山頂で食べるホットサンドのおいしさと言ったら。 初心者でも楽しめる!東京の山・高尾山の「奥高尾ミニ縦走ハイキングコース」後編
都心から1時間ほどでアクセスできる東京の山・高尾山。山頂から一歩脇道にそれると、静かな登山道がのびています。初心者でも楽しめる、憧れの“ミニ縦走”にチャレンジしよう!前編に引き続き、お届けします。
好きな具材を挟んだホットサンドを。縦走しながら山ごはん。
ゆるやかなアップダウンを繰り返しつつ歩くと、両脇にサクラの木々が見えてくる。取材時、町のサクラはとうに終わったのにまだ花をつけていて、季節が町から山の上へ、少しずつ登っていることがわかる。
気持ちのいい汗をかいたなと思う頃、ふたつめの山頂・城山に着く。関東平野を見渡す眺めのいい場所で皆、お弁当を広げたり、思い思いに休憩中。私たちもワンバーナー(屋外用の小型コンロ)を出して昼食の準備!健脚の友が持参したホットサンドメーカーでパンにベーコンとアスパラを挟んで焼く。
ごく簡単なランチなのに、外で食べるとなんでこんなにおいしいんだろう。その答えは「山だから!」という言葉でしか表現できない。
縦走路に点在する個性豊かなお茶屋さん。
城山でのもうひとつのお楽しみは、山頂にある〈城山茶屋〉だ。昭和初期からここで営業している店で、ご主人がいつもにこやかに迎えてくれる。
手作りのなめこ汁やおでんは通年の大人気メニュー。夏場はひんやり、かき氷が名物だ。大きなかき氷を分けて食べると汗もひいて気分もすっきり。3つ目の山頂、景信山へ続く尾根を再び歩き始める。
山と山をつないで歩くことで見える風景。
高尾山から城山までの道はなんとなく整備されていたけれど、城山から景信山までの道は人工物の気配がない山の道。土の感触が心地よくて、コンクリートよりずっと歩きやすい。日陰に入るとびっくりするくらいひんやりした風が吹き抜けて、でもしばらく歩くとぽかぽかした木漏れ日を感じたり。『太陽と北風』じゃないけれど、ここでは人間じゃなく、自然が世界を司っているんだなと思う。
空に向かって登っていくような急坂を越えると景信山の山頂に出た。眼下には八王子の町並み、ビルが立ち並ぶ都心の風景が蜃気楼のように見える。そうだ、ここは東京の山なんだ。そのあまりの近さに、やっぱり驚いてしまう。「高尾山ではね、夜になると木々の間をムササビが飛ぶんですよ」。今朝立ち寄った、高尾山麓の〈TAKAO 599 MUSEUM〉で聞いた学芸員さんの言葉を思い出す。
自分が暮らす町からほど近い山の中で、ムササビが飛び回っている。それってなんて不思議で面白いんだろう!
景信山から麓のバス停までは1時間ほど。車道に出ると、ふかふかの土を歩いてきた足裏が「ん?」という感じで、町に戻ってきたことをまず足から実感する。電車に1時間乗れば新宿。そろそろムササビが遊びまわる頃だろうか。ネオン輝く歌舞伎町を歩きながらそんな想像をしているのは、きっと私たちしかいない。東京に山があってよかった。高尾山から町に戻るとき、私たちはいつだって、心底そう思うのだ。
〈TAKAO 599 MUSEUM〉
■東京都八王子市高尾町2435-3
■042-665-6688
■8:00~17:00(4~11月。12~3月は16:00まで) 無休(メンテナンス等での休館はあり)
■入館無料、駐車場なし
〈城山茶屋〉
■東京都八王子市裏高尾町1885-2(高尾山山頂から徒歩1時間)
■042-665-4933
■9:00~17:00 無休(1月末~3月中旬は土日祝のみ営業。悪天候時は休み)
ACCESS
歩行およそ4時間/京王線高尾山口駅→(5分)エコーリフト山麓駅→(リフト12分)山上駅→(1時間)高尾山大見晴台→(1時間)城山茶屋→(1時間)景信山→(1時間)小仏バス停→(バス30分)JR高尾駅
(Hanako1133号掲載/photo : Kasane Nogawa text : Yuriko Kobayashi)