に、営業は週に2日だけ。二人のこだわりが、京都で愛されている。

「暮らしを変えたくて、東京から京都へ」

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京都のはしっこにある小さな町、大山崎。中村佳太さん、まゆみさんは暮らし始めて6年、ここでコーヒー焙煎所を営む。それまでは二人とも、東京で会社勤めをしていた。「結婚したのは2010年。お互いに忙しい仕事で、生活を見直したい気持ちがずっとあったんです。背中を押したのは東日本大震災。震災直後、本当なら家族と一緒にいたいはずなのに、みんなが出社しようとするのに違和感を覚えて。東京は好きだけど、暮らし方を変えるために離れてみようと思いました」と二人。

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イメージしたのは、静かでのんびりしていて、自然が近い場所。移住先を探して、九州や中国地方など、気になる町を旅してみたけれど、ここという場所にはなかなか巡り合えなかった。「田舎暮らしをしたいわけじゃないから、ほどよく町がいい。その加減が難しかった」と佳太さん。マンションの解約まであとわずか、リミットが近づく中、まゆみさんが提案したのが大山崎だった。まゆみさんは京都の宇治出身、学生時代に訪れたときの雰囲気を覚えていた。京都駅から電車で15分、山が近く緑にあふれ、静か。改めて二人で訪れ、いっぺんで気に入り、その足で不動産店へ向かった。元不動産店だった中古物件をリノベーションし、職住一体に。

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洞窟をイメージした店内には大きな岩が。「実を言うと、京都に住むのは抵抗があったんです。古い町だから気を使うんじゃないかと不安があったし、実家があるのに住まなくてもいいんじゃないかとも思っていたので。けれど、いざ暮らしてみたら、出会うのはみんないい人ばかり。人と人の距離が近くて、自分たちにすごく合っていました」と、まゆみさん。移住に伴い、二人でできる仕事をしようと、好きだったコーヒーの焙煎をスタート。ネットショップから始め、地元の人の声がけで、駅構内の共同スペースで出張販売をしたり、マルシェに出店したり。2014年、焙煎所で販売を始め、だんだんとファンがついていった。「ダメならいつでも元の暮らしに戻ればいいと、気楽にやってきました」と二人。屈託のない笑顔に周囲も顔がほころぶ。

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店頭では焙煎後3日以内の豆を販売、ネットショップは注文ごとに焙煎し、鮮度にこだわる淹れる直前に挽く方がおいしいと思うから、コーヒー豆は挽かず豆のまま販売。「手探りでしたが、わりとすんなり受け入れてもらえて。東京から来て〝大山崎〞と名乗るなんて今思うと大胆不敵ですが(笑)、みんなおもしろがってくれました」京都にはコーヒー文化が深く根ざし、思いのある店が愛される。コーヒーブームも後押しとなって、営業日は木・土曜の週2日だが、毎週買い足しに来る常連も多い。日曜はイベント出店にあて、水曜は焙煎、金曜は取扱店へ配達。直接出向くことで付き合いが深まる。「自分たちでできることをしっかりやりたい」からカフェ営業はせず、試飲で飲み比べてもらう。浅煎りの「ルワンダ」は草原の風のよう。「ブルンジ」は玉露のようなうまみ。コーヒーを淹れるまゆみさんに特徴を聞きながら、あれこれ試すのが楽しい。「酸味が苦手だと思っていた方が、意外といけると気づかれることも。コーヒーのおもしろさに目覚めてもらえたらうれしいですね」

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居合わせた人同士が話し込むこともしょっちゅう。コーヒーと深く親しめる、こんな場所こそ、京都らしい。マンションの一室で焙煎していたが、中古物件をリノベーションし、1月に新たな拠点を構えた。「前は入りにくかったらしくて、若い人の初来店が増えました(笑)」二人が開いた小さな店は、この地にしっかりと根を下ろし始めている。

〈大山崎COFFEE ROASTERS〉

高品質なシングルオリジンを焙煎。100g 600円~
■京都府乙訓郡大山崎町大山崎尻江56-1
■075-925-6856
■10:00~15:00/木・土営業
■スタンディング/禁煙

(Hanako1164号掲載:photo : Natsuko Ishikawa text : Aki Miyashita)

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