小池栄子のお悩み相談室 /第1回「年上の仕事相手に指示出しをする日々。「生意気」と思われていないか心配です」 (26歳・ウェブデザイナー) LEARN 2022.12.21

仕事、プライベート、家庭生活含め、日々頑張っている人ほど悩みは尽きず、誰かに聞いてもらいたい、いいアドバイスが欲しい…そう思っている女性たちの声がHanako編集部に寄せられています。そこで、女優としてひときわ存在感を放ち、かついつもスパッと気持ちのいい発言をされている小池栄子さんに、人生の先輩としてアドバイスをしていただくこととなりました!隔週更新でお届けします。

――さっそくですが、事前に編集部から小池さんにお渡ししている読者からのお悩み集の中で、気になるものはありましたか?

昨晩、どれもわかるな…と思いながら見ていました。その中でも、最初に気になったのはこれです。

本日のお悩み

「仕事柄、年上の人に指示出しやお願いをすることが多く、“生意気”と思われていないか不安です。例えば、『このデザインはちょっと今っぽくないので変えましょう』と言ったあとに顔色をうかがって、『…今っぽくない、は嘘ですけどね!』と慌てた&心にもないフォローを口にしてしまって余計気まずくなったり、本音をきちんと伝えられず、結果としていい仕事にならなかったり。どうしたらお互いに気持ちよくお願いごとができるでしょうか」(26歳・ウェブデザイナー)

――20代は自分のことでいっぱいいっぱいで、がむしゃらに経験を積みたいと思う年代。まだ自信を持って仕事を回せない部分も多いのに、上の立場に立つというのは、プレッシャーが大きいですよね…。

そうですよね。私は仕事柄、指示を出す立場ではないものの、年齢関係なくいろいろな世代の方とご一緒します。そんなことを振り返りながらこの悩みを聞いて思ったのが、顔色をうかがって相手に合わせる気持ちもわかるけど、“迷っていること”が相手に伝わることで、相手を不安にさせてしまうことの方が問題なんじゃない? ということ。年上相手なら、自分よりも経験を積んでいるのは当たり前。まだ若い相手が、不安を抱えていようが、多少生意気だろうが、そんなことを分かったうえだと思うんです。だからこそ、同じ土俵に立った以上は、プロ同士という意識を持ってしっかりと自分の意見を伝えないと、相手にも失礼になりかねないと思うんですよね。

――おっしゃる通りです。すでに問題解決してしまったような…(笑)。小池さんにも、似たような経験はありますか?

ありますよ〜。例えば、舞台稽古の時に、先輩の役者さんを相手に、自分のやってみたいプランのためにもうちょっとこう動いてほしいとお願いしなければいけないことがあって。確かに言いづらいけど、そこを避けては本番を迎えられないわけで、私の場合は、それが舞台を成功させるための試練だと思っています。だから一方的に、こっちがやりにくいからこうしろというのではなく、「こういう動きをしたいから、こうしていただくことはできませんか?」と迷いなくお願いするようにしています。時には考え方の違いからぶつからなければいけなくて、向こうから、「なんだよ、生意気だな」と思われたとしても、プロとしてなすべき仕事をするためには必要なこと。だから、もし相手からイヤだと言われても、私は、自分が納得するまで諦めずに、引かずに、伝え続けるようにしていて。

――さすがです! 堂々と向き合うんですね。

そうは言っても、家に帰ってから、「さすがにやばかったかな…」って思うこともありますけど(笑)。でも経験上、いい先輩たちこそ、後輩や新人の意見や気持ちを受け止めてくれて、黒子のような立ち回りを時にしてくれるんですよね。逆に、そこでヘソを曲げるような先輩は、正直、ダサいなって(笑)。

――ダサい…確かに(笑)。でも、そうやって立ち回ってくれる先輩に、ある意味甘えてみてもいいのかもですね。

そうそう。年上から見れば、まだできないだろうとか、慣れていないことなんて百も承知だから。それを踏まえ、若い子が10人いたら、その中で光るのは若さを武器にできる人。それに、新人や若いからこそ見える景色ってあると思うし、無鉄砲でも、あえて失礼なことを突っ込める世代が20代。他人にどう見られるかおどおどしているより、やりたいことが明確に光っている方が、可愛がられると思うんですよね。だから、一緒にいいもの作りたくて歩んでいるというスタンスを持ったまま、諦めずに、伝え続けることが大事かな。

最初に自分の“キャラクター”を歪めてしまうと、 「らしくない」と言われて悩む結果に。

――もし、不安を持ったまま、おどおどしたままでいると、この先どうなってしまうんでしょう…。

ああ、癖になっちゃうのかもしれませんね。例えば、ごはん会とか仲のいいメンバーの中で、自分の役割やキャラクターを決めがちですよね。でも、最初に無難なキャラを決めることで、そのうちそれが居心地よくなって、違うことができなくなってしまう。そうすると、ちょっと違うことをした時に「○○ちゃんらしくないね」って言われるんです。自分でキャラ作りをしたくせに「本当の私をわかってくれない」なんて悩むようになって。それなら、最初に怒られようが、嫌われようが、後悔しないような自分でいた方がいい。

――あぁ〜すごくわかります。そのような経験もありますか?

実は私も20年ぐらい前、バラエティ番組に出はじめた時に、自分を無敵だと思っていた時期がありました(笑)。とにかく毒舌に、相手につっかかっていけばウケるから…と、勘違いして、自分の立ち位置とか役割を勝手に決めて立ち回っていたら、どんどん収集がつかなくなっていって。

――ズバズバいく様子は、見ているほうからすると気持ちよかったですが…!

当時、「もうちょっと言い方気をつけたら?」とか「相手だけではなく、その先にいる視聴者が不快に感じると思うよ」というアドバイスをくださった先輩もいたんですが、全然聞き入れていなかったんだと思うんですよね。でもそのうち、ちょっと弱気なことを言うと「小池さんらしくないね」と言われたり、「もっと切り込んで!」というカンペが出はじめるようになってきたら、自ら選んでそうしてきたはずなのに、窮屈になってしまった。

――その話を聞いて、小池さんをものすごく身近に感じました(笑)。

私にもそんな時期がありましたよ(笑)。でもそのしょっぱかった経験が、今の自分を作っていると思うと、それでよかったと思えるんです。あと昔、親から「年上の言うことを聞きなさい」と言われたことが、最近ようやくわかるようになったなぁ、と。本来私は争いごとが好きではない性格だし、40代になった今では、無理せず、気張らずに仕事ができるようになったと思います。

――若いうちは多少苦い経験をしても、あとでそれが生きてくると。

そうそう。イヤな思いをするのも人間ですから。人間であることを楽しんで、接することができるようになると、その先の景色が見えてくるのかも。

Photo : Syu Yamamoto text : Aya Wakayama

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