暮らしを健やかにする知識とヒント[ 資格を取る編 ] キャリアアップだけじゃない!メンタルにも人間関係にも有効な「資格」とは
働く女性に役立つ情報を月替わりで紹介。今月は、キャリアアップにもつながる「資格」について。みんなの資格事情や、年齢を重ねてからの資格の選び方、向き合い方についても学びます。
INTERVIEW 手に職をつけるだけではもったいない!人生の見直しにもなる、資格の役立て方。
手に職をつけるだけではもったいない!人生の見直しにもなる、資格の役立て方。
自分のスキルや知識を客観的に証明できるのが、資格。仕事に直接つながる国家資格から、趣味の延長で受けられるようなユニークな民間資格まで、日本には100
0種類以上あるといわれている。資格取得の目的として多いのが、就職や転職活動に役立てること。他者と差をつけるため、履歴書に少しでも自分をアピールできる項目を増やしたい…という理由で取り組む人も多いはずだ。しかし、直近の転職を想定していない場合などでも、資格取得は役に立つという。これまで950以上の資格を独学で取得し、現在も年間約80以上のペースでジャンルを問わず試験を受け続けているという、資格取得家の鈴木秀明さんに話を伺った。
「何か資格を取ろうと考える時に大切なのは、“何のために資格を取るのか”という目的をはっきりさせることです。例えば、セカンドキャリアにつながる資格が欲しいのであれば、今後の自分のキャリアをどうデザインしていきたいか、さらには一歩進んで、この資格を取ることでどういう人生を送りたいのかまで見据えられるといいですね」
つまり、目指す将来像や目的から逆算して資格を選ぶべきだということだが、まだ目的が具体的に定まらない人に向けて、仕事をするうえで持っていて損はない、汎用性のある資格を3つ教えてもらった。
「1つ目は『秘書検定』。勉強することで一般常識やビジネスマナーが身につくので、社会人としての基本的スキルを底上げできます。2つ目は、会社の業績数値を読むなどビジネスの必須スキルであり、資格自体の知名度や評価も高い『簿記検定』。そして3つ目は『ITパスポート試験』です。どんな業種・職種でも年々IT化が進んでいるので、それに対応するための基礎知識としてぜひおさえておきたい内容です」
資格が持つ6つの効果を知っておこう。
そもそも資格は“自分の強みやスキルを明確かつ客観的に示せる”というメリットが大きい。
「例えば、ただ“アートに詳しいです”と言うより、“美術検定1級を持っています”と言える方が、どのくらいのレベルなのか一言で伝わるし、試験実施団体のお墨付きがある客観的情報として示せます。ほかにも資格取得のメリットはさまざまありますが(左ページ参照)、資格取得をきっかけに仲間が増えたり、メンタルに良い影響があったりと、自分の生活や人生の充実度を上げてくれるという面にも注目してほしいです」
行きたい先で求められる資格を取るのがベターな一手。
一方、転職やキャリアアップを念頭に置いていて、かつ明確に行きたい会社や業界が決まっているなら、その会社・業界で高評価される資格を調べてピンポイントで狙うのが一番いい、と鈴木さんは言う。
「例えば貿易業界なら、『貿易実務検定』『通関士』『TOEIC』あたりが評価される…というよりも、実際に入社したら取得を推奨されるでしょう。入ったら取らされる資格を先んじて取得しておけば、人事に対して〝本気でこの業界や会社を志望してリサーチもしている〟という熱意のアピールにもなりますし、入社後の仕事もスムーズに進められます。資格を転職活動のアピール材料として使う場合、資格自体の知名度が意外と重要ですが、有名どころの資格をとりあえず目指すより、一般的な知名度は低くても志望業界で求められる資格を取るほうが効果的ですし、取得難易度が意外と低いケースもあります」
また、自己アピールの武器として活用する以外にも、資格は業界研究や自己分析のきっかけにもなる、と鈴木さんは語る。
「未経験の業界でも、その業界関連の資格を勉強してみると業界の構造や仕事の流れ、必要な知識などがわかり、業界研究になります。もし、実際にそのジャンルの資格の勉強をしてみて、“自分が想像していたのと違う”と思うことが見えてきたら、“そもそも自分はどうしてこの業界を目指したのか”“どういう価値観をもって、どうなりたい・何をしたいと考えていたのか”と自分を見つめ直すきっかけとなります。結果、“なんとなく転職してミスマッチを起こす”ことを防ぐことにつながるはずです」
そして、資格のメリットは仕事に活かすだけではない。
「『ねこ検定』など、趣味のジャンルの検定は、直接的に仕事に役立つ人は少ないかもしれませんが、好きなことの知識が増え、自分の内面が豊かになる効果が。趣味を深めるとっかかりとして資格を取るのもおすすめです」
資格取得のためにはもちろん勉強が必要だが、学生時代の経験から勉強に苦手意識を持っている人も多いかもしれない。
「学生時代は、あまり興味のない科目も勉強しないといけなかったり、周りと比べられるのが苦痛だったりしたことから、今も勉強にネガティブなイメージを持つ人もいると思います。でも、大人になってからの勉強は、自分が学びたいことに自分のペースで取り組めるので、学生時代とはまったく別物だと考えてほしいです。好きなことの勉強ならポジティブに取り組めるはずです。また、書店で参考書をパラパラとめくって〝自分の知らないことばかりで難しそう〟と、勉強を始める前から諦めてしまう人もいますが、これはもったいないこと。初めて挑戦することは、最初からうまくできなくて当たり前。わからなくても、一度着手して。進めてみると少しずつ視界が開けてきたり、自分なりの勉強スタイルを見つけて習慣化できたりするはずです」
その先に待つ“学んだことが身に付くと楽しい”という感覚に辿り着けば、資格取得に対していいモチベーションを保つことができるはずだという。
「もし自分ひとりでは続かないと思うなら、家族や友人、後輩など周りの人を巻き込むのも手。“自分が言い出したんだから頑張らなきゃ!”と士気を高めるきっかけとなります。ある種のイベント感覚で、試行錯誤の過程も楽しみながら取り組むのがポイントです。ぜひ資格を“人生に彩りを添えるアクセント”としてとらえてみてください」
CHECK LIST
資格を取るメリットとは。
❶法的効果
資格を持つ人のみが就ける仕事があったり、事業所に有資格者を○名以上置かなければならないなど、法的な権限が発生する。
❷シグナリング効果
自分のスキルや能力を客観的に周りに示すことができる。ひらたくいえば、「履歴書に書いてアピールできる」ということ。
❸コミュニティ効果
資格取得をきっかけに、共通の趣味や得意分野を持つ仲間とのネットワークができ、人脈が広がる。
❹学びの効果
試験の合否にかかわらず、資格を取得するまでの過程で学んだことが知識として自分の人生の糧になる。
❺経済的効果
その資格を持っているだけで特定の文化施設やお店の割引、優待が発生するなど、経済的な恩恵を受けられる。
❻メンタル効果
試験に受かった成功体験などにより、気持ちがポジティブになり、自信が高まって前向きな行動にもつながる。
資格を取る目的を明確に持とう。
◻︎自分がどう生きていきたいか?
◻︎どんな強みを作りたいか?
◻︎どんな人間になりたい(と思われたい)か?
上記6つのメリットを参考にして、今後のキャリアプランや人生設計の展望を見据えて資格を探してみよう。自分の意外な一面をアピールできる資格を取るのも良し、自分の強みを伸ばすもの、逆に苦手分野を補ってくれる資格を取るのも効果的。
DATA みんな資格取ってる?
自分の暮らしを充実させる資格や、将来を見据えたキャリアアップのための資格。実際どんなものに興味があり選択しているのか、社会人になって始めた資格取得のリアルな声を聞いてみました。
質問1 現在、資格を取りたいと思っていますか?
資格に興味があり、意識している人は全体の約7割。将来への不安などから、資格取得を目指したい人は増えている様子。
質問2 質問①で「はい」と答えた方に質問です。どんな資格に興味がありますか。
仕事をよりステップアップするために取りたい資格が多い模様。会話の幅が広がり、旅行に役立ちそうなど語学系への関心も高い。
質問3 社会人になってから、いくつ資格を取りましたか?
質問①では約7割の人が「取りたい資格がある」と回答したのに対し、実際には1つ以上の資格を取った人は約5割なのが現状だ。
質問4 資格を取った方に質問です。どんな資格を取りましたか?
スキルを評価するためなど、やはり仕事に関する資格が多いなか、ライフスタイルや周りの環境に合わせて取得する人もいるようだ。
質問5 資格を取った方に質問です。その資格を取るための勉強期間はどれくらいでしたか?
仕事や子育てをしながら、飽きずに行うのにちょうどいい、1カ月以上、3カ月未満と回答した人が全体で一番多い結果に。
CASE STUDY 資格を味方に、人生を切り拓いた人。
資格を取ることで、キャリア、そして暮らしにどんな変化がもたらされるのか。資格取得で学んだ知識やノウハウを仕事につなげながら、お笑い芸人として活躍する市川義一さんの場合を見てみよう。
“資格芸人”としても知られる、お笑いコンビ「女と男」の市川義一さん。現在47の資格を持っているというが、資格マニアへの道を歩み始めたきっかけは、自身のキャリアからの不安からだった。
「当時相方だけ仕事が増え始めて焦りを感じていた時期に出演したラジオで元芸人のファイナンシャルプランナー(FP)の先生に出会ったんです。僕も、大学は経済学部なので、興味のある分野でした。「現役芸人でFPの肩書きは珍しいから、取ってみたら?」と背中を押されて取ってみると、確定申告や保険など、勉強したことが生活にも役立って。資格を取る本当の面白さに気づいたんです」
この成功体験をきっかけに隙間時間を利用して、自分の武器になるニッチな資格を取り始めたという。
「家電製品アドバイザーのほか、第4期の資格もその後の仕事に大きくつながりました。今は、趣味や家族のために活かせるジャンルに興味が湧いて、色々取り始めているところです」