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フランスワインが2倍おいしくなるエチケットの小話10選
ワインボトル表面のラベル=エチケットは、ワインの顔であり、開ける前にその一本を知るための唯一の手がかり。4人の「飲み手」のプロが惹かれた、フランスワインのエチケットを紹介します。
ワインの履歴書とも言えるエチケット【フランスワイン編】
ワインにおけるエチケットは、飲み手にそれがどんなワインかを伝えるいわば履歴書。出自が記載されているのが特徴だ。「基本要素は『いつ』『どこで』『誰が』造ったか。加えて、フランスの原産地統制呼称制度(A.O.C.)を筆頭に、各国で地域ごとのワインの個性を守るための法律が定められており、その土地の高品質ワインの認証を得るキュヴェ(銘柄)には様々な表示義務が課されます」(ワイン輸入会社営業/齊藤誠也)。
4人の飲み手が惹かれたフランスワインのエチケットを10組紹介します。
1. ディディエ・ダグノー(ロワール地方)
「ヴィンテージ(ブドウの収穫年)によって全く味わいが異なるのも面白く、いずれも酸が綺麗。『ブラン・フュメ・ド・プイィ』のエチケットに描かれているのは友人の作曲家が『悪い噂』と名付けた前衛的なメロディー。不協和音も楽しみたいという芸術家肌のダグノーらしいデザインです」(医師/金由梨)
2. パスカル・シモニュッティ(ロワール地方)
「ガメイ100%で造られた『オン・サン・バ・レ・クイーユ・ペティアン・ナチュレル・ロゼ』は、キュヴェ名もエチケットも、セックス・ピストルズのアルバム『勝手にしやがれ!!』へのオマージュ。熱狂的なファンだそう」(建築家/干田正浩)
3. ジュリアン・クルトワ(ロワール地方)
「幼い頃からワイン畑で育ち、現在も自らの農園で様々な果樹を植えたり、動物を飼ったりと、多様性のある生態環境作りを目指す彼らしく、エチケットにはトンボや蝶、亀などの動物が描かれています。アーティストの妻による白と黒が印象的なデザインにも惹かれます」(医師/金由梨)
4. バティスト・ナイラン(ブルゴーニュ地方)
「比較的新しい造り手ながらも、特にガメイは古木を引き継いで栽培しており、複雑で旨味のある味わいが特徴。飲み手に、エチケットを見て楽しい気持ちになってほしいとの想いから、キュヴェごとに異なるアーティストに依頼するのも魅力的。そのセンスには出会うたび心を射抜かれています」(酒屋店主、パラレルワーカー/飯田明)
5. ヴィニ・ヴィティ・ヴィンチ(ブルゴーニュ地方)
「冷涼なテロワールを反映して酸が豊かでチャーミングなスタイル。遊び心あふれる味わいは、かの有名な将軍カエサルの名言『来た、見た、勝った』に由来するドメーヌ名、そしてエロティックでキテレツな生き物をモチーフとしたエチケットにも反映されています」(医師/金由梨)
6. ドメーヌ・ボールナール(ジュラ地方)
「造り手の名前である“ボールナール”は、フランス語で、ボー=美しい、ルナール=狐の意となることにちなんで、狐が描かれた遊び心あふれるエチケットです。右向きなら赤ワイン、左向きなら白ワインです」(建築家/干田正浩)
7. フィリップ・ジャンボン(ボジョレー地方)
「豚の絵が目を惹くエチケットが特徴。元来ハムを意味する造り手の名字ジャンボンに、ワイン名としてスライスを意味する単語を据え、“ハムの薄切り一枚”と読ませるジョークを効かせています。あえてふざけたエチケットで産地や格にこだわる人を皮肉っているそうですが、実際ハムに合います」(建築家/干田正浩)
8. ジェラール・シュレール・エ・フィス(アルザス地方)
「『リースリング ル・ヴェール・エ・ダン・ル・フリュイ』というキュヴェは、本来“グラン・クリュ”のワインにもかかわらず、あまりに個性的なため格付けを認められなかったそう。ゆえに果実を虫が食う様をエチケットに描き、“組織のなかには虫が食うような体制がある”との皮肉をこめています」(建築家/干田正浩)
9. ルイ・ジャド(ブルゴーニュ地方)
「スーパーでもお目にかかれる定番ですが、淡い黄色が目を惹くエチケットに、ローマ神話の酒の神様“バッカス”を掲げるだけあり、正統派であり実力派。樽香も魅力的で熟成にも向きます」(医師/金由梨)
10. ラルザン(コート・デュ・ローヌ地方)
「自社ブドウを使った“ドメーヌもの”には、画家でもあるパトリシアさんが、周囲への感謝をこめて“握手”の絵を描いています。一方、友達のブドウを使ったシリーズは、ブドウ同様エチケットも友達のアーティストに依頼。緑とピンクが美しい『ポティヨン』がお気に入りです」(酒屋店主、パラレルワーカー/飯田明)