花井悠希の朝パン日誌 vol.31 甘いは正義?…〈BREAD WORKS〉と〈The Bake〉
糖質オフ、糖質カット、糖質制限ダイエット……いつの間にやら「甘い」がワルモノになっている感じがある昨今。でも、あの一口頬張った時の多幸感って何物にも変えがたいものがありますよねぇ。ましてや急にグッと涼しくなってきた最近なんて特に、温かいドリンクと甘いモノのタッグは、誰が何と言おうと幸福の上では《正義》だと思ってしまいます。疲れていたりいっぱいいっぱいな時ほど甘いものに手が伸びることって皆様にもあるはず。ちょっと一息、甘いパンに甘えてみませんか?
乗車5分前で手に入れるご褒美…〈BREAD WORKS〉
新幹線で地方のコンサートへ向かう前に次の日の朝パンを調達!〈BREADWORKS〉さんは改札内の「ecute」にあるので忙しない乗換の時にもパン充電出来る救世主。
そのままコーティングしたらアクセサリーになるんじゃないかと思っちゃう程、ファンシーな可愛さを振りまくこの子の名前は「シトロン・オ・ザマンド」。内側にはきゅっと甘酸っぱいレモンカードを抱えています。それをクロワッサンの幾重にも重なる波打つレースがふわりとくるむから、酸味もふわりとまあるくなって穏やかに届きます。トップはココナッツとパールみたいなチョコレートボールでおめかし。ココナッツのシャリっとした食感とレモンが一緒になるとやっぱり夏を彷彿とさせるけど、もう秋。すっかり秋なんですよね。夏と秋の狭間においていかれたあの薄手アウター達はどうしてくれるんだい?(切実)チョコレートボールのカリカリ食感もプラスされるとスイーツ指数は急上昇。夢を見させてくれる甘いご褒美パンです。
ムンムン。細かい茶葉から放たれるアールグレイの香りがムンムンムン。ポロリと手からこぼれ落ちた小さな欠片すら、一丁前に香りたちしっかりとアールグレイ味。止め処なく膨れ上がる香りに、引き寄せられるがまま近づいて、お行儀すら忘れてクンクン嗅いでしまいそう。はぁ、しあわせ(お家だけにしましょう)。茶葉の細かさと同様で生地も細やか。もさっ、ざらっ、な大らか手作りテイストじゃなく(そういうのも好きだけど)、ぎゅっとまとまった、しなやかでマドレーヌのようなケーキっぽい生地です。上の無花果は見た目を裏切らずジューシーでみずみずしい。生の無花果のつぶつぶとした種感と風味は活きつつ、熱が通ることで、コンフィチュールと生の間(冷静と情熱の間みたいな(←違))、絶妙な生っぽさと熱によって濃縮された味わいの濃さがあって、アールグレイの華やかな香りに負けていません。そしてね、艶っぽいのですよ味わいが。そもそもイチジクってそんなイメージがあるのは私だけでしょうか?大人に許されたフルーツというか(だけど子供の頃から大好物)。艶こそ私に最も足りないものってもっぱらの噂なので食することで補おうと思います(そんな簡単ではない)。とことんアールグレイの香りに惑わされてみませんか?
合言葉は赤い扉…〈The Bake〉
渋谷から代官山へ向かう桜丘エリアにある小さなお菓子屋さん〈The Bake〉。生ケーキからクッキーまでどれも美味しいのですが、真っ赤な扉を開けた時の甘い香りとワクワクさせてくれるお店の雰囲気が特に好きで、近くに行く度のぞいてしまうお菓子屋さん。
まず挨拶はラム酒の香りから。贅沢にたっぷりと被せられ間にも挟まれたアーモンドクリームは風味豊かで、お菓子屋さんだからこその繊細な奥行きとしつこさを感じさせない甘さのさじ加減には、隅々まで行き届いたセンスを感じずにはいられません。そうしているうちにしっかり焼き目のついたクロワッサンのこんがりした香ばしさが風のように舞い上がって景色を変えていく。中のアーモンドクリームはふわふわ且つしっとり、クロワッサンの香ばしさやバターの香り、アーモンドクリームのラム酒の香りにコクの奥行き……全部全部足し算のはずなのに、はみ出ることなく調和がとれているのがすごい。
〈The Bake〉のこのスイートポテトも、サツマイモのナチュラルな旨味を引き出しつつ、口溶けやタルト生地はとても繊細に出来ていて、食べ終わりたくない、まだまだ食べていたいと思ってしまう美味しさですよ。ぼーっとしていたら見落としてしまうような小さなお店で、自分だけのお気に入りを見つけるってなんか特別。
ひゅうっと冷たい風が吹いて秋がやってきたから、あったかいドリンクを欲してしまうこの頃。それに合わせる甘いパン、冬になる前に見つけてみませんか?