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運命の一品に出合える可能性も! 岐阜県・土岐市へ、器にときめく旅に出かけよう。
岐阜県・土岐市は、陶磁器の生産量が日本一。また、約1400年もの歴史を誇る「美濃焼」の産地としても知られています。そんな土岐市では、買う、作る、知るといった、器にまつわるあらゆる物事を体験できます。あり方がとにかく自由で、カラフルなものも多いのが美濃焼。“美濃焼を知る旅”を入り口に、魅力あふれる器の世界に親しんでみては?
歴史ある窯元で、ドキドキの作陶体験。

まず訪問したのは、JR中央本線土岐市駅から徒歩5分ほどの場所にある〈角山製陶所〉。明治16年から約130年間続いている窯元で、現在は5代目となる伊藤真さんが中心となって運営しています。こちらでは、各種陶芸作品や業務用の食器の製作のほか、美濃焼を教える陶芸教室が展開されています。


伊藤さんによると、作陶の教え方は、窯元によって異なるそう。〈角山製陶所〉では、まずは粘土の中央部に「ガイド穴」と呼ばれる穴をあけ、その後、両方の親指を使って穴を広げます。それから指先を使いながら粘土を筒状にし、好みの形状に整えていきます。
それぞれの工程を実践する際、伊藤さんが分かりやすくアドバイスしてくれます。
「粘土から指を離すときは、そっと離してください。勢いよく指を離すと、粘土に力が加わり、歪んでしまいます」「器の壁面を薄くするとき、指先に力を入れ過ぎると、粘土に歪みが出てしまいます。指先で粘土を感じながら、力の入れ具合に緩急をつけるのがポイントです」(伊藤さん)

陶芸用の粘土に初めて触れる人は、その不思議な質感に驚くかもしれません。ひんやりとしていて、驚くほどなめらか。また、とても柔らかく、ろくろと指先の動きに合わせ、どんどん形状が変わります。時には、まるで意志をもった生き物のように形を変えていくので、なかなか思い通りの形状にできないことも。でもそんなときは、伊藤さんが手助けしてくれるので安心です。

粘土の成形が終わったら、ここで作陶体験は終了。以降は、プロの手で器の仕上げ作業が行われます。「素焼き」と「本焼成」の2回に分けて器を焼くことで、器が完成しますが、「素焼き」と「本焼成」の前後や間には、「釉薬(ゆうやく)掛け」と呼ばれる色付けの作業など、複数の仕上げ作業が行われます。器を形成してから2〜3カ月後に、完成した器が自宅に届きます。
〈角山製陶所〉
■住所:岐阜県土岐市泉明治町5-1
■電話:0572-55-2886
■営業時間:8:00~18:00
■定休日:不定休
■ WEBサイト

〈角山製陶所〉で作陶体験を楽しんだあとは、土岐市内にある〈Toki Italian SAI〉でランチを。〈Toki Italian SAI〉は、土岐市で生まれ育ったシェフが営むレストラン。地域の食材を多用した、こだわりの品々を提供しています。

ランチコースを注文すると、サラダや鮮魚のマリネ、ポタージュを一皿に収めた「前菜プレート」、パン、メインディッシュ、手づくりデザート、ドリンクが提供されます。目でも楽しめる品々ゆえ、華やかなランチタイムが楽しめます!
なお、料理に使用されている野菜は、県内で生産された有機野菜。新鮮でみずみずしく、野菜本来の味わいがしっかりと感じられるのが特徴です。
また、パンには、秋田県・白神山地で発見された「白神こだま酵母」が使用されています。小麦粉のおいしさを引き出す「白神こだま酵母」が使用されているとあって、〈Toki Italian SAI〉のパンは、噛めば噛むほど甘みと旨みが感じられる一品に仕上がっています。

〈Toki Italian SAI〉
■住所:岐阜県土岐市肥田浅野笠神町3-61
■電話:0572-55-4068
■営業時間: 11:30~14:00(13:30LO)、18:00〜21:00(20:00LO)※ディナーは予約制
■定休日:月休(祝日の場合は火休)、第3火休
■ WEBサイト
店舗を巡りながら、お気に入りの器を探索。

「器をたくさん見たいし、買いたい!」という人にぜひ訪れてほしいのが、〈織部ヒルズ〉です。名古屋ドーム約6個分の広大な敷地を有する商業団地で、敷地内には、陶磁器の卸商社が点在しています。なお、卸商社ではあるものの、一般の人々を対象に食器を販売しているのが、各社の特徴。店舗を併設している商社がいくつもあるため、気軽に訪問し、食器を購入できます。

こちらは、〈織部ヒルズ〉の一角にある〈Felice〉。1948年に創業し、土岐市内で陶磁器産業に携わってきた商社〈藤田陶器〉が運営する店舗です。店内には、プレート、コーヒーカップ、丼など、幅広い食器が揃っており、いずれも使い勝手がよさそう。店内の商品について、〈藤田陶器〉の代表取締役・藤田裕子さんはこう語ります。
「〈Felice〉は、美濃焼のセレクトショップ。土岐市内のメーカーに依頼してオリジナル商品を開発するほか、お店の世界観に合う商品を集め、販売しています。なお取り引きしているメーカーは、プロユースの食器を手掛ける、歴史あるメーカーばかりです。取り扱っている商品は、見た目だけでなく機能面でも優れた、納得のいくものだと自負しております」
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

〈Felice〉の店内の奥には、キッチンが設けられています。ここでたびたび、料理教室が開かれているそう。
「食事と食器を明確に結びつけられる場所が必要だと考え、キッチンを備えました。また、作って食べるという行為は、基本的に楽しいものだと思います。料理教室を展開し、作って食べる楽しさをみんなで共有できればと考えました」(藤田さん)
〈織部ヒルズ〉
■住所:岐阜県土岐市泉北山町3-1
■電話:0572-55-1322
■営業時間:店舗ごとに異なる
■定休日:店舗ごとに異なる
■ WEBサイト
〈Felice〉
■住所:岐阜県土岐市泉北山町2-4 土岐美濃焼卸商業団地(織部ヒルズ内)
■電話:0572-55-2611
■営業時間:10:00~16:00 土日祝~15:00
■定休日:夏季休、年末年始休
■ WEBサイト
地域の“過去”と“今”を知る。
およそ1400年前の飛鳥時代、土岐市を含む美濃地域で美濃焼の生産が始まりました。また、桃山時代に美濃地域は、日本最大の焼き物の産地となっています。現在も、美濃地域には、美濃焼の生産が古くから行われていたことを物語る史跡がいくつも残されています。

土岐市内で鑑賞できるのは、〈元屋敷陶器窯元(もとやしきとうきかまあと)〉という由緒ある史跡。〈元屋敷陶器窯元〉には、2種類4つの窯跡が残されていますが、なかでも見応えがあるのが、全長24.7mの「元屋敷窯」。器を焼く「焼成室」が階段状に連なっており、その重々しい佇まいに圧倒されるはず。なお、この特徴的な構造の窯は、「連房式登窯」と呼ばれるもので、九州・唐津から導入されたといわれています。
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
〈元屋敷陶器窯跡〉
■住所:岐阜県土岐市泉町久尻1246-1
■電話:0572-54-2710
■営業時間:9:00~17:00
■定休日:月休(祝日の場合は水休)、祝日の翌日休、12月29日〜1月5日休
■ WEBサイト
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いよいよ、土岐市内の旅も終盤に。お土産を買うにはうってつけの場所が、〈織部の里公園〉から車で10分ほどでアクセスできる〈もとてらす東美濃〉です。
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〈もとてらす東美濃〉は、2021年10月にリニューアルオープンした、地域内では新しい商業施設。「東美濃」と呼ばれる6市1町(土岐市、多治見市、瑞浪市、恵那市、中津川市、可児市、御嵩町)の魅力を発信するという役割を担っており、施設内には観光案内所のほか、4つのコンセプトショップが設けられています。
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食器、お菓子、日本酒など、6市1町で生産された多様な商品がずらり。いずれも、〈もとてらす東美濃〉のスタッフの方々が目利きした、選りすぐりの品なのだそう。なかには、市場にほとんど出回っていないメーカーや工房の商品もあるそうで、地域のまだ知られていない魅力を発見できます。ここで出会った商品を起点に、土岐市以外の市や町を旅してみるのもオススメです。
〈もとてらす東美濃〉
■住所:岐阜県土岐市土岐ヶ丘4-5-3 テラスゲート土岐まちゆい内
■電話:0572-55-1123
■営業時間:10:00〜18:00
■定休日:木休
■ WEBサイト