政治と表現の交わり方を探って。〈表現と政治〉プロジェクトが目指す未来
政治は難しい、とっつきにくい。どこかそんなイメージを持っている人、多いのではないでしょうか。ただ、政治は私達の暮らしに直結し、無関心であることは知らぬ間に自分の人生をより豊かなものにするチャンスを逃している可能性だってある。今回は、表現やデザインのチカラで政治を身近なものにできればーーそんな想いを掲げて活動をしている「表現と政治」プロジェクトのメンバーに話を伺った。
“表現のチカラ”で政治を身近に
政治は難しいもの、選挙はとっつきにくい話題、いつかは考えたいけど余裕がないーーSNSなどでの発信を見かける機会は増えたものの、政治や選挙について私たちの日常で“カジュアルに”話す雰囲気が醸成されているかといわれれば、まだまだ首を縦に振り難い実感が。そんななか、選挙が近くなると投票を喚起する多様なポスターを目にすることが増えた。イラストレーターやグラフィックデザイナーなど、さまざまなクリエイターが“投票”“選挙”をテーマに、自由にポスターを制作しWeb上で発表しているのだ。
この「投票ポスター」企画をはじめたのが、「表現と政治」について対話するプロジェクトを推進している平山みな美さん(グラフィックデザイナー)、惣田紗希さん(グラフィックデザイナー/イラストレーター)、岡あゆみさん(編集者)。政治という一見難しいテーマに対し、表現はどのように働くか?そして、そこから目指す未来について伺った。
デザインは、社会や政治に密接に関わり得る
政治は難しいもの、自分とは距離のあるもの…そう思われがちなテーマを、表現やデザインのチカラで身近なものにできればーーそんな想いを掲げて活動をしているのが「表現と政治」プロジェクト。運営しているのは、同世代の3名だ。
そこで高橋さん、惣田さん、岡さんが、知り合いだった平山さんをはじめとする友だちや知人に声がけ。その展示をきっかけに話すことが増えた3人は、「同世代」「同性」「クリエイター」など共通点が多く、お互い社会に対して抱いている違和感や不安にもシンパシーを感じた。展示が終わってからも、ニュースに対して意見を交わすなど交流を深めていく。
このストレートなプロジェクト名こそ、3人が表現を尊重し、まっすぐに社会と向き合っている様を物語るよう。最初は「デザインと政治」というネーミングも考えたというが、デザインと限定してしまうと、イラストレーションや写真、アートなどを含みにくくなり、範囲が限られてしまう。
「作る」「貼る」「広める」――そして一歩を踏み出す後押しに
活動は主にふたつ。ひとつは、2020年から行っているオンライントーク。3人それぞれの専門分野や掘り下げたいことをテーマに掲げ、ゲストを招いて行った。
ふたつ目は、冒頭でも触れた投票ポスターだ。ハッシュタグをつけることで誰でも自由に参加できるかたちで、過去3回行った。
そこには、現状、約50%という低い投票率を少しでも改善しようという想いと、2013年からインターネットで選挙運動ができるようになった背景がある。以前は電話やビラ配りが選挙活動の主流だったが、たとえばWebでの投票呼びかけや、応援する候補者をSNSで明言することが解禁された。
ポスターは、視覚的に楽しく考えるきっかけをもたらす。私自身、クリエイターの友人に「かわいいポスター描いていたね」などという会話から、選挙について自然に話題が及ぶこともあった。
当初は店舗などに掲載してもらうのはハードルが高いと考えていた。しかし蓋を開けると、書店や飲食店が積極的に掲示してくれたり、何点も並べて投票ポスター展を開催してくれたり、思いがけない展開に。ポスターをきっかけに、お客さんと選挙の話をしたという声もあったそうだ。投票ポスターを「作る」「貼る」「広める」というアクションを通すことで、誰かが一歩を踏み出す後押しになっている。
「#投票ポスター」が生んだ連帯感
ひとりで発信するには、勇気が必要かもしれない。でも「#投票ポスター」をつけると、会ったこともない、話したこともない同士でも不思議と連帯感が生まれ、声を挙げられる。
バリエーションが豊かで、選ぶ楽しさもあるポスターという開いたアウトプットだからこそ、裾野が広がったのだろう。フリーダウンロードできるので、プリントして思い思いの場所に貼ることもできる。
プロジェクトが広まっていく一方で、今後についての課題もある。
最後に、活動を通して改めていま伝えたいメッセージを聞いた。
▼INFORMATION
もじ イメージ Graphic 展
11月23日(木・祝)〜
21_21 DESIGN SIGHTにて投票ポスタープロジェクトが展示される。
https://www.2121designsight.jp/program/graphic/